事例研究
Vol.18
逸失利益と過失割合等を交渉し、示談解決した事案
事例の概要
- 被害者は、大阪市北区の道路を自転車で進路変更した際に四輪車と衝突し、腰椎圧迫骨折。脊柱変形の後で11級7号の認定。
- 加害者が過失割合50%を主張したため、保険会社も50%を主張。
- 保険会社から、過失割合50%を通す代わりに、当方提示の逸失利益等の損害額を認定する提案があり、示談成立。
議題内容
議題内容
- 過失割合と逸失利益算定について。
- 賠償額総額の妥当性についての判断。
参加メンバー
澤田弁護士、羽賀弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、石田弁護士、山本弁護士、加藤弁護士

羽賀弁護士
交通事故の過失割合について、保険会社の考え方の一面が分かる事例かなと思いましたので、ご紹介したいと思います。まず事故の状況です。
ご依頼者は、自転車で道路の左端を走行していましたが、右寄りに進路変更したところ、後方から来た四輪車と衝突してしまいました。
こういった場合、過失割合は基本20%ですが、車線変更の合図を出していなかったということで10%プラスして、過失割合は大体30%くらいになる事案です。
けがの状況は、第2腰椎圧迫骨折、それで脊柱変形で11級7号という後遺障害等級の認定が出ました。

羽賀弁護士
保険会社からは、被害者の方が携帯電話の操作をしていたんじゃないかという指摘がありました。その指摘が認められると、過失割合はさらに5%プラスで35%になります。ただし、刑事記録では何も出ていなかったので、最終結論として35%にはならないと思います。

羽賀弁護士
この事案で保険会社から強く主張されたのは、過失割合です。保険会社側が「50%を主張します」という風に言われたんですが、その理由というのが、単に、「加害者が50%から譲らないとおっしゃっているので」ということでした。

澤田弁護士
保険会社としての認識は何パーセントですか?

羽賀弁護士
本音としては35%ですと言われていました。しかし加害者本人が50%を主張するとのことでしたので、とりあえずそれを前提に可能な限りの提案をしてくださいということで、話合いをしました。

羽賀弁護士
こちら側の示談案としては、2200万円くらいを提示しました。「みお」と保険会社との、損害賠償金の算定の比較表を、参考資料としてお配りしていますのでご覧ください。

羽賀弁護士
過失割合は、こちらとしては一応、当初0%を主張していますけれど、まあ大体30%くらいの予想で考えていました。それに対して保険会社は、先程お話ししたように、50%を主張してきました。

石田弁護士
そのあたり、どうやって調整されたんですか?

羽賀弁護士
後遺障害逸失利益ですね。等級が11級7号なので、予想としては、喪失率を12級相当の14%に引き下げて、期間は67才までの21年を認めるというぐらいであれば、まあいいんじゃないかなという感じでした。ところが保険会社のほうからは、喪失率も喪失期間も、全部認めますという提案がされました。

山本弁護士
つまり保険会社から、過失割合50%を主張する代わりに逸失利益は全部認めますという、提案があったわけですね。

羽賀弁護士
その通りでして、その計算でいくと保険会社提示の損害賠償金の額は920万円くらいになります。元々こちらの予想額としては、970万円くらいいけばいいんじゃないかと予想していましたので、920万円であればいいんじゃないかということで、最終的に和解をしました。

羽賀弁護士
保険会社としては、加害者の方が、過失割合はどうしても50%と主張しているので、そこは動かせないというのが前提ですね。ただ、おそらく、加害者の方は賠償金額までは指定されてなかったんだろうと思いますので、予算の範囲でかつ理屈の立つ範囲で、過失相殺前の損害額を高めに算定してきたんだと思います。なので、若干こちらの予想していた額よりは低いんですけれども、あまり金額差がないので紛争処理センターなり裁判に持ち込んだりしても、あんまり意味はないと判断しました。
また、依頼者の方が多忙で、示談より時間のかかる紛争処理センターや裁判は希望されていませんでした。

澤田弁護士
依頼者の方は、50%も過失相殺されることについてはどのように言われていましたが?

羽賀弁護士
総額が妥当なら過失相殺の主張は大丈夫です、とのことでした。

澤田弁護士
中身はいいですっていう感じ?

羽賀弁護士
中身はいいです、きっちり賠償してもらえれば、ということで示談が成立しました。

吉山弁護士
この方は、事故後お仕事はどうされていたのですか?

羽賀弁護士
入院や通院のためにしばらく休業されていましたが、その後復職されました。給与は事故前と事故後でほとんど変化ありません。

澤田弁護士
それであれば、逸失利益あんまりないんじゃないですか?

羽賀弁護士
そうですね、実際の所、働いておられます。そのような点でも、本来であれば労働能力喪失率が14%程度になってもおかしくない事案と思います。

小川弁護士
「本人が譲らないから50%の過失割合で」って、保険会社がそんなこと言うんですね。

羽賀弁護士
保険会社は加害者の意向があると独自の過失割合の主張はやりにくいみたいです。加害者の人が過失割合の主張が強硬なので、会社としても、そう主張をせざるを得ないですといった具合です。

澤田弁護士
加害者は別に自分でお金出すわけじゃないから、気分の問題やね過失割合って。被害者の方は賠償金額が問題であって。

山本弁護士
名を取るか実を取るか、ですね。

石田弁護士
物損の処理はどうなってたんですか。

羽賀弁護士
物損はご依頼時点では処理してない状態だったんです。そのため、受任時点では、保険会社が50%の過失割合を主張してくることは予想できませんでした。最終的に、物損は自損自弁(自分で費用を払う)で処理しました。

澤田弁護士
携帯電話を操作していたと、刑事記録にも載ってないこと言うんですね、加害者側は。

小川弁護士
そうですね。

羽賀弁護士
加害者の人が、そうなんじゃないかという風に言ってるとのことでした。

澤田弁護士
じゃあ警察の調書にそれ言えばいいのに。調書にも書かれてないんですか?

羽賀弁護士
この事案は不起訴処分なので、供述調書が出てこなかったんですね。供述調書は出てこずに、実況見分調書の図面だけが出てきたんです。

澤田弁護士
ああそうなんですか。

吉山弁護士
実況見分調書は状況までは書いてないですね。

羽賀弁護士
どこでぶつかったってくらいは書いてありますが、携帯電話見ながらとかは、書いていませんでした。

澤田弁護士
警察では色々言ってたかもしれないですね、加害者は。ながらスマホの自転車の人身事故が増えて問題になってきてますし、これからはちょっとでもそういった供述があれば、過失割合が厳しくなるかもしれませんね。そうなったら、この案件も別の展開になったかもしれません。
「みお」のまとめ

加害者側の過失割合の主張を通す一方、保険会社が被害者側の逸失利益等の主張を認めた事例です。無理な主張は、紛争処理センターや裁判に持ち込めば、認められることはありません。そのため、保険会社としては、過失割合以外の部分で譲歩して、早期解決を図ったのでしょう。そういった駆け引きで損をしないためには、賠償金算定の知識や、豊富な経験が必要です。保険会社の提示する示談案に納得できない点や分からない部分があれば、ハンコを押す前に、一度「みお」にご相談ください。
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