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弁護士による交通事故研究会

制度研究
Vol.57

交通事故紛争処理センターにおけるあっ旋審査手続

本件の担当
羽賀弁護士

2022年07月21日

事例の概要

交通事故紛争処理センターにおけるあっ旋審査手続きや、弁護士の代理人活動の留意点について。

議題内容

公益財団法人交通事故紛争処理センターの審査員による講演内容を紹介し、センターにおけるあっ旋・審査の仕組や利用について確認しました。

議題内容

・取扱い件数と示談成立率

・申立人について

・他のADR(裁判外紛争解決手続)との違い

・あっ旋と審査手続き

・弁護士の代理人活動の留意点

・裁判所の判断との相違点

・センターの利用規定。

・質疑応答紹介

参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、石田弁護士、西村弁護士、原口弁護士
羽賀弁護士
今回のテーマは「交通事故紛争処理センターにおけるあっ旋審査手続」です。
大阪弁護士会の研修がありましたので、その内容の一部をご紹介したいと思います。
羽賀弁護士
講師の先生は、実際に紛争処理センターで審査員をされている方で、センターの話を色々聞くことができました。
羽賀弁護士
大阪支部の取扱い件数ですが、令和2年が930件ほど。コロナの影響で若干減っていたとのことで、その前は年間約1,100件の取扱いがあったようです。
大阪地裁の交通事故事件数が年に1,500件程度(簡裁からの控訴事件を除く)なので、それよりは若干少ないですが、件数としてはかなり多いのではないかと思います。
羽賀弁護士
その内の和解成立件数ですが、令和2年に終結したものが951件で、その内824件(約86%)で和解が成立していますので、示談の成立率は非常に高いと言えます。
裁判ですと和解で終了しているのが大体75%程度と言われますので、紛争処理センターの方が成立率は高いと言えます。理由として考えられるのは、①紛争処理センターは双方の話を聞きながら手続きを進めるので、妥当な和解のラインを探りやすいこと、②裁判と比較して事実関係の争いが少ない案件が多いと思われること、③審査手続きでの保険会社に対する片面的拘束力があることなどがあると思います。
羽賀弁護士
また、本人申立は可能ですが、実際には、令和2年度の人身損害案件のうち3分の2ほどは弁護士申立てとのことです。本人申立よりも、弁護士申立が多いという特徴があると言えます。
羽賀弁護士
センターの利用に関する特徴は以下のとおりです。
①裁判における印紙代・郵便切手代のような経費はかかりません(申立のための弁護士費用はかかります)。
②加害者が自動車の任意保険に加入していることが必要です。
③あっ旋の申立をした後には、相手側保険会社から訴訟・調停はできません。どちらが先になっているかで決められます。
④逆に、既に訴訟・調停になっている場合には、紛争処理センターはあっ旋申込を受け付けません。
細かい話になりますが、裁判の受付は受付日で決めますが、センターは相談予約日で決めますので、書類を出すよりも先に電話で日を決めた方がいいと言えます。
⑤紛争処理センターに申立をしたけれども、取り扱ってくれないのはどんな場合か。
これは例えば、事実関係にものすごく争いがある、といった場合ですね。例えば事故態様自体に争いがあるような場合に、紛争処理センターに申立をし、それに対して、保険会社側が訴訟移行要請の手続きを取った場合は、センターはあっ旋を中断して訴訟移行審査委員会で検討します。そして訴訟移行が「可」と判断されれば、センターでは取り扱いできないので、訴訟申立をしてください、ということになります。
⑥あっ旋不調で裁定になった場合、申立人が裁定結果に同意すると、保険会社は裁定結果に拘束されます。
 被害者の方が紛争処理センターまでで手続きを終わらせたいと希望し、裁判は考えていないというケースはかなりの程度あると考えられ、その場合に⑥は非常に重要な特徴と言えます。
羽賀弁護士
次に、あっ旋と審査手続きについて。
管轄は事故地または被害者の住所地で決まりますが、被害者側加害者側による合意管轄も可能だということです。
何回位で和解が成立しているかですが、4回目まで行くと86%くらいが解決しているということで、結構早いといえそうです。
羽賀弁護士
