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弁護士による交通事故研究会

裁判例研究
Vol.34

後遺障害等級3級以下の場合の将来介護費について

本件の担当
石田弁護士

2020年04月25日

事例の概要

自賠責保険では、常時介護及び随時介護が必要とは認められない、後遺障害等級3級以下の事例で、示談や裁判で将来介護費が認められる場合について検討しました。

議題内容

赤本掲載の講演「後遺障害等級3級以下の場合の将来介護費」について

議題内容

・3級以下で、将来介護費が認められることがどこまであるか

・将来介護費の相場

・将来介護費を認定する際に考慮する要素

・将来介護の期間

・被害者が高齢である場合の、将来介護費の認定について

参加メンバー
伊藤弁護士、小川弁護士、羽賀弁護士、吉山弁護士、田村弁護士、石田弁護士、山本弁護士、加藤弁護士、松弁護士
石田弁護士
今回は、「後遺障害等級3級以下の場合における将来介護費について」をテーマに取り上げます。
自賠責保険では常時介護や随時介護にあたらない後遺障害等級3級以下の事案で、将来介護費が認められることがどこまであるのか、ということについて、赤本に掲載されています講演を基に、お話ししていきたいと思います。
吉山弁護士
3級以下でも、将来介護費の請求が認められるケースがある、ということですね。
石田弁護士
そういうことです。
羽賀弁護士
赤本と青本で、将来介護費の金額にずれはありますか?
石田弁護士
大きなずれはないですね。赤本では、将来介護費は、「職業付き添い人の場合は実費全額、近親者が付添人だと1日8,000円程度」とされています。青本では、「実際に支出されるであろう費用額に基づき、相当額を設定し、近親者が付添いを行う場合には、常時介護では1日8,000円~9,000円を支払うのが目安」とされています。赤本の方も8,000円という基準は常時介護を前提としていますので、ほぼ同じ様な考え方をとっていると言えます。赤本と青本に共通しているのは、常時介護の場合はそれ位が目安だけれども、そうでない場合は、金額が変わってくるということです。
羽賀弁護士
そうでない場合というと、随時介護の場合ですね。
石田弁護士
はい。日常の動作の一部についての身体介護や、介護としての行動の監視、あるいは声掛けが必要だとかですね。そういった具体的な内容と、介護にどれ位時間がかかるかとか、そもそもどの程度介護が必要かなど、それぞれの方の事情によって、個別に金額を判断する必要があるという前提で、金額の基準を立てています。
羽賀弁護士
そんな場合の介護費は、例えば3級なら幾ら、4級なら幾ら、といった画一的な判断ができるわけではないので、内容に応じて、常時介護の基準額から減額する形で算出されることになります。
石田弁護士
個別具体的な事情をもって判断せざるを得ないので、やはり、実際の事例を考える上では、裁判例を踏まえて近い事例を探すなどして、当てはめざるを得ませんが、ある程度こちらの資料を基に、私の方で整理したものでお話しさせて頂きます。
石田弁護士
そもそも後遺障害3級以下の場合は、自賠責保険上、常時介護、随時介護のいずれにも相当しません。しかし、じゃあ実際、本人が、何の問題も無く自立して暮らしているのかっていうと、そうとも言えない場合があります。例えば、計算ができないから家計管理ができないとか、そもそも体に障害がある場合は、誰かの介助が無いと生活に支障が出るとか。3級以下でもいろいろな支障があると考えられますので、それに対する賠償として、将来介護費が認定される場合がある、という風に考えます。
田村弁護士
例えば、高次脳機能障害の場合で、記憶障害で短時間しか記憶できないから、買い物に行けないとか、物を置いた場所を忘れてしまうとかで、1人で暮らすのは難しいといった場合が考えられます。
石田弁護士
他にも、人とコミュニケーションが上手く取れなくて、社会生活を営むことができないとか、判断力が低下していることで行動に危険を伴う、例えば火を使うのが危険だとか、他にも様々な症状がありますから、高次脳機能障害の場合、将来介護費がある程度認められやすいといえます。
吉山弁護士
他にも、脊髄損傷、下肢の欠損などで、将来介護費が認められる場合もあります。
石田弁護士
ここからは、赤本の講演の中の設問に答える形で検討して行きたいと思います。
設問1。
