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弁護士による交通事故勉強会

裁判例研究
Vol.41

後遺障害内容別の将来介護費の判断

本件の担当
羽賀弁護士

2021年02月01日

事例の概要

『赤い本』と『交通事故相談ニュース』に掲載されている判例と、羽賀弁護士が担当した事例を基に、後遺障害の内容別に、将来介護費の認定の傾向を検討しました。

議題内容

障害内容別の将来介護費の判断

議題内容

・近親者が介護を行う場合の、費用の算定要素と判例。

・職業介護を選択する場合の、費用の算定要素と判例。

・『赤い本』と『交通事故相談ニュース』に掲載された事例と、羽賀弁護士が扱った事例を基に、後遺障害内容別の将来介護費の検討。

参加メンバー
羽賀弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、大畑弁護士、石田弁護士、西村弁護士
羽賀弁護士
後遺障害の内容別の将来介護費について、『赤い本2011年版』と、日弁連交通事故センターから出ている『交通事故相談ニュース45号』(2020年10月1日発行)に掲載されている判例を基に、検討します。
今までも、重度後遺障害の将来介護費について検討を加える書籍はありました。ただ、遷延性意識障害と高次脳機能障害と脊髄損傷を、別々に検討しているものがあまり無かったように思います。今回、『交通事故相談ニュース45号』に、3つを分けて検討している記事がありましたので、それに基づいて検討を加えていきたいと思います。
羽賀弁護士
まず『赤い本』の近親者介護の将来介護費についての記載を見ていきます。
近親者介護を行う場合の費用の算定には、
①被害者の後遺障害の内容・程度、②要介護の状態・日常生活の自立の程度、③必要とされる介護の内容・程度、④介護のために必要な時間、⑤介護する方の性別・年齢・健康状態、⑥介護仕様の家屋の建築をしたかどうか、⑦介護用具を使っているかどうか、といった要素を総合的に勘案し、介護する人にとっての、肉体的・精神的負担の程度を具体的・実質的に検討して、将来介護費を算定する、というのが一般的な考え方です。
じゃあ、具体的な金額はどうなるのか、ということですが、『赤い本』では、遷延性意識障害、高次脳機能障害、脊髄損傷などの障害別には、将来介護費を検討していません。
小川弁護士
後遺障害の内容別ではないとすると、後遺障害等級別に検討されているのですか?
羽賀弁護士
そうですね。後遺障害等級が1級および2級の事例では、おおむね日額4,000円~10,000円の間で認定されています。さらに、1級と2級を分けて見ると、1級の方の多くは日額8,000円~10,000円の間で認められており、8.000円という事例が多いということです。
特に高額な例としては、近親者2名での介護が必要といった、特に負担が重い場合に、日額10,000円を超える認定をした例もあるということです。
大畑弁護士
他にどんな事例がありますか?
羽賀弁護士
例えば、被害者が体位交換も行えない遷延性意識障害や四肢麻痺の状態にある場合、または、壮年の男性をご両親が介護するとか、50歳を超える男性を妻が介護する、というような場合も、介護する方の負担が特に重いと考えられるので、日額8,000円以上の金額が算定される傾向があるとの記述がありました。
後遺障害等級2級の事例では、日額5,000円~8,000円程度で介護費が認められますが、介護者の精神的な負担の重さから、8,000円を超える介護費が認められる事例が少なくないようです。
吉山弁護士
精神的負担が結構重い場合がありますよね。
羽賀弁護士
高次脳機能障害2級の場合で、片麻痺や失調といった身体的な障害も併存するという様な事例では、運動障害による身体的な負担と、精神・神経障害による精神的な負担を併せて考慮して、介護の負担が評価されます。
自力歩行が可能で、一定の日常生活動作は可能というような場合は、日額8,000円より低くなる傾向があります。しかし、その方に暴力的な傾向があるとか、自傷他害のおそれが高い、希死念慮があるなどの場合は、介護する側にとっても精神的負担が重いということで、一定の日常生活動作が可能でも、8,000円の認定という場合がある、というところです。
羽賀弁護士
次に、職業介護の将来介護費についてですが、
