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弁護士による交通事故研究会

裁判例研究
Vol.89

整骨院施術費用についての裁判例の傾向

本件の担当
羽賀弁護士

2026年03月23日

事例の概要

整骨院での施術費用に関する裁判例の傾向について、文献と裁判例から検討しました。

議題内容

議題内容

・整骨院費用認定の裁判における基準。

・大阪地方裁判所における整骨院費用の認定について。

・示談での傾向を踏まえた手続きの留意点。

参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、石田弁護士、西村弁護士
羽賀弁護士
今回は、整骨院費用についての判例の傾向についてお話をします。結論から言うと、示談と裁判では傾向が異なります。
山本弁護士
私も交通事故の手続きを進める中で、裁判例の判断傾向に沿って保険会社が主張をしているかというと、整骨院費用については違うように感じることがあります。
羽賀弁護士
施術費を認めるかどうかの一般的な基準について紹介します。ただし、基準本に記載されているのは、裁判においての基準なので、示談では必ずしも当てはまるわけではないことに注意が必要です。
まず、緑の本には、整骨院・接骨院における施術費は「医師の指示の有無などを参考にしつつ、症状により有効かつ相当な場合は相当額を認めることがある」とあり、赤い本も同じような内容です。赤い本2003年の講演録も同様で、「医師の同意に関しては、施術の必要性を判断する一事情になるに過ぎない」とされています。
羽賀弁護士
次に、月刊大阪弁護士会の令和4年5月号では、整骨院の施術の必要性・相当性を判断するに当たって、以下の5点があげられています。

