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弁護士による交通事故研究会

裁判例研究
Vol.75

自転車同士の交通事故の過失割合と手続きの特徴

本件の担当
羽賀弁護士

2024年04月09日

事例の概要

自転車同士の交通事故の過失割合と手続きの特徴について、裁判例の具体的な事故状況や修正事項をもとに解説し、自転車が加害者の場合の事故後手続きについて紹介しました。

議題内容

議題内容

・自転車同士の交通事故の過失割合の基本的な考え方

・事故の類型別の過失割合の検討

・修正要素について
(交差点事故の場合、歩道事故の場合、共通するもの)

・自転車事故の手続きの特徴

参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、石田弁護士、西村弁護士、原口弁護士、青井弁護士
羽賀弁護士
2024年版の赤い本に「自転車同士の事故に関する過失相殺について」と題する講演録が掲載されていました。2014年版の赤い本の「自転車同士の事故の過失相殺」との講演録(波多野講演)と、「自転車同士の事故の過失相殺基準(第一次試案)」もあわせて、自転車同士の事故の過失割合の考え方について解説します。
山本弁護士
自転車同士の交通事故は、判例タイムズにも過失割合の記載がないので、検討するのが難しいことが多いです。今回の赤い本など少しずつ類型化されている印象です。
羽賀弁護士
そうですね。徐々にですが類型化が進んでいると思います。
2024年赤い本の講演の自転車の過失割合の基本的な考え方をまとめると、道路交通法規が必ずしもきっちりと守られていないという交通実態があるものの、道路交通法に基づく規制を前提に過失割合を検討すべきであって、交通実態を過失割合で大きく考慮することには慎重であるべきということになります。
羽賀弁護士
次に、自転車同士の事故の過失割合の具体的基準については、自転車同士の事故は、四輪車同士の場合と同様に対等な関係にある者同士の事故なので、判例タイムズでの四輪車同士の事故が基準になるとしています。ただし、自転車に関しては特有の規制もあるし、自転車の性質上・物理上の特色もあることから、そういうことも加味して、過失割合を考えるべきであるというものです。
羽賀弁護士
では、具体的な事故状況をもとに過失割合を見ていきたいと思います。
1番目は、左右の見通しのきかない十字路交差点で、一時停止規制がある道路からと、一時停止規制のない道路から、出会い頭に自転車同士でぶつかった場合に、どういう過失割合になるかです。四輪車同士だったら一時停止規制側が80%、一時停止のない側が20%になる状況です。
この事故状況については、2014年版の波田野裁判官の講演や第一次試案にも記載があり、一時停止規制側が70%、一時停止のない側は30%になっています。
赤い本2024年版も同じ結論です。その理由は、自転車の方が四輪車に比べると運転操作が容易で停止回避等も容易なので、一時停止のない側の過失割合がやや高くなってもいいのではないかというものです。
羽賀弁護士
2番目は、左右の見通しのきかない同じ幅員の十字路交差点で、一時停止規制等はない場合です。こちらについては、判例タイムズでは、双方同程度の速度の四輪車同士の事故の場合は、左方車が40%、右方車が60%という記載になっています。
2014年版の波田野講演では、自転車同士の事故でも、左方車40%対右方車60%とされていたのに対して、第一次試案では、左方が45%、右方が55%と、意見が異なっていました。
赤い本2024年版では、第一次試案と同じ過失割合、つまり左方車45%対右方車55%が妥当ではないかとされています。その理由は、左方優先の原則は自転車にも及ぶ一方、自転車の運転者が左方優先の規制を知らない場合があることや、自転車が四輪車と比べて停止措置や回避措置をとるのが容易であることも考慮する必要があるというものです。
羽賀弁護士
3番目は、左右の見通しのきかないT字の交差点で、突き当たり路側に一時停止規制がある場合です。
こちらは、判例タイムズの四輪車同士の場合では、直進車が15%、右左折車が85%です。第一次試案の記載は、直進車が25%、右左折車75%で、赤い本2024年版も同意見です。理由としては、裁判例の記載しかなかったんですけれども、これまでに出て来た停止措置とか回避措置の取りやすさといったところが影響していると思います。
羽賀弁護士
