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運営:弁護士法人 みお綜合法律事務所

交通事故における政府保障事業

監修者: 交通事故チーム主任弁護士

羽賀 倫樹 (はが ともき)

交通事故の問題は、当事務所のホームページをご覧になられた被害者の方が、無料相談にお越しになった後、そのままご依頼いただくというケースがよくあります。 記事をお読みになられて弁護士に相談をしたくなりましたら、お気軽にお問合せください。

 

はじめに

 自動車は、自賠責保険の契約がなければ運行が認められていませんが(自動車損害賠償保障法5条)、中には自賠責保険の契約なく運行をしている車両もあります。また、盗難車であったり、加害者が逃げてしまって特定できない等の事情で、加害者側の自賠責保険を使えない場合があります。
 このような場合、怪我をした被害者への補償が全くないのかというとそういうわけではなく、政府保障事業という制度によって一定の補償が可能です。このページでは、この政府保障事業について見ていきます。

政府保障事業の概要

⑴政府保障事業は自賠責が使えないときのための制度

 政府保障事業は、先ほど記載した通り、加害者が自賠責保険を契約していないなどの事情で自賠責保険から保険金の支払いを受けられない被害者を救済するための制度です。そのため、基本的な仕組みは自賠責と類似する部分が多いですが、自賠責と異なる部分も多くあります。

⑵自賠責と同じ部分

No. 内容
人損のみが対象で、物損は対象外(自動車損害賠償保障法72条)
支払い上限額(傷害部分120万円、後遺障害部分75万円~4000万円、死亡部分3000万円、自動車損害賠償保障法72条1項1号・2号、自動車損害賠償保障法施行令20条1項・2条・別表第1第2)
損害算定基準(自動車損害賠償責任保険の保険金及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準、自動車損害賠償保障事業が行う損害のてん補の基準)
被害者に7割以上の重過失がある場合の減額
受傷と死亡又は後遺障害との間の因果関係の有無の判断が困難な場合の減額
時効の期間(傷害部分-事故発生日から3年、後遺障害部分-症状固定日から3年、死亡部分-死亡日から3年、自動車損害賠償保障法75条)
損害保険会社に書類を提出し、損害保険料率算出機構が調査する

⑶自賠責と異なる部分

No. 内容
請求できるのは被害者のみ
親族間の事故は補償されない
仮渡金の制度がなく、治療終了後の請求になる
健康保険、労災保険などの社会保険からの給付を受けるべき場合、その金額は差し引いててん補される
被害者に支払われた金額は、政府が加害者(損害賠償責任者)に求償する
自賠責より多くの書類提出が求められる
損害保険料率算出機構の調査後、国土交通省による調査が入るため、支払いまで時間がかかる
時効更新の取り扱いがない

 以上の通りであり、自賠責と異なる部分も多くあります。以下、自賠責と異なる点の詳細について記載します。

政府保障事業と自賠責の異なる点の詳細

⑴請求できるのは被害者のみ

 政府保障事業では、請求できるのは被害者のみです。加害者自身が被害者に賠償金を払ったとしても、政府保障事業には請求できません(自動車損害賠償保障法15条のような加害者請求の規定がないため)。

⑵親族間の事故は補償されない

 自賠責保険では、例えば夫が自動車を運転し、妻が助手席に同乗しているときに、夫が自損事故を起こし、妻が怪我をしたという場合、自賠責保険から妻に保険金が支払われる場合があります。これに対し、政府保障事業では、親族間の事故は補償の対象外です。
 上記のような事例では、仮に政府保障事業から妻に支払いがあっても、政府から夫への求償があるため、政府保障事業が支払う意味がないと考えられます。

⑶仮渡金の制度がなく、治療終了後の請求になる

 自賠責保険の場合、死亡について290万円、傷害について5万円~40万円までの仮渡金の制度があります。交通事故の影響で当面の治療費や生活費に窮する場合に使える制度です。
 これに対し、政府保障事業ではこのような制度はなく、全損害について治療終了後に請求する必要があります。