審査手続きは、あっ旋不調の場合に、申立人が審査申立てをし、紛争処理センターが判断する手続きです。3名の合議による判断で、裁判と類似する判断がなされることが多いということです。
羽賀弁護士
次に、弁護士の代理人活動の留意点について、お話しがありました。
色々と指摘がありましたが、できるだけ早期に主張書面・証拠資料を出してほしいということ、取り付けに時間のかかる資料の提出は控えてほしいということ、時効を止める効力はないこと等があげられていました。
羽賀弁護士
次は、裁判所の判断との相違点についてです。
基本的な考え方としては、資料を元に紛争処理センターが判断するということなので、裁判所と同じような判断になりやすいと言えます。
違うのは、紛争処理センターは、遅延損害金と弁護士費用の認定はしていない点と、後遺障害等級については、自賠責の認定結果を尊重するので、上げることも下げることもしない点です。
ですから、後遺障害等級を争いたいのであれば、紛争処理センター申立ではなく、異議申立か訴訟が必要になります。
羽賀弁護士
後は、センターの利用規定について。
そもそも紛争処理センターがどんな範囲の手続きをしているのか、ということなんですが、例えば自転車事故は対象外です。任意保険がついている自動車事故だけが対象になります。
羽賀弁護士
最後に、その場に出席された方と講師の先生の質疑応答があったんですが、実際の取り扱いといった部分も含めて色々答えていらっしゃったので、幾つかご紹介します。
「あっ旋と審査の2つの手続きで、獲得金額の差ってありますか?」というストレートな質問がありました。
吉山弁護士
先生の実感としてはいかがですか?
羽賀弁護士
前提として、紛争処理センター申立をしても、あっ旋段階で解決することが多く、審査に移行するのは少数と言えます。
私の経験でも、審査手続きまで進んだ事件が多くはないですし、事案次第なので何とも言えないと思います。ただし、審査の場合、あっ旋と違って、和解成立のために細かな調整をすることはなくなりますし、保険会社に対する片面的拘束力がありますので、あまり被害者に有利な判断は出しづらい所もあるかもしれません。
羽賀弁護士
「高次脳機能障害は、訴訟だと、自賠責保険より後遺障害等級が低く判断されているケースがよくあるため、紛争処理センターで後遺障害等級を争えないとしている決まりは、被害者にとって有利な面もあるのではないか」という質問もありました。
 確かに、高次脳機能障害の等級認定は、訴訟より自賠責保険の方が緩やかと感じることもあり、認定内容によっては、訴訟ではなく紛争処理センターを使うのがいいケースはあると思います。
羽賀弁護士
事故状況に争いがある場合でも申立は可能かとの質問もありました。紛争処理センターとしては事故状況に争いがあっても受け付けはしているが、保険会社から訴訟移行要請が出され、訴訟移行になる可能性はあるとのことです。
羽賀弁護士
私としては、紛争処理センターの方が、裁判より利用しやすいという印象を持っています。裁判より時間がかからないという点、後遺障害について保険会社が争うことができないという点もありますし、遅延損害金とかが付かない点については、紛争処理センターの方が、若干、損害額の認定が緩いのかなという感覚もあります。ご依頼者にとっても、元の金額を下げられた上で、遅延損害金を加算するより、元の額が多い方が納得しやすいというところもあると思います。

「みお」のまとめ

交通事故被害の補償について、どうしても示談交渉がまとまらない場合は、第三者機関に判断してもらうことになります。つまり裁判?と思われるかもしれませんが、その前に、紛争処理センターを利用して解決するという選択肢があります。裁判より手続き負担が軽く、時間もかかりにくいというメリットがあり、被害者側に有利な部分が多い手続です。
交通事故の手続きは、弁護士に依頼してもほとんどの場合示談での解決が可能ですが、当事務所では、示談で解決できなかった事案について、紛争処理センターで解決している案件が数多くあります。交通事故の示談交渉を弁護士に依頼すれば、交渉での金額が増額になりやすいと言えますし、交渉で出てきた金額で示談すべきか、紛争処理センターに手続きを進めるべきかについても、弁護士に検討を任せることができます。そのため、交通事故の手続きは、できるだけ早い段階で弁護士に相談・依頼することをお勧めします。

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