交通事故と労災保険

監修者: 交通事故チーム主任弁護士
羽賀 倫樹 (はが ともき)
交通事故の問題は、当事務所のホームページをご覧になられた被害者の方が、無料相談にお越しになった後、そのままご依頼いただくというケースがよくあります。 記事をお読みになられて弁護士に相談をしたくなりましたら、お気軽にお問合せください。

- 相談者
- 通勤中に交通事故に遭ってしまいました。
労災保険を使うべきか、加害者の保険を使うべきか迷っています。
- 羽賀弁護士
- 通勤中や業務中の交通事故の場合、労災保険を使う方が有利になることが多いです。
このページで労災保険を使うメリットと手続きについて詳しく説明します。
労災保険は、特に被害者にも過失がある場合に非常に有利な仕組みになっています。
本記事では、労災保険を使う際のメリット・デメリットや具体的な手続き、加害者の保険との併用について詳しく解説します。
- この記事でわかること
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- 通勤中や業務中の交通事故で労災保険を使う際のメリットとデメリット
- 労災保険と加害者の保険を併用する際の注意点
- 労災保険を使う際の手続きについて
- 労災保険が適用される業務災害・通勤災害の定義について
- こんな方が対象の記事です
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- 通勤中や業務中に交通事故に遭い、労災保険を使うべきか悩んでいる方
- 労災保険と加害者の保険の違いについて知りたい方
- 労災保険を利用する手続きや注意点について知りたい方
- 労災保険の適用条件やメリットについて知りたい方
労災交通事故と弁護士
交通事故は、通勤中や業務中にも多く発生しています。通勤中や業務中に発生した交通事故も、交通事故であることは変わりませんので、以下のように、他の交通事故と同様、弁護士に相談・依頼するメリットがあります。
1 | 保険会社とのやり取りを弁護士に任せることができる 弁護士に依頼することで、保険会社とのやり取りをしなければならないという煩わしさから解放されます。 |
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2 | 後遺障害申請の手続きのアドバイスを受けることができ、後遺障害等級の妥当性の判断を任せることができる 後遺障害申請と言ってもどのようにすればいいかなかなか分からないと思います。弁護士に依頼すれば、どのような点に注意して手続きを進めればいいかクリアになります。 また、実際に認定された後遺障害等級が妥当であるかを判断するのも難しいことだと思います。この点も弁護士に依頼すれば、妥当であるかの判断を任せることができます。 |
3 | 保険会社との示談交渉を任せることができ、示談金の増額が期待できる ご自身では保険会社とどのように交渉すればいいか分からないという方が多いのではないでしょうか、また、交渉したとしても、示談金額が変わらないか、ほとんど増額にならないということが多いようです。 弁護士に依頼すれば、煩わしい示談交渉から解放される上、示談金額の増額を期待できます。 |
労災保険の適用
通勤中・業務中で労災適用の要件を満たす場合は、加害者の保険会社からの補償だけでなく、労災を使うこともできます。
ただ、加害者の保険と労災の2つが使えるとなると、どちらの方が有利になるか迷われる方も多いと思います。労災を使うべきかどうかは、労災を使った場合のメリット・デメリットを考える必要がありますが、結論的には、労災を使った方が被害者にとって有利になることが多いと言えます。
労災保険を使うメリット
労災保険は、被害者に過失があるかどうかにかかわらず、利用するメリットがあります。具体的なメリットを分かりやすくするため、簡略化した事例で見てみたいと思います。
労災の場合、制度が複雑であることから、実際に受け取ることができる金額を算定するのは難しい場合がありますが、このように、労災保険を使うかどうかで示談の際に受け取ることができる金額が大きく変わってきますので、特に被害者の方に過失がある場合は、労災保険を使った方が有利になると言えます。労災を使った方が有利になる理由は、労災は過失相殺の影響を受けにくい点(労災からの支給分は、損益相殺の対象となる損害項目が限定される、上記③)と、特別支給金(上記④)を受けることができる点にあります。
