交通事故に関わる様々な保険と補償内容について。

監修者: 交通事故チーム主任弁護士
羽賀 倫樹 (はが ともき)
交通事故の問題は、当事務所のホームページをご覧になられた被害者の方が、無料相談にお越しになった後、そのままご依頼いただくというケースがよくあります。 記事をお読みになられて弁護士に相談をしたくなりましたら、お気軽にお問合せください。

- 相談者
- 交通事故に関する保険には色々な種類があると聞いて、どれがどの場面で使えるのかよくわかりません。
自分の保険もどう活用すればいいのか不安です。
- 羽賀弁護士
- 交通事故に関わる保険には、自賠責保険や任意保険、さらには自転車保険や個人賠償責任保険、弁護士費用特約までさまざまあります。
それぞれの役割や使い方について説明します。
自賠責保険や任意保険だけでなく、個人賠償責任保険、弁護士費用特約など、保険の種類や補償内容を理解しておくことが重要です。
この記事では、事故の際に知っておきたい保険の基本的な内容と、どの保険がどのような場面で役立つのかを解説します。
- この記事でわかること
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- 自賠責保険と任意保険の役割と違い
- 歩行者や自転車事故に対応する特約の内容
- 自転車保険や個人賠償責任保険の適用範囲
- 加害者・被害者それぞれの立場で活用できる保険
- 交通事故後に利用できる健康保険や労災保険の手続き
- こんな方が対象の記事です
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- 交通事故に遭い、どのような保険を利用できるか検討している方
- 自賠責保険と任意保険の違いを理解したい方
- 歩行者や自転車での事故に備えたい方
- 健康保険や労災保険について知りたい方
加害者が契約している保険
自賠責保険
自賠責保険は、いうなれば「被害者に対する最低限の賠償を確保する」ためにできた保険です。運営は各保険会社に委ねられていますが、最終的な責任は国が負います。自動車を新車購入する際に、自賠責保険への加入が義務付けられており、未加入で走行すると犯罪となるため「強制保険」といわれています。
交通事故の被害に遭った時は、加害者の任意保険会社が窓口となるため、被害者にとって自賠責保険の対応をすることは多くはないかもしれません。ただ、後遺障害が残った時には、自賠責保険に対して後遺障害等級の認定を求めるという形で関わることがあります。
任意保険
任意保険は、自賠責ではまかないきれない賠償部分を確保するための保険です。自賠責保険だけで損害がまかなえる事例は、「通院数回で治療が終わった」「被害者の落ち度が大きかった」場合など、例外的です。任意保険には絶対に加入しておきましょう。
被害者にとっては、事故後の治療費等を支払ってもらったり、示談交渉を行って慰謝料を払ってもらったりという形で、保険会社の担当者と実際に連絡を取り合うことが多い保険の種類といえます。
※自賠責保険と任意保険の関係は、国民年金と厚生年金・国民年金基金のように1階(自賠責や国民年金)と2階(任意保険や厚生年金・国民年金基金)とイメージすると分かりやすいところです。
対歩行者等傷害保障特約
事故の被害者が歩行者であったり自転車を運転していたという場合でも、事故態様によっては被害者側にも一定の過失が認められます。この場合、加害者の任意保険(対人賠償保険)で補償されるのは、最終的には加害者の過失割合部分に限られます。
この加害者が賠償責任を本来負わない部分(つまり被害者の過失割合部分)について、人身傷害補償保険を基準として補償するのが、対歩行者等傷害補償特約です。
被害者にとっては自分の過失割合部分についても補償が受けられる特約ということになりますが、取り扱っている保険会社が限られていたり、加害者が人身傷害補償保険に加入することが条件になったりといった制約があります。
自転車保険
自転車に搭乗中に自分が怪我をしてしまった場合や他人を負傷させた場合に適用される保険です。自転車は子供から高齢者まで利用できる乗り物ですが、法律上はれっきとした「車両」であり(道交法2条8号)、最近では、自転車事故を起こした加害者又はその親権者などに高額の賠償を命じる裁判例が出されるようになっています。
そのため、自分や家族にも自転車をよく利用する人がいる場合には、自転車保険に加入しておくことが望ましいといえます。
自転車事故の被害者にとっては、加害者に資力がない場合には十分な賠償を受けられません。これに対し、加害者が自転車保険に加入していれば、一定の賠償を受けることができます。ただし、自転車保険には上限額が設定されていることがあり、また、自動車の任意保険と異なり、示談代行のサービスが付いていないケースもあります。
個人賠償責任保険
契約者や一定範囲のその家族が、日常生活で誤って他人に怪我をさせたり、他人の所有物を壊したりした場合の損害を補償する保険であり、自転車事故による損害賠償はこの保険でも対応できる可能性があります。個人賠償責任保険は単体の保険の場合もありますし、自動車保険や火災保険など別の保険の特約になっている場合もあります。示談代行サービスの有無は商品によって異なります。
被害者が契約している保険など
自損事故保険
自損事故保険は、契約している自動車の事故により運転者等が死傷した場合で、損害賠償責任を負うべき加害者が観念できない場合、例えば電柱にぶつかったりした自損事故の際に使用する保険です。