「後遺障害等級3級以下の場合でも介護費用が認定されるのは、どのような場合なのでしょうか。当該後遺障害の内容に対する介護内容、職業介護人の要否、必要かつ相当な介護費用について、いかなる要素を、いかなる方法で考慮し、いかに判断すべきでしょうか。
逆に、5級以上の高次脳機能障害が残る事案でも介護費用が認定されないのは、どのような場合が考えられるでしょうか。」
石田弁護士
これは個別の判断が必要になるところで、実際色々な裁判例を見て検討せざる得ない所があります。羽賀先生その辺りいかがでしょうか?
羽賀弁護士
講演では、裁判例の傾向としては、高次脳機能障害について、3級認定の事案では、将来介護費はおおむね肯定の傾向にあり、あまり否定例は見られない、5級の事案については、否定例も見られるので、より個別に具体的な検討が必要になってくる、7級ではそもそも将来介護費が請求される事案自体が上位等級に比べると多くないと述べられています。
吉山弁護士
下肢欠損についても、これもまぁ基本的な考え方は一緒ですけれども、4級事案でも否定例がありますから、どの程度介護が必要かという事の説明をすることが求められると思います。
石田弁護士
おっしゃるように、高次脳機能障害で後遺障害3級認定とかでしたら、裁判で比較的、肯定の傾向にあるとは言えるんですが、5級の事案になってくると、確実に肯定されるかと言ったらそうではないですし、絶対否定されるかと言えばそうでもない。なかなか中間的な事案が多くて、個別的な判断が求められます。講演でも、等級の程度と肯定・否定の判断に明確な関係性はないが、少なくとも5級以下であれば、日常生活が一応自立していることが多く、将来介護費が否定される事案も少なくないとされています。
倉田弁護士
実際のところ、将来介護費を判断する際は、具体的にはどういった要素が考慮されるんでしょう?
石田弁護士
まず身体介護の必要性です。下肢に障害があって介護の必要がある場合を想定しますと、例えば、日常生活の自立の程度がどのくらいであるかとか、実際に行われている介助はどの程度なのかとか、家屋の改造や車椅子などで改善される余地がどの程度あるのかとか、そういった要素を踏まえて、将来介護がどこまで必要かっていう事を判断します。
小川弁護士
高次脳機能障害が残ると、物事を管理する事ができないとか、色々な症状が出て来ますね。
石田弁護士
おっしゃる通りです。例えば、日常生活の基本動作が1人でどれ位できるのかって事に加えて、危険の防止、例えば火を使うときに危なくないかとか、他の人を傷つけたりしないかとか、そういった危険を防ぐために、どの程度周りの支援が必要になってくるかといった視点で検討される必要があります。さらには、お金をきちんと管理できるか、買い物などちゃんと行けるか、勝手に変な契約をしてしまうなど、日常生活に支障が出る様な行動をとってしまわないかといった視点も必要です。
石田弁護士
こういった事象を説明するには、単に医療記録だけではなくて、例えば、家族の陳述書などによって、どの程度支障が出ているか説明するといった事が必要になってくるということです。具体的にどんな資料が必要になるかは、個別的に判断せざるを得ないということですね。
羽賀弁護士
3級や5級の事案での将来介護費の目安は、どのくらいになりますか?
石田弁護士
3級の事案で日額3,000~5,000円程度、5級事案では、日額2,000~3,000円程度が相場とされています。もちろんこの金額も、先程来出て来たような事情を踏まえて、個別具体的に判断されますので、一概には言えません。
羽賀弁護士
介護期間はいかがでしょう?
石田弁護士
被害者の平均余命まで認められるというのが一般的です。
そして、もし近親介護者が67歳以上だとすると、その方がもうこれ以上介護をするのは難しいのではないか、という評価も出なくもないんですが、3級や5級の事案では実際には、近親者が67歳を過ぎても近親者介護を前提とした介護費を認めることが多いようです。
以上が、設問1についての解答になります。統一的な判断は難しいところで、裁判例でどの様な判断が行われるかという事を見て、個別に判断して行く必要があるということです。
石田弁護士
設問2に移ります。
『被害者が高齢、特に80歳以上である場合、障害等級が重度とは言えない場合でも、自身だけでは日常生活が困難な場合がよく見受けられます。
このような場合、将来介護費用が認定されるでしょうか。認定されるとしたら、どのような要素が考慮されるでしょうか。』
吉山弁護士