また、被害者の方に過失がない場合も、特別支給金の制度がありますので、実際に受け取ることができる金額は労災保険を使った方が大きくなります。加えて、労災保険の方が、自由診療より1点単価が低いことが多い関係で、労災保険を使うと保険会社の治療費負担が低くなる結果、慰謝料の増額交渉がやりやすくなる場合もあります。
メリットのまとめ
- 労災保険は過失相殺の影響を受けにくい
- 特別支給金を受けることができる
労災保険を使うデメリット
労災保険を使うデメリットは、勤務先に労災保険の利用を申し出て、書類提出等についての協力を求める必要がある点が挙げられます。この点は、法的にみれば特段デメリットにはならないはずですが、勤務先が事務負担を嫌って協力してくれないことがあります。このような取扱いは正当なものとは言い難いですが、勤務先との関係を悪化させることは被害者の方のメリットにならないことから、対応が難しいところがあると言えます。実は、勤務先との関係が労災保険利用にあたって最も大きな問題と言えるかもしれません。
デメリットのまとめ
- 勤務先に労災保険の利用を申し出て、書類提出等についての協力を求める必要がある
- 勤務先が事務負担を嫌って協力してくれないことがある
労災保険への切り替え時期
初めのうちは自由診療で診察を受け、途中で健康保険に切り替えることも可能です。ただ、途中からの切り替えの場合、初めに遡って労災保険に切り替えることができない場合があります。交通事故直後が最も治療費がかかることが多い点も踏まえると、できるだけ早い時期から労災保険を使う方が被害者にとって有利になります。
労災保険を使えない場合
業務中に交通事故に遭ったとして労災保険を使えるのは、業務災害の一般的な要件に該当する場合に限られます。
労災保険における業務災害の定義
業務上とは、業務が原因となったということであり、業務と傷病等の間に一定の因果関係があることをいいます。(いわゆる「業務起因性」。)
また、業務災害に対する保険給付は労災保険が適用される事業に労働者として雇われて働いていることが原因となって発生した災害に対して行われるものですから、労働者が労働関係のもとにあった場合に起きた災害でなければなりません。(いわゆる「業務遂行性」。)
また、通勤中に交通事故に遭った場合も、労災保険を使えるのは、通勤災害の一般的な要件に該当する場合に限られます。
労災保険における通勤の定義
以上の通勤災害・業務災害の要件を満たさない場合、労災保険を使うことができません。まずは、労基署の労災認定を受けることが重要です。
労災保険が使えるが加害者の対人賠償責任保険が使えない場合
対人賠償責任保険の約款には、一般的に、「対人事故により、被保険者の使用者の業務に従事中の他の使用人が死傷した場合には、それによって被保険者が被る損害に対しては保険金を支払いません」といった規定があります。読んだだけでは分かりにくいかもしれませんが、要するに、勤務先での仕事中に同僚が起こした交通事故で怪我をしたとしても、対人賠償保険から補償を受けることができません。この場合は、自賠責保険・労災保険・その他の保険で対応する必要があります。
労災保険が使える場合は健康保険が使えません
労災保険が使える場合は、健康保険を使うことができません(健康保険法1条・55条等)。労災保険を使える場面で健康保険を使ってしまった場合、健康保険組合が負担している医療費を健康保険組合に返してから労災保険へ請求する手続きか、医療機関において労災保険に切替する手続きのいずれかを行わなければなりません。前者の手続きの場合、被害者の方が一時的に治療費を全額負担しなければなりませんので、労災保険を使える場面で健康保険を使わないように注意する必要があります。
更新日:2018年12月4日

交通事故チームの主任として、事務所内で定期的に研究会を開いて、最新の判例研究や医学情報の収集に努めている。研究会で得た情報や知識が、交渉などの交通事故の手続きで役立つことが多く、交通事故チームで依頼者にとっての最高の利益を実現している。
また羽賀弁護士が解決した複数の事例が、画期的な裁判例を獲得したとして法律専門誌に掲載されている。

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