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交通事故と労災保険

交通事故は、通勤中や業務中にも多数発生しています。通勤・業務中で労災適用の要件を満たす場合は、加害者側の保険会社からの補償だけでなく、労災保険を使うこともできます。
ただ、加害者側の保険と労災保険の2つが使えるとなると、どちらの方が有利になるか迷われる方も多いと思います。労災保険を使うべきかどうかは、労災を使った場合のメリット・デメリットを考える必要がありますが、結論的には、労災保険の方が被害者にとって有利になることが多いと言えます。

労災保険を使うメリット

労災保険は、被害者に過失があるかどうかにかかわらず、利用するメリットがあります。具体的なメリットを分かりやすくするため、簡略化した事例で比較してみたいと思います。

労災保険の場合、制度が複雑であることから、実際に受け取ることができる金額を算定するのは難しい場合がありますが、このように、労災保険を使うかどうかで示談成立の際に受け取ることができる金額が大きく変わってきますので、特に被害者の方に過失がある場合は、労災保険を使った方が有利になると言えます。その理由は、労災保険は過失相殺の影響を受けにくい点(労災保険からの支給分は、損益相殺の対象となる損害項目が限定される、上記③)と、特別支給金(上記④)を受けることができる点にあります。
また、被害者の方に過失がない場合も、特別支給金の制度がありますので、実際に受け取ることができる金額は労災保険を使った方が大きくなります。加えて、労災保険の方が、自由診療より1点単価が低いことが多い関係で、労災保険を使うと保険会社の治療費負担が低くなる結果、慰謝料の増額交渉がやりやすくなる場合もあります。

  • 労災保険は過失相殺の影響を受けにくい
  • 特別支給金を受けることができる

労災保険を使うデメリット

労災保険を使うデメリットは、勤務先に労災保険の利用を申し出て、書類提出等についての協力を求める必要がある点が挙げられます。法的に見れば特段デメリットにはならないはずですが、勤務先が事務負担を嫌って協力してくれないことがあるのです。正当とは言い難いことですが、勤務先との関係を悪化させるのは被害者の方のメリットにならないことから、対応が難しいところがあると言えます。実は、勤務先との関係が、労災保険利用にあたっての最も大きな障害と言えるかもしれません。

  • 勤務先に労災保険の利用を申し出て、書類提出等についての協力を求める必要がある
  • 勤務先が事務負担を嫌って協力してくれないことがある

労災保険への切り替え時期

初めのうちは自由診療で診察を受け、途中で労災保険に切り替えることも可能です。ただ、途中からの切り替えの場合、初めに遡って労災保険に切り替えることができない場合があります。交通事故直後が最も治療費がかかることが多い点も踏まえると、できるだけ早い時期から労災保険を使う方が被害者にとって有利になります。

労災保険を使えない場合

業務中に交通事故に遭ったとして、労災保険を使えるのは、業務災害の一般的な要件に該当する場合に限られます。

労災保険における業務災害の定義

業務災害とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害又は死亡を言います。
業務上とは、業務が原因となったということであり、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることを言います(いわゆる「業務起因性」)。
また、業務災害に対する保険給付は、労災保険が適用される事業に労働者として雇われて働いていることが原因となって発生した、災害に対して行われるものですから、労働者が労働関係のもとにあった場合に起きた災害でなければなりません(いわゆる「業務遂行性」)。

また、通勤中に交通事故に遭った場合も、労災保険を使えるのは、通勤災害の一般的な要件に該当する場合に限られます。

労災保険における通勤の定義

労災保険における「通勤」とは、就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することを言い、業務の性質を有するものを除くものとされていますが、往復の経路を逸脱し、又は往復を中断した場合には、逸脱又は中断の間及びその後の往復は「通勤」とはなりません。ただし、逸脱又は中断が日常生活上必要な行為であって、労働省令で定めるやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、逸脱又は中断の間を除き「通勤」となります。

以上の通勤災害・業務災害の要件を満たさない場合、労災保険を使うことができません。まずは、労働基準監督署の労災認定を受けることが重要です。

労災保険が使えるが、加害者の対人賠償責任保険が使えない場合

対人賠償責任保険の約款には、一般的に、「対人事故により、被保険者の使用者の業務に従事中の他の使用人が死傷した場合には、それによって被保険者が被る損害に対しては保険金を支払いません」といった規定があります。読んだだけでは分かりにくいかもしれませんが、要するに、勤務先での仕事中に、同僚が起こした交通事故で怪我をしたとしても、対人賠償保険から補償は受けられないということです。この場合は、自賠責保険・労災保険・その他の保険で対応する必要があります。

労災保険が使える場合は健康保険が使えません

労災保険が使える場合は、健康保険を使うことができません(健康保険法1条・55条等)。労災保険を使える場面で健康保険を使ってしまった場合、健康保険組合が負担している医療費を、一旦、健康保険組合に返してから労災保険へ請求する手続きか、医療機関において労災保険に切り替える手続きのいずれかを行わなければなりません。前者の場合、被害者の方が一時的に治療費を全額負担しなければなりませんので、注意が必要です。

更新日:2018年12月4日

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