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弁護士による交通事故研究会

裁判例研究
Vol.79

関節可動域制限12級の労働能力喪失期間

本件の担当
羽賀弁護士

2024年10月02日

事例の概要

関節可動域制限12級の労働能力喪失期間の認定傾向について、裁判例と当事務所での解決事案をもとに検討しました。

議題内容

議題内容

・検討議題選定の理由

・自保ジャーナル掲載事案の検討

・みお綜合法律事務所の解決事案について解説

参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、石田弁護士、西村弁護士、原口弁護士、青井弁護士
羽賀弁護士
今回は、関節可動域制限12級の後遺障害が残った場合の労働能力喪失期間について検討します。対象となる後遺障害等級は、上肢の12級6号と下肢の12級7号です。
このテーマを取り上げようと思ったのは、関節可動域制限12級の後遺障害が残ると、基本的に「全期間の労働能力喪失期間が認められる」と考えることが多いように思うのですが、示談交渉の場面では、必ずしもそうではないことがあります。保険会社から、喪失期間を短くしてくださいと言われることがあります。また、裁判例でも全部の事例で全期間認められているわけではありません。
赤い本にもこのテーマの講演は掲載されていないと思いますので、傾向を調査しました。
吉山弁護士
確かに、保険会社から関節可動域制限12級で労働能力喪失期間を制限するとの主張が出てくることがありますので、全体的な傾向は気になるところです。
羽賀弁護士
まず、自保ジャーナルで紹介されている事案から、労働能力喪失期間が上限まで認められている割合や、制限されている場合はどの程度の期間なのか、制限する場合の理由を検討しました。
また、労働能力喪失期間ではなく、労働能力喪失率の方が制限されている事案もありますので、そちらも確認しました。
羽賀弁護士
私が解決した事案も同様に、労働能力喪失期間が上限まで認められた割合や、制限された場合の具体的期間、制限を受け入れた理由などをまとめました。
山本弁護士
裁判例の傾向と示談交渉の傾向が同じなのか、異なるのかも気になりますね。
羽賀弁護士
まず、自保ジャーナルで紹介された事案は128件ありました。
そのうち、全く制限がかかっていない、つまり喪失期間は上限まで認定、喪失率も制限や逓減していない事案の割合が60%台となっていました。
労働能力喪失期間は上限まで認めるものの、喪失率が逓減になった事案、例えば初めは14%で途中から10%にするといった事案が4件。
それから、喪失期間は上限まで認めるものの、喪失率が14%未満の事案が11件。
そして、そして今回のメインテーマになる喪失期間が制限された事案の割合は20%強でした。
何らかの理由で後遺障害逸失利益が制限されている事案が3分の1程度ありますので、結構な割合と言えると思います。
羽賀弁護士
関連して、骨折後の疼痛で12級13号が認定された事案の場合を調べると、全期間の労働能力喪失期間を認めているのは40%くらいで、60%程度は制限されていました。やはり骨折後疼痛の12級13号よりも、関節可動域制限の12級6号や7号の認定の方が、喪失期間が上限まで認められやすいように思います。
山本弁護士
同じ12級の後遺障害等級でも、疼痛等の12級であるか、関節可動域制限12級であるかで労働能力喪失期間の認定傾向が違うと言われることがありますが、まさにそのような傾向になっていますね。
羽賀弁護士
そうですね。やはり、可動域制限12級の方が喪失期間は長期間認定されやすい傾向が出ています。
可動域制限12級が認定された裁判例の中身を見ていきますと、当初の喪失率は14%で、その後徐々に下げていくと判断された事案が4件あります。35歳以下の比較的若い人の事案で、喪失率14%を認める期間は5年とか10年とか21年とか色々ありますが、その後は、5%とか7%とか10%とかに喪失率が下げられています。
羽賀弁護士
逓減の理由は、長期間経過すると回復の可能性があるとの内容になっているものがあります。
可動域制限が回復すると明確に記載された事例はあまりなく、例えば、可動域制限に派生する疼痛が緩和される可能性があるとか、代替動作の獲得などを理由にしている事例があります。
山本弁護士
労働能力喪失率の逓減と、労働能力喪失期間の制限は、言い方は違いますが同じような中身になりますので、特に若い人については、喪失率の逓減だけでなく、喪失期間の制限にも気を付けないといけなさそうです。
羽賀弁護士
そうなると思います。なお、喪失率の逓減の場合、将来の近い時点の逸失利益ではなく、10年20年単位先の逸失利益であることと、一部の期間について喪失率が一部制限される内容であるため、逸失利益制限の程度は大きくない場合もあります。そこは、事案の中身をよく見ていく必要があると思います。