搭乗者傷害保険
搭乗者傷害保険は、後遺障害が残った場合や、治療費などを約款所定の金額を支払ってくれる保険で、損害の填補を目的とした損害保険というよりも、傷害保険(保険事故の発生により損害額にかかわらず支払われる保険)ということができます。搭乗者傷害保険は、支払われたとしても損益相殺とならない点、すなわち示談金から搭乗者傷害保険金が差し引かれない点が重要です。
人身傷害保険
人身傷害保険は、被害者自身の契約保険会社からの保険金で損害を填補する保険であり、契約者とその家族であれば、自動車に乗車中の事故のみならず、歩行中や自転車に乗っているときの事故も補償対象になることがあります。
加害者の過失の有無にかかわらず、保険金額の上限の範囲内で、約款の規定に従って算定された損害額を基に保険金が支払われます。
そのため、弁護士基準にもとづく人身損害の全てをカバーできるわけではありませんが、相手方との示談の成立を待たず一定額の保険金を受け取れる、加害者には請求できない被害者自身の過失部分についても補償を受けられるといったメリットがあります。
無保険車傷害保険
無保険車傷害保険は、加害車両が任意保険と契約していない、あるいは、免責条項で任意保険が使えない(例:21歳未満不担保特約をつけていたところ、保険契約者の18歳の子供が運転して事故を起こした)といった場合に、損害の填補を求めることができるものです。無保険車傷害保険との交渉を弁護士に依頼した場合、弁護士基準による解決が期待できます。
車両保険
車両保険は、契約している自動車が事故によって損傷を受けた場合や盗難にあった場合にその損害を填補する保険です。
弁護士費用特約
弁護士費用特約とは、保険契約者が交通事故等に遭い、手続きを弁護士に依頼した場合の、弁護士費用が保険金として支払われるという保険です。自動車保険の特約であることが多いものの、それ以外の保険にも特約として付いていたり、事故に遭ったのが契約者の家族でも適用されることがあります。
この特約の最大のメリットは、何といっても弁護士費用のことを気にせずに弁護士に依頼することが可能になる点です。これにより、費用対効果の観点から弁護士への依頼が難しかったむち打ちで後遺障害が残らないような事件を依頼したり、事故後の早期の段階から弁護士に依頼することが可能になりました。
そのため、弁護士に相談に行く際は、自分に使える弁護士費用特約がないかあらかじめ十分に確認しておくことをお勧めします。
・そのほかにも、他車運転危険担保などさまざまな特約があります。
上記の各保険は、通常の対人・対物に関する自動車保険ならセットになっています。ただし、保険の自由化で内容も会社によって様々ですので、一度「保険証券」をじっくり確認してみると良いでしょう。
健康保険
交通事故により受傷した場合でも健康保険は利用できます。これには「第三者行為による傷病届」を提出するなど一定の手続を取る必要はありますが、被害者にも過失がある場合には健康保険を利用して治療費を抑えておくことで、被害者が受け取ることができる最終的な示談金額を多くできるというメリットがあります。
加害者が任意保険に加入しており、被害者の過失が0%の場合でも、健康保険を利用して治療費を抑えておけば、若干ですが慰謝料の交渉がやりやすい場合もあります。
労災保険
例えば業務中や通勤途中に交通事故に遭ったという場合であれば、労災保険の適用も受けることができます。
加害者が契約している任意保険や自賠責保険がある場合に、それらと労災保険のどちらに請求すべきか、あるいはどちらを優先して手続を進めるべきか、という点については弁護士にご相談いただければと思います。
もっとも、一般には、労災給付の中には、相手方からの賠償金から差し引く必要のない給付(特別支給金等)がある、制度趣旨の違いや医師面談の実施などによって、自賠責保険よりも労災保険のほうが後遺障害等級が認定されやすい傾向がある、過失相殺による賠償額の減額を任意保険使用の場合より受けにくいといったことなどから、労災保険の適用を受けるメリットは大きいといえます。
政府保障事業
政府保障事業とは、被害者がひき逃げ事故に遭って加害者を特定できない場合や、加害者が自賠責保険に加入しておらず賠償能力にも乏しい場合などに、加害者に代わって、国が自賠責保険とほぼ同様の補償内容で賠償金の支払いを行うというものです。
政府保障事業への請求は被害者にのみ認められています。手続きの中身ですが、刑事手続きの進捗状況や他の給付の有無といった事実確認等の手続が多くあります。そのため、後遺障害等級の申請から認定されるまでの期間は、半年〜1年程度と、通常の自賠責保険と比較して長いケースが多くなっています。
次のページでは、弁護士費用が補てんされる「弁護士費用特約」について解説しています。
更新日:2016年11月29日

交通事故チームの主任として、事務所内で定期的に研究会を開いて、最新の判例研究や医学情報の収集に努めている。研究会で得た情報や知識が、交渉などの交通事故の手続きで役立つことが多く、交通事故チームで依頼者にとっての最高の利益を実現している。
また羽賀弁護士が解決した複数の事例が、画期的な裁判例を獲得したとして法律専門誌に掲載されている。

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