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弁護士による交通事故研究会

制度研究
Vol.83

自賠責保険の利用を検討する事案

本件の担当
羽賀弁護士

2025年03月25日

事例の概要

自賠責保険の利用を検討する事案について4つの場合を検討しました。

議題内容

議題内容

・①被害者の過失が高い場合、②治療期間に争いがある場合、③被害者側の過失で示談金が減額される場合、④任意保険が兼業主婦の主婦休損を認めないか少額しか認めないという場合に、自賠責保険を利用するメリットについて。

・保険会社が被害者の主婦休損を認めないため、自賠責保険の利用を予定している事例の紹介。

参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、石田弁護士、西村弁護士、原口弁護士、青井弁護士
羽賀弁護士
今回は、自賠責保険の利用を検討する4つの場合について検討します。その4つとは、①被害者の過失が高い場合、②治療期間に争いがある場合、③被害者側の過失で示談金が減額される場合、④保険会社が兼業主婦の主婦休損を認めないか少額しか認めない場合、です。④は、現在私が手掛けている事案を例に説明したいと思います。
羽賀弁護士
自賠責保険は、被害者の過失が7割以上にならない限り減額されないので、①の被害者の過失が高い事案の場合、自賠責保険に請求した方が金額が高くなるケースがあり、利用を検討することはよくあります。
羽賀弁護士
②は、治療期間に争いがある場合です。
例えばむち打ちで、保険会社に3ヶ月で治療費を打ち切られたので、健康保険等を使って治療を継続する場合、打ち切り後に自分で支払った治療費を自賠責保険に請求をすると、その分の治療費が支払われる可能性があります。立て替えていた治療費が自賠責保険から支払われていると、紛争処理センターでは自賠責保険の判断を前提として判断が出されることが多いため、そういった形での自賠責保険の利用も考えられます。紛争処理センターで当方の主張が認められる可能性があれば、保険会社との交渉で解決できる可能性も上がるかもしれません。
ただし、この方法は、立て替えていた治療費が全額自賠責保険から出ないと使えません。そのため、任意保険からの既払いと立て替え分の合計が120万円以下である必要があります。
山本弁護士
むち打ち等で保険会社が治療費を打ち切ってくることはよくあります。自賠責保険に請求→示談交渉→交渉がまとまらない場合に紛争処理センターに申立の方法は、裁判より手堅く治療費が認められるはずであり、期間も短くなるため、合理的な方法と言えます。
羽賀弁護士
③は、被害者側の過失で示談金が減額される場合です。よくあるのが、夫の運転する車の事故で、同乗していた妻が怪我をしたというパターンです。任意保険では、「同乗運転者と同乗者に身分上ないしは生活関係上一体をなすとみられる関係がある場合」、同乗者について、同乗運転者の過失割合に基づき示談金が減額されるので、夫の過失割合が2割なら、妻の示談金も2割減額されてしまいます。
これに対して自賠責保険では、同乗者は、加害者の自賠責保険と同乗運転者の自賠責保険の両方に請求できる可能性があります。任意保険では示談金が減額になる一方で、自賠責では傷害部分と後遺障害部分の枠が2倍になるので、任意保険からの示談金よりも自賠責保険の算定の方が高くなる可能性があります。
羽賀弁護士
④の、任意保険会社が兼業主婦の主婦休損を認めないか、少額しか認めない場合ですが、研究会Vol.82の「兼業主婦の休業損害」の議論が前提になります。具体的には、兼業主婦で正社員として一定の収入があり、仕事は休んでいないようなケースが問題になります。
私が受任中で、相手方の保険会社が主婦休損を認めないため、自賠責保険を使うことにした事案がちょうど当てはまりますので、ご紹介します。
羽賀弁護士
ご依頼者は50才代の女性、むち打ちで治療期間が約3か月、通院は約50回ですが、仕事を休まれていません。契約社員で、年収は約250万円です。高齢のご両親と同居で、ご両親は共に病気があるため、家事はほとんどご依頼者がやっています。
羽賀弁護士
保険会社からの提示額は、既払いの治療費が約42万円、慰謝料はほぼ弁護士基準通りで約49万円でした。問題は休業損害で、「被害者は給与所得者に該当するので主婦休損は認定しない」との主張があり、結果、最終提示額は慰謝料のみで、約49万円になりました。
羽賀弁護士
主婦休損が認められていないので、依頼者の方と相談して、応じるのは難しいという結論になりました。そして、相手方が日弁連交通事故相談センターに対応している共済であったため、日弁連交通事故相談センターへの申立を検討しましたが、もう1つの選択肢として、自賠責保険の利用を検討したらどうなるかなと思って試算してみると、こちらの方が金額が高くなる可能性があることが分かりました。
山本弁護士
具体的な試算はどのようなものだったのでしょうか。
羽賀弁護士
日弁連交通事故相談センターに申立をした場合の試算は以下の通りです。