職業介護の費用の算定については、近親者介護の場合に挙げた要素の他に、①現に職業介護人を依頼している場合の負担額がいくらか、②市町村の介護サービスの単価がいくらか、③職業介護人を依頼した場合の見積額、④今後どの様な介護システムの検討の見直しの可能性があるか、そういった所を総合的に考慮して行うことになる、ということです。
山本弁護士
そこで見積を出すと、結構すごい金額になることがあります。
羽賀弁護士
実際には、加害者に負担させるのが相当な介護方法や費用と言えるのかどうか検討されるために、あまりはっきりとは書かれていないように思いますが、介護費の見積書から減額されることが多いだろう、といった記載になっています。さらに、将来の費用に関わる問題であるため、今後、介護保険制度などがどう変わっていくかといった問題もあり、控えめな額になることが多いといったことが書かれています。
小川弁護士
近親者介護から職業人介護に変更するまで相当時間があるような方の場合は、とりわけ、将来に介護システムが変更する可能性が高くなりますね。
羽賀弁護士
その通りです。介護業務の価格基準が変動する可能性も高いと考えられますから、介護費の算定に当たって、見積書等の金額をどの程度反映させるかについては、慎重に検討する必要があると、『赤い本』にも記載されています。
羽賀弁護士
それでは、職業介護の場合の具体的算定額はどれくらいになるかですが、ご存知のように、近親者介護よりも高い傾向があって、おおむね日額10,000円~30,000円台の間で認定されています。
後遺障害等級1級の場合には、日額15,000円~18,000円程度の範囲というのが比較的多いようです。
日額20,000円やそれに近い金額を認めたものも散見されますが、これは、どんな事例かといいますと、例えば、被害者の状態などから24時間態勢での看視が必要とされたものや、数時間ごとの体位交換が必要であることなどから、複数の職業付添人が必要である事例など、介護の負担が特に重い場合ですね。
山本弁護士
介護者の特定の年齢をもって、近親者介護と職業人介護を区分しない判例もありますね。
羽賀弁護士
一般的には、近親介護者が67歳の時点をもって職業介護に移行すると判断される事案が結構あると思います。ただ、そういった形で切らずに、平均余命の期間にわたって一律で出すという裁判例もあり、その場合8,000円~15,000円程度の範囲で認定されており、ほとんどの事例で日額10.000円以上の金額で認定されています。
羽賀弁護士
あと、『交通事故相談ニュース』45号に、『交通関係訴訟の実務』という本の内容が少し引用されています。
これは、先にご紹介した『赤い本』の内容とほぼ同じなんですが、職業介護費用については、「後遺障害等級1級の場合、東京地裁では、日額18,000円ないし20,000円程度を認めることもあるが、日額15,000円ないし18,000円程度を認める事が多く、20,000円を超える職業付添人の費用を認めることは少ない」というものです。
羽賀弁護士
次に、具体的な事例をご紹介したいと思います。
『赤い本』に掲載された平成18年から22年頃の事例と、『交通事故相談ニュース』に掲載された平成25年頃から31年頃までの事例。それから私が受任した案件を、障害別にまとめました。
羽賀弁護士
まず遷延性意識障害の事例ですが、単純に平均すると、近親者介護費の認定は10,000円くらいです。職業介護費だと、単純平均では20,000円くらいというところで、近親者介護・職業介護合算の場合は20,000円くらいです。
羽賀弁護士
遷延性意識障害は、障害の内容が、寝たきりで意識が無いという状態です。当然症状はそれぞれの方によって異なりますが、高次脳機能障害や脊髄損傷よりも、症状のバラツキが小さいです。後遺障害の程度が比較的近い人が多いといえますので、『交通事故相談ニュース』には、遷延性意識障害なら、介護費用について大まかな傾向を読み取ることができる、との記載があります。
ですから、平均値などを見て頂くだけでも、おおよそのイメージが掴めるのではないかと思います。
とはいえ、事案によって認定されている介護費にある程度のばらつきはありますので、詳しいところは、事案にあたった時に裁判例等を調べて頂ければと思います。
羽賀弁護士
次に高次脳機能障害1級の認定を受けた事例です。
これも判例の単純平均だけで出したんですが、近親者介護ですと8,600円くらい、職業介護ですと20,000円弱くらい、となっています。

