関節可動域制限12級が認定された場合の労働能力喪失期間
監修者: 交通事故チーム主任弁護士
羽賀 倫樹 (はが ともき)
交通事故の問題は、当事務所のホームページをご覧になられた被害者の方が、無料相談にお越しになった後、そのままご依頼いただくというケースがよくあります。 記事をお読みになられて弁護士に相談をしたくなりましたら、お気軽にお問合せください。
はじめに
交通事故に遭い、関節付近の骨が折れるなどした場合、関節可動域制限が生じることがあります。そして、怪我をした関節(肩関節・肘関節・手関節・股関節・膝関節・足関節)の可動域が、健側と比較して4分の3以下になると12級の後遺障害が認定されます。
後遺障害が認められた場合、保険会社との示談交渉で後遺障害逸失利益の金額についても交渉が必要です。後遺障害逸失利益とは、後遺障害による影響で収入が下がったり、下がる可能性があることに対して支払われるもので、以下の算定式によって計算します。
(後遺障害逸失利益の算定式)
①基礎収入×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
この点、後遺障害とは、傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態になったときに残存する症状に関するものであり、症状が永続することが前提とされています。そのため、労働能力喪失期間は就労可能期間全期間となるのが原則ですが、関節可動域制限12級の場合、保険会社から労働能力喪失期間の制限が主張されることがあります。そこで、このページでは、関節可動域制限12級が認定された場合の労働能力喪失期間について見ていきたいと思います。
労働能力喪失期間の基本的な考え方

労働能力喪失期間は就労可能期間全期間になるのが原則と記載しましたが、具体的には、67才までか、平均余命の2分の1のいずれか長い方が労働能力喪失期間になります。例えば、20才の人であれば47年が労働能力喪失期間になります。また、例えば、男性で58才の場合、67才までの期間は9年、平均余命の2分の1は12年であるため、12年が労働能力喪失期間になります。
ただし、就労可能期間全期間が労働能力喪失期間になるとは限らず、例えば、むち打ちで後遺障害が認定された場合は、労働能力喪失期間が制限されます。関節可動域制限でも同じような問題が生じることがあるかが、本ページでの検討事項です。
関節可動域制限12級が認定された場合の労働能力喪失期間に関する裁判例の傾向

関節可動域制限12級が認定された場合の労働能力喪失期間に関する裁判例の傾向ですが、後遺障害が残った場合の労働能力喪失期間の原則的な考え方通り、期間を制限しないケースの方が多くなっています(自保ジャーナルに掲載された裁判例より)。これは、関節可動域制限は、骨の変形や関節の器質的変化(拘縮)等によるものであり、症状が永続する可能性が高いためと思われます。
ただし、以下の点などを考慮して、労働能力喪失期間が制限されている事例もあります。
◆労働能力喪失期間に関する考慮事項
| No. | 労働能力喪失期間算定におけるおける考慮事項 |
|---|---|
| 1. | 骨折後に生じた可動域制限であるか |
| 2. | 症状固定時の可動域制限の程度 |
| 3. | 治療中の可動域制限の程度 |
| 4. | 関節可動域制限や派生する神経症状の回復可能性 |
| 5. | 減収の程度 |
| 6. | 後遺障害が仕事に与える影響 |
また、労働能力喪失期間は制限されないものの、減収が生じていないために労働能力喪失率が14%未満になったり、比較的若年である場合に労働能力喪失率を徐々に下げられたりした結果、後遺障害逸失利益が低くなっているケースもあります。
示談交渉での傾向

関節可動域制限12級が認定された場合の労働能力喪失期間に関する示談交渉での傾向ですが、裁判例と同じような傾向になっています。すなわち、喪失期間を制限しない事例の方が多いですが、制限する場合も一定程度あります。
保険会社から労働能力喪失期間の制限を主張された場合の対応ですが、極端な制限を主張された場合には紛争処理センター等への申立を検討する必要があります。一方、大幅な制限ではないときは、以下の点等を考慮して、示談をするケースがよくあります。
◆喪失期間を制限しない場合の考慮事項
| No. | 示談における考慮事項 |
|---|---|
| 1. | 保険会社が主張する労働能力喪失期間 |
| 2. | 喪失期間が制限される一方で、示談提案の中で当方に有利な部分がないか |
| 3. | 申立をした場合に労働能力喪失期間の制限を受ける可能性 |
| 4. | 労働能力喪失期間が制限された場合の逸失利益減額の程度 |
| 5. | 減収の有無 |
| 6. | 年齢 |
| 7. | 申立をする場合の弁護士費用 |
| 8. | (訴訟を検討する場合)後遺障害等級を維持できるか |
弁護士による示談総額とまとめ

以上をまとめると、裁判例でも示談でも、関節可動域制限12級では労働能力喪失期間が制限されない方が多いといえます。そのため、示談交渉で極端な制限を主張された場合には紛争処理センター等への申立を検討する必要があります。一方、労働能力喪失期間が制限されると逸失利益が大幅に少なくなる可能性があることを踏まえると、示談交渉で喪失期間の制限の程度が大きくない場合は、ある程度の制限を前提として示談することも検討に値するといえるでしょう。
微妙な判断を求められる事項と言えますが、弁護士に交通事故の手続きを依頼すれば、保険会社との交渉や、交渉で出てきた金額で示談すべきかどうかなど、弁護士に手続き・判断を任せることができます。
更新日:2026年3月8日
交通事故チームの主任として、事務所内で定期的に研究会を開いて、最新の判例研究や医学情報の収集に努めている。研究会で得た情報や知識が、交渉などの交通事故の手続きで役立つことが多く、交通事故チームで依頼者にとっての最高の利益を実現している。
また羽賀弁護士が解決した複数の事例が、画期的な裁判例を獲得したとして法律専門誌に掲載されている。
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