治療費  約42万円
休業損害 約20万円(1日あたり10,950円×治療期間94日×20%)
慰謝料  約49万円
既払金  約42万円
合計   約69万円
休業期間は、ある程度の年収があって仕事を休んでいない方については主婦休損が否定される可能性があるし、主婦休損が認定されるとしても、仕事を休んでいないということについては休業割合に相応に考慮されるという赤い本の記載を考慮して、やや短く算定しています。
羽賀弁護士
これに対し、自賠責保険に請求をした場合の試算は以下の通りです。

治療費  約42万円
休業損害 約32万円(1日あたり6,100円×53日)
慰謝料  約43万円(1日あたり4,300円×(94日+7日))
既払金  約42万円
合計   約75万円
羽賀弁護士
これなら、日弁連交通事故相談センターに申し立てるまでもなく、自賠責保険に請求した方が、時間がかからず、金額も出るようなので、この方向で手続きを進めていこうと考えています。
羽賀弁護士
この方法で自賠責保険の請求ができるのは、当然の前提として被害者が兼業主婦で、保険会社が、主婦休損を認めないか少額の認定にとどまった事案になります。それに加えて重要なのは、治療費がそれほど支払われていない点になります。
例えば治療費が100万円くらい支払われていたら、自賠責保険の支払い枠があまり残っていないので、自賠責保険に請求するメリットはありません。これに対し、本件は治療費が約40万円で、自賠責の支払い枠がだいぶ余っていますので、こういった形で手続きができる可能性があると思ったわけです。
相手方保険会社が、主婦休損前提で自賠責加害者請求をしてくれたらいいのですが、しないということなので、こちらから被害者請求すれば認められる可能性が高いのではないかと考え、現在手続きを進めています。
吉山弁護士
日弁連交通事故相談センターに申し立てた場合の試算で、休業損害が2割になっていますが、実際には、どう認定されるかはやってみないとわからないということですね。
羽賀弁護士
そうですね。主婦休損は、休業日数の認定が事案によって大きく変わってしまう傾向があります。
ただ、今回の件で全く認定されないことはないと思います。収入が約250万円だし、おそらくご両親が家のことはやっていないという立証はできると思うので、主婦という認定は出ると思います。
ただ、仕事を休んでいない点が相応に考慮されるというのが赤い本の見解なので、休業期間の認定はやや少なめに2割で試算を出しています。
吉山弁護士
今回の件は、慰謝料が自賠責と任意保険であまり変わらないですね。
羽賀弁護士
そうですね、任意保険の方が高いですが10万円も差がありません。
理由は、怪我が頚椎捻挫のため、慰謝料が弁護士基準でも伸びづらい点と、2日に1回以上通院されているので、自賠責基準でも慰謝料が高くなっている点にあります。

「みお」のまとめ

ご紹介した通り、交通事故の解決のためには、適用される保険をうまく使うことが重要になります。自賠責保険は、慰謝料の基準が低く、限度額もあるため、通常は任意保険会社と交渉した方が示談金が高くなります。しかし、任意保険の認定が厳しいケースもあり、そのような場合は自賠責保険を使った方が金額が大きくなることが考えられます。
弁護士に依頼すれば、どのように手続きを進めるのがいいかの判断を弁護士に任せることができます。相手方保険会社との手続きを負担に感じている方は、みお綜合法律事務所にご相談ください。

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