⑷健康保険、労災保険などの社会保険からの給付を受けるべき場合、その金額は差し引いててん補される

 自賠責保険の場合、健康保険や労災保険を使って治療をした場合でも、社会保険からの給付分は差し引かずに保険金が支払われます。
 これに対し、政府保障事業では、健康保険、労災保険などの社会保険からの給付を受けるべき場合、その金額は差し引いててん補されます(自動車損害賠償保障法73条1項)。政府保障事業は最終的な救済措置であり、他の制度で救済される部分については、救済の対象から外れてもやむを得ないと考えられるからです。
 一例として、健康保険を使って治療し、治療費の自己負担が18万円、健康保険負担分が42万円、慰謝料が70万円の場合、自賠責では、治療費18万円+慰謝料70万円の合計88万円が支払われます。これに対し、政府保障事業では、上限120万円から健康保険負担分の42万円を控除した78万円だけが支払われます。このように、政府保障事業では、自賠責より支払額が少なくなることがあります。

⑸被害者に支払われた金額は、政府が加害者(損害賠償責任者)に求償する

 自賠責保険の場合、被害者に保険金が支払われた場合でも、加害者の悪意によって被害者に損害が生じた場合を除き、加害者に求償請求が来ることはありません(自動車損害賠償保障法16条4項・76条2項)。
 これに対し、政府保障事業では、被害者に補償がされた場合、政府が加害者に求償請求することになります(自動車損害賠償保障法76条1項)。加害者が保険料を負担していない以上、当然のことと言えます。

⑹自賠責より多くの書類提出が求められる

 政府保障事業では請求に際し、自賠責保険より多くの書類提出が求められます。例えば、「事故発生時の行動目的」「人身傷害補償保険(共済)へのご請求に関する確認書」「健康保険等の被保険者証のコピー」「休業損害請求意思確認書」等の書類の提出が求められます。

⑺損害保険料率算出機構の調査後、国土交通省による調査が入るため、支払いまで時間がかかる

 自賠責保険では、自賠責保険に書類を提出し、損害保険料率算出機構が調査して、自賠責保険から後遺障害等級や支払金額が通知されます。
 これに対し、政府保障事業では、自賠責保険に書類を提出し、損害保険料率算出機構が調査した後、さらに国土交通省が審査・決定してから、自賠責保険から後遺障害等級や支払金額が通知されます。国土交通省の審査があるため、自賠責保険への請求より支払いまで時間がかかります。具体的には、政府(国土交通省)がてん補額を決定し、保険会社等を通しててん補額が支払われるまでおよそ6ヶ月から1年以上は見ておく必要があります。

⑻時効更新の取り扱いがない

 自賠責保険では、一度請求すると時効が更新される取扱いになっています。加害者(任意保険会社)に対する賠償請求の時効に注意が必要ですが、異議申立自体は、自賠責保険会社から通知を受け取ってから3年以内に行えば間に合います。
 これに対し、政府保障事業では、一度請求しても時効が更新されず、異議申立は、事故発生日(後遺障害部分は症状固定日、死亡部分は死亡日)から3年以内に行う必要があります。異議申立をしようとするときに事故発生日から3年を経過している場合は、填補決定の翌日から6か月以内に裁判上の請求が必要になります。

政府保障事業への請求件数

 政府保障事業への請求件数は、2021年4月1日~2022年3月31日までの1年間で427件となっています。2022年に交通事故で怪我をした人の数が356,419人であることからすると、政府保障事業への請求件数は極めて少ないことが分かります。
 理由は推測になりますが、自賠責が無保険という車両は少ないこと、政府保障事業の手続き負担が大きいため、ある程度重傷の事案でなければ請求に至っていないケースが多いことなどが考えられます。

弁護士によるまとめ

 以上、交通事故における政府保障事業について見てきました。あまり利用されない制度ですが、加害者に自賠責保険がない場合に最終手段として利用することになります。加害者が自賠責無保険の場合、任意保険も無保険のケースが多いと言えます。そのような場合、政府保障事業だけでは補償の範囲が小さくなりますが、ご自身が人身傷害保険や無保険車傷害保険を契約されていれば、弁護士に依頼して十分な保険金を得られる可能性があります。ご自身の保険を確認してご相談いただければと思います。

更新日:2024年12月1日

弁護士 羽賀 倫樹

大阪弁護士会所属 61期/登録番号:39117

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交通事故チームの主任として、事務所内で定期的に研究会を開いて、最新の判例研究や医学情報の収集に努めている。研究会で得た情報や知識が、交渉などの交通事故の手続きで役立つことが多く、交通事故チームで依頼者にとっての最高の利益を実現している。
また羽賀弁護士が解決した複数の事例が、画期的な裁判例を獲得したとして法律専門誌に掲載されている。

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