上肢・下肢の骨折と関節可動域の後遺障害認定
監修者: 交通事故チーム主任弁護士
羽賀 倫樹 (はが ともき)
交通事故の問題は、当事務所のホームページをご覧になられた被害者の方が、無料相談にお越しになった後、そのままご依頼いただくというケースがよくあります。 記事をお読みになられて弁護士に相談をしたくなりましたら、お気軽にお問合せください。
- 相談者
- 交通事故で足を骨折してしまい、関節が思うように動かなくなりました。
これは後遺障害として認定されるのでしょうか?
- 羽賀弁護士
- 骨折による関節の可動域制限が後遺障害等級として認定されるかどうか、具体的な条件や考慮される要素についてこちらのページで詳しく説明します。
- この記事でわかること
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- 関節可動域制限が残る可能性がある骨折について
- 関節可動域の後遺障害等級の認定にあたって考慮される要素について
- 骨折の状態や位置関係、癒合の有無が後遺障害認定に与える影響
- 関節面の変形や外固定期間、治療中の関節可動域の制限が後遺障害認定に与える影響
- こんな方が対象の記事です
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- 交通事故で上肢や下肢を骨折した方
- 骨折による関節可動域制限が心配な方
- 後遺障害等級の認定について知りたい方
はじめに
交通事故で上肢・下肢の骨(上腕骨・橈骨・尺骨・大腿骨・脛骨・腓骨等)を骨折したり、上肢・下肢に近い部分の骨(鎖骨・舟状骨・月状骨・骨盤・鎖骨・距骨等)を骨折した場合、上肢・下肢の関節に可動域制限が残ることがあります。
関節に可動域制限が残る可能性がある箇所 | |
上肢・下肢の骨 | 上腕骨・橈骨・尺骨・大腿骨・脛骨・腓骨等 |
上肢・下肢に近い部分の骨 | 鎖骨・舟状骨・月状骨・骨盤・鎖骨・距骨等 |
障害等級表では、上肢であれば「1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」は12級6号とされています。具体例は、健側と比較して患側の可動域が4分の3以下になっている場合が挙げられます。可動域は、原則として自動値ではなく、他動値が採用されます。
下肢の場合、「1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの」は12級7号とされています。具体例は上肢と同じく、健側と比較して患側の可動域が4分の3以下になっている場合が挙げられます。可動域は、原則として自動値ではなく、他動値が採用されます。
障害等級表の文言だけ見ると、関節可動域に一定の制限があれば後遺障害が認定されそうですが、実際には、関節可動域が制限されていること以外に様々な要素が考慮されます。ここでは、関節可動域制限の後遺障害等級の認定にあたって考慮される要素について見ていきます。
後遺障害等級の認定で考慮される要素
骨折した部位付近の関節に可動域制限が残った場合の後遺障害認定にあたって考慮される要素は、骨折の状態・骨折部と関節の位置関係・癒合の有無や程度・変形癒合の有無・関節面の変形の有無・関節の外固定の有無や期間・治療中の関節可動域制限の程度など数多くあります。
後遺障害認定にあたって考慮される要素例 | |
1 | 骨折の状態 |
2 | 骨折部と関節の位置関係 |
3 | 癒合の有無や程度 |
4 | 変形癒合の有無 |
5 | 関節面の変形の有無 |
6 | 関節の外固定の有無や期間 |
7 | 治療中の関節可動域制限の程度 |
骨折の状態
骨折の状態が激しいほど、可動域制限が残った場合に後遺障害等級が認定されやすくなります。ひびが入ったという骨折の場合、可動域制限が後遺障害として認定されにくいと言えます。なお、骨折ではなく、捻挫や打撲の場合、関節可動域制限が残っても、後遺障害として認定されないと考える必要があります。
状況 | |
認定されやすいケース | 骨折の状態が激しい場合 |
認定されにくいケース | ひびが入ったという程度の骨折の場合 |
骨折部と関節の位置関係
骨折部と関節が近いほど、可動域制限が残った場合に後遺障害等級が認定されやすくなります。上腕骨・橈骨・尺骨・大腿骨・脛骨・腓骨の骨幹部骨折の場合、関節から離れているため、骨折の程度にもよりますが、可動域制限が後遺障害として認定されにくいと言えます。
状況 | |
認定されやすいケース | 骨折部と関節が近い部分で可動域制限が残った場合 |
認定されにくいケース | 関節から離れている上腕骨・橈骨・尺骨・大腿骨・脛骨・腓骨の骨幹部骨折の場合 |
癒合の有無や程度・変形癒合の有無
骨折部の癒合が不十分であったり、変形癒合があるほど、可動域制限が残った場合に後遺障害等級が認定されやすくなります。変形等なく骨が癒合した場合、可動域制限が後遺障害として認定されにくいと言えます。
状況 | |
認定されやすいケース | 骨折部の癒合が不十分であったり、変形癒合がある場合 |
認定されにくいケース | 変形等なく骨が癒合した場合 |
関節面の変形の有無
関節面の変形により物理的に関節可動域が制限されている場合、可動域制限が残った場合に後遺障害等級が認定されやすくなります。関節面の変形がない場合は、関節拘縮が問題になりやすいですが、関節面の変形がある場合と比較して後遺障害として認定されにくいと言えます。
状況 | |
認定されやすいケース | 関節面の変形により物理的に可動域制限が残った場合 |
認定されにくいケース | 関節面の変形がない場合 |
関節の外固定の有無や期間
関節の外固定があると、関節の拘縮が生じることがあるため、可動域制限が残った場合に後遺障害等級が認定される場合があります。ギプスで強く固定したり、固定期間が長い方が考慮要素として強いと言えます。
治療中の関節可動域制限の程度
症状固定時より治療中の方が、可動域が改善していた場合、改善の程度によりますが、可動域制限が後遺障害として認定されない場合があります。例えば、症状固定時、右肩の外転が180度で、左肩が130度であるものの、治療中に左肩が150度まで回復していたという経過がある場合、問題になります。
弁護士によるまとめ
骨折後に関節可動域制限が残った場合、以上のような要素を考慮して後遺障害として認定するか判断されます。
測定方法によって可動域が変わることがあるためか、後遺障害等級認定の場面では客観的な要素が重視される傾向があります。後遺障害診断書に可動域制限の記載があっても、必ずしも可動域制限が後遺障害として認定されるとは限らない点を押さえた上で、後遺障害申請に臨む必要があると言えそうです。
更新日:2022年5月9日
交通事故チームの主任として、事務所内で定期的に研究会を開いて、最新の判例研究や医学情報の収集に努めている。研究会で得た情報や知識が、交渉などの交通事故の手続きで役立つことが多く、交通事故チームで依頼者にとっての最高の利益を実現している。
また羽賀弁護士が解決した複数の事例が、画期的な裁判例を獲得したとして法律専門誌に掲載されている。
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