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弁護士による交通事故研究会

事例研究
Vol.55

後遺障害等級併合9級の認定を受け解決した事案

本件の担当
山本弁護士

2022年06月06日

事例の概要

自賠責の認定は非該当でしたが、訴訟提起後、裁判所より併合9級を前提とする和解案が提示され、裁判上和解により解決ました。

議題内容

後遺障害に関して主張・立証し、裁判上和解に至る経緯について。

議題内容

・前回事故の受傷内容

・今回の受傷内容と疑問点、後遺障害診断書について

・自賠責保険の後遺障害認定結果

・訴訟の経緯

・後遺障害に関する当方の主張内容

・争点(事故内容・受傷内容についての主張と反論)

・まとめ

参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、石田弁護士、西村弁護士
山本弁護士
私が担当しました、Aさんの交通事故の解決事案をご紹介します。
事故の概要ですが、自賠責の認定は非該当でしたが、訴訟で裁判所から併合9級を前提とする和解案が提示され、裁判上和解で解決しております。
山本弁護士
Aさんは以前も交通事故に遭われていて、前回も当事務所にご依頼いただいていました。前回事故は神経症状12級13号の認定を受け、最終的に1500万円で和解が成立しました。
山本弁護士
次に、今回の事故の概要ですが、特徴としては、事故状況から考えると、受傷内容や症状が重く感じられるところがありました。
山本弁護士
自賠責での認定は、非該当でした。
ただ、実際に症状が残存していることと、Aさんのご希望もあり、訴訟提起しました。
最終的に、併合9級で和解提示になりましたが、事故態様に比べて怪我や後遺障害が大きいと考えられるため、6割減額して、800万円で和解になりました。
山本弁護士
事案の詳細をお話しします。
事故態様は、交差点で信号待ちをしていたところを追突された、もらい事故ですので、過失割合は100:0です。ただ、車両の損傷は小さく、交通事故証明書も物件事故扱いになっていました。
山本弁護士
次に怪我の内容ですが、まずP病院に搬送され、頚椎捻挫、肩や肘の打撲といった診断があり、その後、R病院では、お配りした資料にありますように、診断名が追加されました。
山本弁護士
後遺障害診断書での診断名は、①右内側半月板損傷、②左上腕骨内顆骨折、③左尺骨神経損傷、④左正中神経損傷、⑤右大腿骨外顆軟骨損傷で、基本的には左肘に関するものと、右膝に関するものとに分かれていました。
関節可動域は、左肘は右肘の1/2以下、右膝は左膝の3/4以下でした。
左肘には疼痛と痺れ、右膝は疼痛があり、それぞれ動作時に異音があると記載されていました。
山本弁護士
次に、自賠責の認定経過です。自賠責では、骨折などは認め難い、客観的な医学的所見に乏しい、ということで非該当の回答でした。異議申立しても結論は同じでした。なお、異議申立の際に、事故状況について本人からの聞き取り内容をまとめた書面と、主治医の先生による、症状経過等についての意見書を提出しています。この書面は、後の訴訟で裁判所にも提出しています。
山本弁護士
訴訟の経緯ですが、相手側の代理人は、カルテの記載に基づいて、Aさんの症状は、既往症によるものであると主張してきました。
これに対し、こちらからはカルテの記載と矛盾しないように主張立証を組み立て、裁判を進めていきました。
主張と立証が出揃った段階で、裁判所より和解提案があり、併合9級、ただし事故や症状の内容にかんがみ、本来の金額から6割を減額して、和解金800万円で和解が成立しました。
山本弁護士
後遺障害について、裁判上、具体的にどんな主張立証があったかですが、追突事故からは発生しづらいと考えられる怪我でもあったため、どのような機序で怪我をしたか主張立証しました。左肘については、事故直前、原告は車内で身体を左に傾けて運転席にもたれかかった姿勢をとっており、左肘は、座席から左側に出ている状態で止まっていたと主張しました。
山本弁護士
Aさんは前回事故で肩に障害があるので、シートベルト免除であり、シートベルトをしていませんでした。このことはカルテに記載がありました。
そのため、事故の衝突で、Aさんの身体は前下方向に動いてしまって、左肘を車内の小物入れに打ち付けました。事故当日に病院で左肘の圧痛を訴えて、左肘打撲と診断されているので、左肘を打っていることはまちがいないと主張しました。