近親者介護は、ざっと見て、低くて6,000円から高くて12,000円くらい。職業介護の方は、一番低い例で12,000円、高い例で30,000円、という感じで、金額のバラツキは遷延性意識障害に比べると大きいと思います。
高次脳機能障害といっても、精神面の問題が強いのか、あるいは、身体機能障害の方が強く出ているのか、それによっても大分違ってくるんだろうと思います。

あと、事例を見ると、基本的に自宅介護をしているという方がほとんどであるというのが特徴かと思います。基本的には自宅介護の方が、施設介護よりも介護費用の認定額が高くなることがあるのかなと思います。
羽賀弁護士
次は、高次脳機能障害の2級の事例です。
『赤い本』は、そんなに事例数がありませんが、近親者介護で6,600円、職業介護で13,500円という平均値になります。
『交通事故相談ニュース』には、比較的高い認定を受けられた8つの裁判例については詳しく紹介されていましたが、介護の費用が0円から9,000円の事案については、具体的に紹介されていませんでした。そのため、こちらの文献から平均値を出すことはできていません。なお、高次脳機能障害2級でも介護費が認められていない事案があるとのことで、珍しいかもしれませんが、注意は必要です。
『赤い本』からしか平均値を出せませんでしたので、ちょっと数が少ないんですが、やっぱり、1級の事案よりは大分、認定される介護費用が低い傾向があります。
羽賀弁護士
『交通事故相談ニュース』には、高次脳機能障害と脊髄損傷の事案では、被害者毎に要介護の状態や、日常生活の自立の程度が相当異なるので、必要とされる介護の、内容・程度・時間も異なることが多いという事実があるのと、当事者の立場によって、後遺障害による日常生活の制限の度合や、介護を要する状態、介護費用の捉え方が異なる為、一層悩ましいということが改めてうかがわれた、との記載があります。
吉山弁護士
高次脳機能障害の場合、どうしてもバラツキが出やすいというのは私も感じています。
羽賀弁護士
あと脊髄損傷の1級ですね。
2級はあまり事案が無かった様で、脊髄損傷は1級のみ事例が掲載されていました。

高次脳機能障害2級と同じく、『交通事故相談ニュース』には、比較的高い認定を受けられた裁判例は詳しく紹介されていましたが、介護費用の認定が8,000円以下の7つ事案については、具体的に紹介されていませんでした。そのため、介護費用の平均値は『赤い本』のみから算定しました。具体的には、『赤い本』掲載の13件だけで単純に平均値を出すと、近親者介護は8,600円程、職業介護は15,000円程です。
加藤弁護士
脊髄損傷の場合、症状は恐らく、手や足のしびれや、手や足が動かないといったものなので、高次脳機能障害よりは、障害の内容は近いと思うんですけれども、一方で、損傷した場所によって障害の程度は大分違ってくるのが特徴ですね。
羽賀弁護士
そうなんです。そこで、そのあたりを考慮して、脊髄のどこを損傷したのかで、認定額を整理してみました。第1頚髄を損傷している事案は3件あり、職業介護25,000円とか、全期間について15,000円とか、職業介護28,000円と認定されていました。近親者介護でも、1日10,000円以上となっているケースがあります。第1頚髄損傷となると、恐らく、手足は当然動かないのと、呼吸もかなり厳しい、という事例かと思いますので、介護費の認定が非常に高くなる傾向があると思います。第1頚髄損傷ではなくても、頚髄損傷の場合、手が使えないということが多いですので、介護費の認定は高くなりやすいと思います。掲載されている事案でも、近親者介護で1日8,000円程度の事案が複数ありますし、職業介護で20,000円弱の認定になっている事案もあります。
山本弁護士
胸髄の損傷で、麻痺の範囲が胸より下の事案だと、手は動くので、例えば、車椅子に乗っていれば食事の介助はそこまで要らないんじゃないかという事例もありますので、頚髄を損傷した事案と比較して、介護費用が低くなる傾向が出てくると思います。文献に掲載されている事例をみても、1日あたりの介護費用が20,000円を超えている事案はほとんどなく、近親者介護が1日4,500円とか6,000円という事案もあります。
羽賀弁護士
なお、掲載事例は、頸髄か胸髄の損傷ばかりで、腰髄つまり腰の部分がやられて足が動かないといった事案はありませんでした。そのため、腰髄の損傷の場合の介護額の認定傾向は読み取れませんでしたが、胸髄損傷よりも多分もうちょっと介護費用が低い認定になるのかなとは思います。
羽賀弁護士
最後に、私の扱った事案をご紹介します。
まず、Kさんですが、遷延性意識障害の方です。
裁判上の和解で解決したんですが、近親者介護は1日5,000円、職業介護は1日20,000円という認定額です。
Kさんは非常に体格の大きい方で、自宅でご両親が介護をしておられるのに、その割には近親者介護費用が1日5,000円低めの認定が出ました。職業介護は1日20,000円なので概ね妥当な金額と言えると思いますが、ご依頼者がちょっと金額が低いとおっしゃったので、相手方と交渉して和解金額の増額を増やして、裁判上和解という結論に至りました。
羽賀弁護士
Sさんは、高次脳機能障害1級で、基本的にずっと入院されていて訴訟の途中で亡くなられました。
最終的には控訴審での判決ということになったんですが、入院中なら病院で介護が受けられるんじゃないか、ということで、介護費用は低く、1日平均1,000円という認定額でした。その代わり、それ以外の治療費、介護雑費、施設使用料などは全額認めるとの認定でした。
羽賀弁護士
次のお2人はどちらも高次脳機能障害1級ですが、身体機能障害が中心の方です。

