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弁護士による交通事故研究会

制度研究
Vol.65

紛争処理センターの手続き・弁護士費用特約タイムチャージ

本件の担当
羽賀弁護士

2023年03月04日

事例の概要

紛争処理センターの手続きと、弁護士費用特約のタイムチャージ方式を、事務所の解決事案を基に検討しました。

議題内容

議題内容

・解決事案の概要と紛争処理センター利用の経緯

・過失割合の扱いについて

・紛争処理センターの手続き紹介

・弁護士費用特約のタイムチャージ方式の実際

参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、石田弁護士、西村弁護士、原口弁護士
羽賀弁護士
今回の発表の前提になる事案では、物損に関わる紛争処理センターの手続きの特徴が問題になり、また、タイムチャージの弁護士費用特約を利用しましたので、その辺りの話をしていきます。
羽賀弁護士
事故の概要ですが、四輪車 対 四輪車で、依頼者の方が本線を直進していたところ、相手方が路外の駐車場から本線に進入してきて衝突したというものです。
物損に関わる部分を取り出すと、当然双方に物損があり、基本過失割合8:2になりますので、双方ともに過失割合が出る可能性が高いと予想される事案です。
羽賀弁護士
依頼者の方は、相手方の保険会社と交渉していたんですが、結局決裂しまして、示談交渉後の手続きを依頼したいということで、相談に来られました。
ご相談前には、過失割合について保険会社から9:0との提示がありました。
澤田弁護士
え?9:0ってどういうことですか。
羽賀弁護士
こちら側は損害額の9割を受け取って、相手方にはこちら側から支払わないというものです。9:1ではなく、9:0にするメリットは、こちらは加害者側の物損を負担しなくて済む、対物賠償責任保険を使わなくて済むので保険料が上がらないという点があります。人損ではこのような解決はないですが、物損部分でこのような解決をすることはよくあります。
倉田弁護士
受け取れる賠償金は9割になるけれども、加害者の損害の1割分は払わなくてよいということですね?
羽賀弁護士
そうです。
澤田弁護士
へえー、そんなことができるんですか。
羽賀弁護士
そうですね、物損では、過失割合が9:1の場合、9:0という処理をすることが結構あります。
羽賀弁護士
なお、依頼前に合意できなかった理由は、加害者本人の意向が関係していたようです。
澤田弁護士
保険会社が支払うのに、加害者がイヤだと?
羽賀弁護士
そうですね。保険会社としては、加害者側の確認を取っているケースがあります。特に過失割合については、結構確認を取っている印象があります。
羽賀弁護士
本件は、ドライブレコーダーの映像があるので、事故状況については争いなしということで、主要な争点は、この事故状況で過失割合をどうするかということになります。
羽賀弁護士
また、本件は、示談交渉が決裂して紛争処理センター申立という前提で受任しました。ある程度時間がかかると見込まれたため、今回は弁護士費用特約の着手報酬方式ではなくて、タイムチャージ方式で受任しました。
羽賀弁護士
結論としては、紛争処理センターの2回目のあっ旋で解決しました。損害論はこちらの主張を認めて、過失割合9:0ということで、手続き前に戻った内容で解決をしています。
羽賀弁護士
紛争処理センターの手続きについて、現在の状況や、物損部分についてどのような特徴があるかというところを紹介しておきます。
今回の事案は、2回の期日はいずれも2022年の年末頃だったんですが、コロナの影響で、どちらも面談方式ではなく電話でのあっ旋手続きになりました。
ただし、今後は変わってくる可能性があります。
電話あっ旋の場合、最後の書類のやりとりが少しややこしくて、①紛争処理センターが免責証書を作ってこちら側に送り、②こちらが押印して紛争処理センターに返送し、③紛争処理センターのあっ旋員が押印して、④全当事者に送る、という流れになるので、斡旋成立から入金まで1ヶ月程度かかりました。
羽賀弁護士
それから、今回、相手方の過失割合は8割とか9割というレベルなので、車の修理は車両保険を使っています。そうなると、相手方の保険会社から、こちらのご依頼者に対しての求償権という形になるんですけれども、この場合の求償に関する紛争は、紛争処理センターは取り扱いません。紛争処理センターのホームページの、『ご利用について』の中に、「求償に係る紛争に関しては、センターの利用の対象ではありません」との記載があり、これについては当事者間で解決する必要があります。
羽賀弁護士
さらに、『ご利用について』の中に、物損部分は人損と違って、紛争処理センターが裁定をするには要件があり、「車輌相互の衝突等によって、双方に物損が発生し、かつ双方に過失がある場合、双方が予め裁定に同意しないと、裁定ができません」とされています。人損では、加害者側は裁定に拘束されますが、双方物損・双方過失の場合は加害者側を拘束するには加害者側の同意が必要ですので、確実に加害者側を拘束できるわけではありません。