なお、道路交通法上ではシートベルトを免除できる規定がありますが、本当に免除かどうかについて、相手方は争ってきました。
山本弁護士
加えて、左肘を車内の小物入れに打ち付けたとしても、左肘骨折ほどの怪我をするかが問題となりました。この点は、Aさんの左肘には、事故前から“骨嚢胞(こつのうほう)”、これは空気みたいな泡がポツポツと骨の中にできる状態なんですが、それによって周辺の骨が弱くなっていたという医師の意見書がとれましたので、それを主張しています。
この主張をすると、特別な体質的問題があったとして賠償金減額の問題になるのですが、骨嚢胞がなければ骨折が発生することはないはずなので、主張せざるを得ませんでした。
骨嚢胞は、資料でお配りしているレントゲン写真の丸を付けている所です。このせいで外側の白い部分も薄くなって折れやすい状態になっていました。
山本弁護士
骨折が発見された経緯ですが、当初CTで遊離体の可能性有りとの所見があって、左上腕骨内顆亀裂骨折が疑われたため、MRI撮影があり、左上腕骨内顆と尺骨溝との境界付近に骨折の可能性があるとされたというものです。
骨折は何回か撮影されていてやっと発見されたもので、画像所見はやや分かりにくいものでしたので、よく発見できたなあという印象もあります。
山本弁護士
左肘を骨折したとしても、必ずしも肘の可動域制限が残るとは限りませんので、左肘可動域制限や痛みの原因も問題となりました。この点は、主治医の意見書を取り付けました。内容は、「左上腕骨内顆不全骨折により、左肘軟骨の損傷が進行し、軟骨が滑らかさを失って、動作時の異音や疼痛の増悪、肘関節の可動域制限が発生している。疼痛が強く、痛みのために関節を動かせない状態が続き拘縮が進行して、可動域制限やさらなる疼痛の原因になっている」というものです。
山本弁護士
関節拘縮による可動域制限は、最近の自賠責の認定では否定されることが多い印象を持っています。ただ、この事故ではそれしか原因が考えられませんので、訴訟で主張しました。
山本弁護士
次は、右膝なんですが、左肘と同じく、どのような状況で怪我をしたか問題になりました。この点は、事故のときに前方下方向に身体が動いてしまって、片足では身体を支えきれず、チョークレバーのスイッチの突起部に右膝を強く打ち付けたと主張しました。カルテ上、事故当日病院で右膝の圧痛を訴えていたと記載されています。
加えて、なぜその状況で軟骨を損傷したかが問題となりました。この点ですが、MRI画像を見る限りは、事故前から軟骨に一定の変性がありました。この点も、特別な体質的問題があったとして賠償金減額の問題になりますが、これが無いと、なぜこの事故で軟骨損傷するのか説明がつきませんので、主張せざるを得ませんでした。元々変性があって軟骨のクッション性が弱くなっていたところに、事故による外力が加わって軟骨を損傷したという説明になります。
主治医の先生の意見としても、追突時に車内のダッシュボードで右膝を打ったために発生したと言っても不自然ではないとのことで、意見書に記載をしてもらっています。
吉山弁護士
事故前から軟骨に一定の変形があったということですが、これは前回の事故の際に撮影していたから分かったのですか?
山本弁護士
前回の交通事故のMRIで発見されていました。
軟骨を損傷したことの立証ですが、Aさんは、右膝関節鏡手術を受けておられ、手術でも、関節軟骨損傷の所見が出てます。証拠としてはこの点が一番固いと言えます。主治医の先生が実際に関節内を見て確認していますので、間違いないと言いやすいところです。
なので軟骨損傷が存在することは確定的で、後は事故が原因と言えるかどうか、後遺障害の原因と言えるかどうか、という問題になってきます。
山本弁護士
また、軟骨損傷からなぜ可動域制限が残ったかについて問題となりました。この点は、医師意見書に「軟骨損傷により関節の柔らかさが失われてスムーズに動かなくなり、可動域制限や疼痛が生じているほか、動作時の異音や疼痛増額が発生している」と記載してもらいました。
可動時だけ痛みが出る場合だと後遺障害として認定されにくいため、「いつも痛いんだけど可動時に悪化する」というように、書き方に特に注意したと記憶しています。
山本弁護士
あと、「関節鏡手術の時には毛羽立った状態の軟骨や破片を取り除き洗浄したが、軟骨損傷は軽い損傷以外は回復しないので本件の症状は残存する」ということを、医師意見書に書いてもらっています。軟骨損傷があるというだけだったら手術で治る場合もありますので、なぜ治らないのかということを説明するためです。
山本弁護士