高齢者は、事故に遭われていなくても、当然そういった介護がある程度必要になる可能性は高いですね。そもそもこの介護は事故によって必要になったのか、元々必要だったと言えるのか。判断が難しい部分がありますね。
小川弁護士
事故当時はそこまで介護が必要でなかったとしても、ある程度年齢を重ねていけば、介護は必要になることがありますので、事故当時に介護の必要性がそこまで無かったという事実だけで、因果関係を肯定することはできない場合があります。
石田弁護士
講演では、例えば、今までどのような入通院履歴があったかとか、介護保険を利用した履歴があるかとか、それまで何か介護サービスを利用していなかったか等々を手がかりに、今までどういう生活をしてこられたかということを踏まえた上で、将来的には、事故が無かった場合も、介護が必要になることも視野に入れながら、慎重な検討が求められるという風に述べられています。
細かい事は裁判例が、本の中に載っていますので、またそちらの方を参考にして頂けたらと思います。私からは以上です。
吉山弁護士
石田先生ありがとうございました。羽賀先生、感覚的なものでいいのですが、今回の講演録の内容と、実際の事件処理と比較するとどのような印象でしょうか。
羽賀弁護士
おおむね一致している印象です。
講演録には、介護費の日額が、3級で3,000円から5,000円、5級で2,000円から3,000円で、7級はそもそも請求をしていない事案が多いのではないかとありましたが、私が示談提案をしている金額に近い印象です。
私の場合は、依頼者の方の介護状況をお伺いした上ですが、大体、高次脳機能障害3級で日額5,000円、5級だったら3,000円請求して、7級は将来介護費付けないっていうパターンが多いかなと思います。吉山先生はいかがですか?
吉山弁護士
最初に示談で提案する時は、もうちょっと高めに設定してるかな。
以前担当した例なんですが、裁判所が鑑定して、5級で将来介護費日額3,000円を認めてくれたという事案がありました。でもこの例くらいかな、5級以下で将来介護費が付いたのは。
吉山弁護士
設問2の様な、高齢者が事故に遭って、怪我とは直接因果関係はないんだけれど、入院している間に認知症の様な症状が出始めて、介護が必要になったといったご相談は時々ありますが、これはなかなか難しいなぁっていう気はします。
こういった事案で、介護費が認められたようなケースって、皆さんありますか?山本先生いかがですか?
山本弁護士
私が受け持った案件では、このタイプで認められた例は無いですね。
羽賀弁護士
示談ですが、将来介護費が認められた事例があります。
被害者は80歳くらいの女性で、併合6級の認定でした。足指の欠損と、足の可動域制限などがあって、80歳というお齢で1人で歩かれるのはちょっと危ない状態になって、結局、施設に入らざるを得なくなってしまわれました。こちらの請求額が丸々は出なかったんですが、日額1,500円くらいの介護費を入れて、示談が成立しました。ただ、等級は6級と比較的高いですし、他の示談金の要素とのバランスも踏まえて介護費を入れることができた可能性がありますので、一般化するのは難しいかもしれません。

「みお」のまとめ

将来介護費の問題は、介護の内容や必要性に個人差があり、期間も長く金額が大きくなりがちですので、示談や裁判の場で争われることが多くなります。特に、自賠責保険では介護費が認められていない後遺障害等級3級以下の事例では、詳細で具体的な証拠を用意し、相場を踏まえた適正な金額を提示して、交渉を進める必要があります。
「みお綜合法律事務所(大阪・京都・神戸)」は、様々な後遺障害の損害賠償請求の経験が豊富ですので、一度ご相談いただければと思います。

ご参考)
赤本:「民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準」のこと。表紙が赤いことから赤本(赤い本)と呼ばれています。東京地方裁判所の実務に基づいた、賠償額の基準や、参考判例、交通専門部の裁判官による座談会や講演等を掲載しています。交通事故の処理を行う際に、裁判官や弁護士が参考にする専門書で、毎年改訂版が発行されます。
青本:「交通事故損害額算定基準」のこと。表紙が青いことから青本(青い本)と呼ばれています。損害額の算定基準と解説、全国の参考判例、各種分野の解説記事、専門家による講演録等を掲載。隔年で改訂版が発行されます。

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