Fさんは、施設で介護を受けられている方で、施設の実費は大体1日10,000円くらいです。ただ、今後ずっと施設介護というわけではなく、お子さんによる介護に移行する可能性がある状況でしたので、その点を交渉の際に主張しました。その結果、1日当たり12,500円、平均余命期間全体について、ということで示談解決しています。

Mさんは、解決時点でも入院中で、介護体制は未定です。しかし、小学生のお子さんが2人いらっしゃるので、現実的に考えて、妻による介護は非常に難しいだろうし、多分自宅介護も難しいんじゃないか、という状況の方でした。介護の方針は未定でしたが、退院されていよいよ介護をするとなると、負担が大きいので、1日当たり15,000円平均ということで出ています。
羽賀弁護士
次は、比較的高齢で高次脳機能障害2級の認定を受けられた方の事例です。

Tさんはグループホームに入っていて、費用は介護保険負担分も含めて1日当たり約14,200円でしたが、実際の負担額はもっと低くなります。1日平均8,000円で示談解決しましたが、介護の中身や、高次脳機能障害2級であることからすると妥当な金額と言えると思います。

もう1件のOさんは、ずっと入院中なので、本当はあまり費用が掛かっていないし、先ほどのKさんの裁判所の認定から見て、介護費用はそんなに必要ないんじゃないかみたいな話になりかねなかったんですが、症状固定後の入院費用や雑費も含めて1日8,000円で保険会社と和解をしました。
羽賀弁護士
最後は、脊髄損傷1級のお2人です。いずれも頚髄の3・4・5・6辺りの損傷なので、ほぼ手が使えないか、若干使えるかなという症状の方です。

Iさんは自宅介護で、ご両親が介護されていました。認定としては、近親者介護は1日8,000円、職業介護18,200円となっています。比較的高位の脊髄損傷で、介護が必要になる範囲が広いことから、高額の介護費用が認定されました。

Yさんも自宅でご両親が介護されています。この方の事例は、近親者介護1日10,000円、職業介護1日20,000円で示談解決しました。Yさんは、脊髄損傷のみならず、脳機能の障害もあること、体格が大きい方であることも考慮し、さらに高額の介護費用の認定になったと言えます。

なお、IさんもYさんも高額の介護費が認定されていますが、同じような事案であっても、保険会社の担当者によってどこまで交渉可能かという点は異なると思いますし、最終的には介護費用の認定だけではなく、示談金額総額として妥当であるかを見ていく必要があります。

「みお」のまとめ

遷延性意識障害・高次脳機能障害・脊髄損傷等の重度の後遺障害の場合、生涯にわたる介護が必要な場合が多いため、十分な賠償金を獲得しなければなりません。そのためには、適正な後遺障害等級の認定を受けたうえで、介護の現状と今後の見通しを正確に判断して、必要な費用を主張・立証する必要があります。しかしこういったことは、これまでの裁判例や、医学を始めとして様々な専門的知識が必要ですので、多くの事例を扱ってきた弁護士に相談されることをお勧めします。

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