4番目は、左右の見通しのきかない丁字路交差で双方の幅員が同程度、一時停止規制がない場合です。判例タイムズの四輪車同士の例では、直進車が30%、右左折車70%です。赤い本2014年版の第一次試案では、直進車40%、左折車60%。赤い本2024年版も第一次試案と同じで、直進車40%、左折車60%です。裁判例では、50%対50%が2例、右左折車65%~70%が3例で、裁判例の傾向が考慮されているようです。
羽賀弁護士
5番目は、歩道上で対向方向の自転車同士が衝突した場合です。これは第一次試案では50%対50%で、2024年版赤い本でも50%対50%です。自転車同士ではお互いの認識の可能性も回避の可能性も同じなので、50%対50%が基本ではないかということと、裁判例でも50%対50%というものがあるからというのがその理由です。
羽賀弁護士
6番目は、歩道上で同一方向の自転車同士で追い抜きの場合です。
この場合は、第一次試案では、先行車0%対後方車100%、2024年版でも先行車0%対後方車100%です。
裁判例は4例で、いずれも先行車0%対後方車100%の認定になっていることと、その他の理由付けとしては、①自転車にはバックミラーもないので、後続自転車を認識するのは困難、②後続自転車は先行自転車の動静を容易に認識できる、③自転車は走行時に不安定になりやすく、走行中も若干ふらつきが生じることもあるので、後続車が注意すべきではないか、といったことから、100%対0%ということです。
羽賀弁護士
7番目は、歩道上の同一方向の自転車同士で、先行車が進路変更してぶつかった場合です。判例タイムズの四輪車同士の場合は、進路変更車が70%で、後続の直進車が30%です。
羽多野講演と第一次試案は、想定している事案はちょっと違いますけれども、進路変更側が60%、後続車が40%です。2024年版の赤い本でも、進路変更車60%、後続車40%です。
赤い本2024年版に掲載されている裁判例では、先行自転車60%としたのが1例、先行自転車30%としたものが2例あります。ただ、30%の事例は、歩道の幅員が狭いとか、障害物があって進路変更せざるを得なかった事例だったので、修正されたのではないかとの見解です。
羽賀弁護士
8番目は、路外の駐車場から自転車が歩道に進入して来て、歩道を直進している自転車とぶつかったという場合です。判例タイムズの自動車同士の場合は、直進車20%、路外車80%になっています。
これについて2024年版赤い本では、他の事故類型とは違い、自動車の場合と同じ過失割合が妥当ではないかとして、直進車20%対路外車80%とされています。
理由としては、裁判例が挙げられていて、路外車の過失が80%~90%とした事例が多いということと、四輪車の場合でも相当減速・除行して進入しているケースが多いだろうから、自転車の場合であっても、停止措置や回避措置の取りやすさの点で大きく変わらないのではないかということで、修正の必要まではないのではないかとの見解です。
自転車同士の事故では、自動車同士の事故から過失割合が修正されるケースが多い中で、この類型では修正しないとの見解ですので、注意が必要です。
山本弁護士
荒っぽいまとめ方かもしれませんが、自転車同士の事故の場合、自動車同士の事故より、双方の過失割合が近づくことが多くなると思います。被害者側で依頼を受ける立場からすると、自動車同士の事故よりも難しい面があるとも言えます。
羽賀弁護士
赤い本の記載を見ると結論としてはそういうことになりますね。
あとは修正要素についてです。まず、交差点の事故に関する修正事項は以下のものがあげられています。
一時停止規制のある側で一時停止があった場合は15%程度修正。自転車同士で明らかな速度差(概ね10km以上)ある場合は10%程度修正。あと、右折方法違反がある場合は、具体的な事故態様を踏まえて修正の有無・程度を検討。左方から進入でかつ右側通行の場合、事故発生の危険性が高くなるため、10%程度の修正になります。
羽賀弁護士
次に、歩道上の事故の場合です。
歩道を走行するための要件や、歩道の中央から車道寄りを走行すること、徐行することなどの歩道通行ルールに違反したことが、事故に結びついた場合、5%~10%程度の修正要素とすることが考えられます。
また、時速15km程度を超える速度であった場合、10%程度の修正要素とすることが考えられます。
羽賀弁護士
次に、その他共通して修正要素になるものです。