①医師の指示の有無。ただし、医師の指示書が提出されていれば直ちに施術費を認めるというわけではなく、患者側から整骨院施術を希望して医師がそれを追認したにすぎないかどうかなど、整骨院施術至った経過や治療経過等も見て判断する。
②受傷の結果がどうであるか。簡単に言うと、例えば捻挫なら認定する可能性はあるが、骨折なら否定されるだろうということです。
加藤弁護士
骨折の整骨院施術は、柔道整復師法で禁忌とされていますからね。
羽賀弁護士
③受傷の程度。事故態様等から緩和を必要とする程度の症状が出現するような受傷であったかということになりますが、例えば、物損の度合いが軽ければ、怪我はしていないか、していたとしても大きくはないだろうということで、否定されることがあります。
羽賀弁護士
④整形外科での治療内容や頻度。整形外科で濃密な治療を受けながら、整骨院でも重ねて治療を受けていると、必要性に疑問があり、施術費を否定する方向になります。
⑤整骨院施術の効果の有無。自覚症状に改善がある方が認められやすいと言えます。
羽賀弁護士
整骨院施術費については、施術の必要性があっても、施術の頻度が高すぎる場合、全額は認められないことがある点にも注意が必要です。実際、整骨院について毎日のように通っているケースもありますが、それだけ整骨院に通っていると、仮に施術の必要性があったとしても、一部しか認定されない可能性があります。整骨院に毎日のように通っていると施術費が多額になり、争点化されやすい点にも注意が必要です。
山本弁護士
確かに整骨院に毎日のように通っているケースを時々見かけます。施術費用も高額になっていて、争点化されると厳しいだろうと感じることもあります。
羽賀弁護士
次に、実際の裁判例ではどのような傾向になっているのか紹介します。
大阪地裁の傾向では、全額肯定、一部肯定、全額否定と分けると、ほぼ3分の1ずつ程度ではないかという傾向があります。事案の内容によって判断が変わる可能性はありますが、全額肯定が3分の1ほどしかないというのは、相当厳しいです。
羽賀弁護士
裁判例を俯瞰した場合の傾向の詳細は、以下の通りです。
①医師の同意があれば整骨院費用が認められやすい。ただし、医師の同意が明確に出てくる事案はあまりないと考えられます。
②医師の同意がなくても、施術の有効性等が認められ、必要性・相当性が認められれば、整骨院費用は認容される場合がある。施術の有効性が必要なのは、当然と言えば当然と言えます。
③整形外科の通院頻度が高い方が、整骨院費用が認容されやすい。整形外科にほとんど行っておらず、整骨院ばかりになっている場合は、認容されにくくなるということです。
④後遺障害が認められていても、整骨院費用が認められていないケースがある。
羽賀弁護士
裁判例の傾向から手続きの進め方についての留意点を考えると、①整骨院に通院する際はできるだけ医師の同意を取り付ける、②施術の有効性があるかを確認する、③整形外科にも通院し、整骨院通院頻度を高くし過ぎないということになります。
しかし、①について医師の同意を取り付けるのは現実的には困難です。②施術の有効性はよく分からないところもありますし、③通院頻度も弁護士側でコントロールできる内容ではないかもしれません。
羽賀弁護士
現実的には示談で解決することがほとんどですので、裁判例よりも示談交渉での保険会社の傾向を知り、それに応じて留意点を検討することがより重要です。
羽賀弁護士
その示談での傾向ですが、保険会社が治療費を出すことになりますので、整骨院に通院するのであれば、保険会社の了解を得た範囲で通院することが重要で、そのようにしておけば最終の交渉時に整骨院費用について争われることはあまりありません。
このように、裁判と示談では整骨院費用についての考え方が異なるため、整骨院に通院している場合に裁判をするのはリスクが高く、示談での解決を目指しつつ、どうしても示談解決が難しい場合は紛争処理センター利用を検討することになります。
なお、保険会社も整骨院治療費について了解しないことがありますし、整形外科より短期間しか出せないと言われることがあります。そのため、そもそも論として、整骨院に通院するのではなく、整形外科のリハビリを利用する方がいいと言えます。
羽賀弁護士
整骨院に通院している場合の裁判のリスクですが、これまでの議論の通り、整骨院費用自体が認められない可能性が相当程度あります。示談交渉時には保険会社が整骨院の費用を認めていたとしても、裁判になると争われる可能性が高いです。
仮に整骨院費用が否定されるか、一部認容にとどまった場合、整骨院への交通費も否定されると考えられます。また、通院回数が少ないことになり、慰謝料の認定額も低くなる可能性があります。
西村弁護士
最近裁判をしていた件で、整骨院に1年半通院して、200万円位施術費がかかっていた件があるんですが、通院中は保険会社は払ってくれていましたが、裁判では争われました。最終的な結論でも整骨院費用は認めづらいのではないかという話もあり、判決に至らず裁判上和解で解決しました。
他の争点があり裁判をせざるを得なかったのですが、整骨院に通院している場合に裁判をするのはリスクが高いと感じました。
山本弁護士
個人的な印象にはなりますが、整骨院費用は、医師の指示書があれば認定されやすいとして、指示書がなければ非常に厳しくなるように思います。医師の指示書は実際に書いてもらうのは困難ですので、整骨院費用を訴訟で認めてもらうのは難しいことになってしまいます。
そのため、リハビリができる整形外科があればそちらに通院した方がいいですし、整骨院に通院しているのであれば、示談解決を優先すべきと言えます。

「みお」のまとめ

整骨院は、交通事故以外で自分の費用負担で通院する分には問題はありませんが、保険会社が関わってくる交通事故では、整骨院に通院するのであれば保険会社が了承した範囲内で通院する必要がありますし、そもそも論としては整骨院ではなく整形外科に通院する方が望ましいと言えます。
交通事故の手続きでは、どのような問題点があるかを把握した上で、スムーズに手続きを進めることが重要です。整骨院通院には、施術費が保険会社から支払われるかの問題があり、スムーズに進めるには、整形外科への通院にするか、保険会社の了解の範囲で通院し、示談で解決するなどの対応が必要です。
みお綜合法律事務所にご依頼いただければ、以上のような点も含め、スムーズに解決できるよう手続きを進めていきます。

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