Aさんの車両があまり壊れていなかった点、すなわち事故の衝撃が小さかったのではないかということに対する反論ですが、Aさんの車両は追突された後3メートル前方に進んで止まっていました。Aさんはブレーキを踏んだままで追突されていますので、3メートルとなると結構進んでいて、衝撃も大きかったはずと主張しました。また、Aさんの車両は、頑丈で重量も大きいにもかかわらず、ブレーキを踏んだ状態で3メートル進んでいますので、この点でも衝撃が大きかったことが分かると主張しました。
その他、普通の車両であれば、グチャッと潰れて衝撃を吸収し、体に衝撃が走りにくいようになっていますが、今回の車両は変形しづらい作りで、その分体への衝撃が大きかったと主張しました。
山本弁護士
あとは、Aさんは後ろから突然追突されていて、身構えることができなかったこととか、病院のカルテには、時速20~30㎞程度の車両に追突されたという記載があることも主張しています。Aさんは、衝突されるまで、被告車両の接近に気付いていませんでしたので、時速がわからないはずなんです。そうすると、カルテに書いてあることは、おそらく救急搬送の担当者が警察官から聴いたんだろうなということで、提出書面にはそのことも書いています。なので、速度に関するカルテ記載は信用できるという主張をしています。
山本弁護士
さらに、原告の左肘は事故前から骨嚢包があって、強度が低下していますので、比較的小さい衝撃でも不全骨折が発生するということを言っております。
吉山弁護士
その主張は、賠償額の減額の理由にもなりますので、あまり主張したくはないですよね。
山本弁護士
そうなんです。でも、本件ではこれを主張するしかないので。
これに対して、当然、既往症によるものだという反論が返ってきています。しかしこれに対しては、既往症であることは医師意見書でも認めていますので、別に今更言われても何も変わりませんよっていう反論をしています。
山本弁護士
ちなみに事故前のカルテの記載を見ていきますと、左肘や右膝の神経症状や可動域制限はないので、事故によって新しい後遺障害が出てきたことが分かります。
左肘の骨嚢包や関節変性については、カルテに前の事故からの治療歴が記載されていないので、単に骨囊胞が存在する、骨軟骨が変性しているというに過ぎず、痛みや可動域制限などの支障はなかった、という主張もしています。
山本弁護士
諸々主張して、最終的に裁判所から和解案について説明を受けました。中身はお配りした資料通りで、ほぼ私が主張した中身をなぞってくれていますので、頑張って良かったなぁと思いました。ただ、Aさんの体質的な部分が後遺障害の発生に関わっているとして、6割の減額を受けています。
山本弁護士
後遺障害非該当から9級の認定ですので、保険会社が和解案を受け入れないようにも思いましたが、問題なく和解が成立しました。おそらくですが、和解額が800万円で、任意保険会社が9級相当の616万円を自賠責保険に求償できれば、任意保険会社の負担が小さくなる点が影響していると思います。任意保険会社の経済的な負担だけを考えると、非該当の判断の場合と大きくは変わらなかったのかもしれません。
山本弁護士
今回は、裁判官との相性が良かったようで、私がこういう理屈でこうだと考えるところを、裁判官も同じ意見を持ってくれるという、大変理論的な裁判官でしたので助かりました。ただ、裁判官によっては、こちらの主張に乗ってくれず、後遺障害非該当を前提に低い金額で和解案が出ていた可能性もあるように思います。また、こちらの主張を裏付ける資料がうまく出てきたのも助かりました。事案によっては、こちらの主張を裏付ける資料がうまく出てこず、苦戦することもありますので。

「みお」のまとめ

後遺障害について争いが生じ、訴訟の結果、こちらの主張が一定程度認められ、無事解決した事案です。後遺障害診断書、カルテ、医師意見書などの資料から主張を組み立て、裁判官を説得できた結果と言えます。ただ、裁判官によっては異なる判断をしていた可能性もあり、結果が読めないところが裁判の怖い所と言えます。
また、今回ご紹介した被害者の方のように、本人に特に落ち度がないのに、交通事故に複数回遭う方が結構いらっしゃいます。当事務所にも、一度ご依頼いただいた後、再度交通事故に遭って怪我をしたとして相談に来られる方がいらっしゃいますが、過去の事故での怪我の内容や、後遺障害が認められたか等によって、様々な問題が生じることがありますので、弁護士に相談する必要性が高いと言えます。

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