よくあるパターンとして挙げられているのが、傘差し運転、イヤホン・ヘッドホンの使用、二人乗り、並進により道路の左側に寄って通行する義務に違反した場合、無灯火の場合、10%程度修正。スマートフォンなどの画面を注視しながら運転の場合は、20%です。スマートフォン操作は修正が大きいので、それだけ危険ということですし、自転車運転の際はスマートフォン操作は特にしない方がいいということになります。
羽賀弁護士
児童等・高齢者の場合は10%程度修正する裁判例があります。ただ、赤い本2024年版では、児童等・高齢者が加害者の場合、自らの危険管理能力の欠如を理由に責任を減ぜられることに正当化を見出しがたいこと等からすれば、過失割合を修正すべきではないという見解です。一方、被害者の場合若干有利に修正することも考えられるとされています。
ただ、私の個人的な意見ですが、この考えどおりにやってしまうと、双方に損害が生じた場合、過失割合が2つ出てしまう矛盾が生じる懸念はあります。
それから、ヘルメットの不着用については、最近、努力義務化されたので、頭部外傷などヘルメット不着用が明らかに損害拡大に寄与した場合は、5%程度修正が妥当ではないかということです。
羽賀弁護士
あと、自転車同士の過失割合で気を付けないといけないのは、車道上で左側を走行している自転車と、逆走してきた自転車が正面衝突した場合です。四輪車同士の場合、基本的に左側通行車0対逆走車100ですが、自転車同士の場合、中央線の表示のない道路や幅員の狭い道路では50:50とされています(『自転車事故過失相殺の分析』日弁連交通事故相談センター東京支部過失相殺研究部会編著)。
小川弁護士
私は自転車は左と思ってますが、右側走行の人は多いですね。
澤田弁護士
右側走行すると正面衝突するかもしれないので、危ないですね。
澤田弁護士
過失割合の話から離れますが、自転車事故って、結構ご相談あるんですか?
羽賀弁護士
自動車事故よりは少ないですが、定期的に相談がある感じです。自転車が加害者になる事故が大幅に増えているわけではないようですが、近畿では和歌山県以外では自転車事故に使える賠償責任保険への加入義務がありますので、自転車事故でも保険会社に請求できることが多く、弁護士への相談につながっているようです。なお、和歌山県は賠償責任保険の加入義務はありませんが、努力義務とされています。
澤田弁護士
自転車事故で大怪我ということも多いですか?
羽賀弁護士
自動車事故よりは軽傷であることが多いですが、骨折をしたという方はよくいる印象です。自動車事故は男性の方が多い印象ですが、自転車事故では女性で一定の年代より上の方が怪我をして相談来られることも多いです。自転車との衝突は、自動車との衝突より衝撃が軽いですが、それでも骨折等の怪我をするのは、骨の強さも影響しているからだと思います。
澤田弁護士
自転車が加害者になる事故の手続きで、自動車事故と違うところってありますか?
羽賀弁護士
事故発生→治療→症状固定→後遺障害申請→示談交渉という大きな流れは同じです。
その中で少し違うところは、後遺障害申請の場面です。自転車事故では自賠責保険がないため、後遺障害申請は任意保険会社にする必要があります。ただ、認定基準は自賠責保険のものがそのまま使われていますし、審査は自賠責調査事務所が行っていることも多いので、後遺障害の点は自転車事故でも大きくは変わらない印象です。
後遺障害申請の場面以外で異なる点として、示談交渉がまとまらなかったときに紛争処理センターが使えない点があります。そのため、自転車事故では示談交渉がまとまらなければ裁判をするしかありません。しかし、裁判は時間も費用もかかりますので、自転車事故は、自動車事故以上に示談で解決を図る必要性が高く、実際に示談で解決している事案が多いのが特徴です。

「みお」のまとめ

交通事故は減る傾向にありますが、自転車事故が交通事故全体に占める割合は増えてきており、自転車が加害者になる事故もなかなか減っていないのが実態です。過失割合の類型化が進んでいないのが特徴の一つで、自動車事故より難しい面もありますが、手続きの大きな流れは同じで、加害者に賠償責任保険があれば弁護士に相談するメリットがあります。
みお綜合法律事務所では、自転車が加害者となる交通事故で後遺障害申請や示談交渉を数多くお受けしています。自転車事故で、保険会社とのやり取りや、後遺障害申請、保険会社との示談交渉が必要になったという方は、一度ご相談ください。

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