羽賀弁護士
今回のテーマは、可動域制限12級で喪失期間の制限があるかどうかですが、喪失期間は上限まで認定するものの、喪失率が制限になった事案も11件あります。
後遺障害はあるものの減収が生じていないか、ほとんど減収がない事案が多くありました。
羽賀弁護士
これに対し、怪我の内容からみて、日常生活にほとんど支障がなくなることが多く、筋力強化である程度の改善の可能性が考えられるとの理由が記載されている事案もあります。
ただ、このような理由付けで喪失率を制限する事例は例外的かもしれません。
吉山弁護士
以上の点は、労働能力喪失期間とは別の議論ですが、会社員では12級の後遺障害があっても減収がないケースもよくありますので、逸失利益の見通しを立てる際は重要なポイントになります。
羽賀弁護士
次は可動域制限で喪失期間を制限するとされた事案です。
理由付けは色々ありますが、回復可能性を理由にしている裁判例もあります。あとは、仕事内容に影響が小さいのではないかとか、通院頻度が低いとか、スポーツができるぐらいに回復しているとか、様々な理由があります。認定されている可動域が120°対160°でギリギリ後遺障害として認定されていることが影響しているのではないかと思われる事案もありました。
羽賀弁護士
その他、理由は不明ですが、原告側が喪失期間を10年等と主張をしている事案も時々あったりしますし、原告が高齢で、相当の体力を必要とする指圧師の職業の性質上、労働能力喪失期間全期間はそもそも仕事をするのが難しいのではないかとされた事例もあります。逆に肉体労働ではないことが理由になっている事案、例えば議員秘書の方とか、将来の就職先として大学院での学識を生かす専門職である可能性が高い方の事案があります。
羽賀弁護士
明確に可動域制限の回復等に言及している事案もありますが、明確に回復可能性に言及するのは例外的と思います。
羽賀弁護士
あと、私が解決した事案ですが、12級6号・7号で、高齢等の理由で逸失利益が認められない事案は除外し、逸失利益が問題になった事案は25件ありました。
内訳ですが、喪失期間上限まで認められた事案の割合が60%台、喪失期間が制限されることで逸失利益が制限された事案の割合が30%台です。裁判例と同じ程度の割合と言えると思います。
羽賀弁護士
喪失期間の制限を受け入れて示談解決をした理由ですが、ライプニッツ係数の差がほとんどない事案がいくつかあります。
例えば基準年数22年のところ20年の事案、41年のところ34年の事案、30年のところ27年の事案について、ライプニッツ係数の差が1前後でそれほど大きな差にならなかったため、制限を受け入れました。
羽賀弁護士
それ以外では、喪失期間を制限する代わりに、過失割合が本来10%のところを0%にしたとか、主婦休損が緩やかに認定された事案もあります。
羽賀弁護士
可動域制限の後遺障害が残ったものの減収がなく、かつ、骨折がそんなにひどくなくて後遺障害等級がそのまま維持されるか見通しを立てづらかったため、喪失期間の制限を受け入れた事案もあります。
山本弁護士
示談交渉では、特定の損害項目で不利な認定がされていても、他の項目が有利な認定になっていることがよくあります。特定の損害項目の認定にこだわることなく、全体的な金額を見ていくことが重要と言えます。
羽賀弁護士
示談交渉では、保険会社から労働能力喪失期間を極端に短期間しか認定できないと主張されることがあります。例えば、本来の喪失期間が45年に対して、当初3年は喪失率14%、その後3年は5%との主張であるとか、本来の喪失期間が41年に対して、喪失率は9%、喪失期間は5年との主張がされたことがあります。
以上の事案は、いずれも紛争処理センターに申立をして概ね問題ない形で解決ができました。

「みお」のまとめ

交通事故で怪我をして後遺障害が残ると、それがいつまで労働能力に影響するか問題になることがあり、示談交渉では労働能力喪失期間の問題になります。むち打ちでは一般的に労働能力喪失期間が制限されますが、関節可動域制限12級の場合も本文に記載した通り制限されることがあります。保険会社から労働能力喪失期間を制限するとの主張がされた場合は、制限すべき理由があるか、制限の程度、その他の部分で有利な認定がないか、喪失期間の大幅な制限がされた場合の減額幅などの点を検討して、示談をするか、紛争処理センターに申立をするかなど検討する必要があります。
関節可動域制限12級が認定された事案や、認定される可能性がある事案では、逸失利益や示談金額が大きくなり、弁護士に交渉を依頼すると示談金額が大幅に伸びることが多いため、弁護士に相談・依頼することをお勧めします。

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