ただし、今回の場合は、加害者が車両保険を使っていて、紛争処理センターは求償権の部分は取り扱わないため、人損の部分と同じように、こちらがよければ裁定が可能になり、加害者側を拘束できる状況になっていました。
羽賀弁護士
次に、この事案は、弁護士費用特約のタイムチャージ、つまり時間制報酬を利用しました。その辺りの感想のようなものを少し述べたいと思います。
タイムチャージについては、『時間制報酬に関する留意事項』というマニュアルがあります。LAC基準は、日弁連と協定している保険会社もありますし、協定していない保険会社もありますが、どちらにしても基準は大きくは変わらないことが多いと言えます。
マニュアルの記載内容ですが、以下のようなものがあります。
・執務のどこまでがタイムチャージの対象になるか、報告書作成分は含まれない。
・タイムチャージ方式と着手金・報酬金方式は併用できない
・同一事故間での併用はできない、具体的には、同じ事故で2人の被害者から依頼されて、こちらの方は時間制でこちらの方は着手金・報酬金方式でと、2方式併用することはできないなど
羽賀弁護士
費用の目安は1時間当たり2万円で、上限が一応60万円です。しかし、超える場合でも理由を説明すれば支払われる場合もあります。
20時間を超えそうなときは、その状況を保険会社に説明する必要があります。
羽賀弁護士
大体こんなところです。正直、タイムチャージを人損で使うことは少ないと思いますが、比較的軽微な事案で紛争処理センター申立が予想される事案なら、利用が考えられます。
今回の事案の執務内容報告書は、資料でお配りしています。
澤田弁護士
すごいですね、この報告書!
羽賀弁護士
手間はかかります。細かく挙げていって、きっちり請求しようと思うと、それなりに時間がかかる。でも、これでも漏れはあると思います。正直、全部は書けていませんから、実際の執務時間より多分短いと思います。
澤田弁護士
報告書は、その都度入れていけばいいんですよね?
羽賀弁護士
ええ、その都度入れていきました。今回はこの案件だけだったので、別に問題はなかったんですが、同時に複数の案件でタイムチャージをやろうとすると、混乱してしまう可能性があると思います。今回は、紛争処理センターの期日自体は2回ですが、事故状況の精査、申立書や主張書面の作成等を行っているうちに30時間弱になっています。そのため、他の事案でも紛セン等の申立をすると、すぐ30時間近くいってしまうだろうなというのが感想です。
澤田弁護士
保険会社からは支払いについて何も言われませんでしたか?
羽賀弁護士
そうですね、今回の担当の人は、30時間以内だったら基本的には何も言いませんと、初めから言われてました。
澤田弁護士
担当の人って弁護士ですか?
羽賀弁護士
いや、保険会社の担当の人です。
澤田弁護士
報告書は保険会社に出すんですか?
羽賀弁護士
保険会社に出します。
羽賀弁護士
実は、加害者側もこちら側も同じ保険会社だったというのがありまして、結局、保険会社としては長々争うメリットはなかった、という話なんです。
仮に過失割合が8:2になって支払う賠償金が下がっても、それ以上に弁護士費用特約の支払いが発生する状況でした。
澤田弁護士
さっき、紛争処理センターで保険会社からの求償部分は扱えませんっておっしゃってましたよね。じゃあそれはどう処理するんですか?
羽賀弁護士
紛争処理センターの手続きとは別に、求償しませんという書類を保険会社に送付して押印してもらい、返送してもらいました。
澤田弁護士
斡旋というのは、裁判でいう和解みたいな感じですか?
羽賀弁護士
そうですね、斡旋は和解のようなものです。裁定が判決のようなものです。
澤田弁護士
斡旋手続きには、保険会社が関与するんですか?
羽賀弁護士
そうですね、斡旋期日には加害者は出てこず、保険会社の担当者がでてきます。
羽賀弁護士
また、紛センの免責証書には、加害者の名前と保険会社の名前が出てきます。
倉田弁護士
相手方が車両保険使って自分の車を修理しましたっていうのは、こちらで把握できないこともありそうですね。
羽賀弁護士
そうですね、保険会社に教えてもらうしかないです。
倉田弁護士
私の扱った事案では保険会社から求償請求が来たことはないのですが、保険会社はあまり求償してこないのでしょうか?
羽賀弁護士
被害者の過失が小さい事案では、被害者本人への求償に至る事案はあまり多くないと思います。事情としては以下のようなことが考えられると思います。
・追突など10:0の事案では、求償があり得ない。
・被害者の過失が1割程度であれば、保険会社が回収の手間と求償額のバランスを考慮し、9:0等として、被害者に求償しないケースがかなりある。
・加害者の物損が小さい場合は、保険料の値上がりを考慮して車両保険を使わないケースがある。
・加害者の物損がそれなりにある場合でも、被害者側に対物賠償責任保険があれば、被害者本人ではなく保険会社に求償が行く。
澤田弁護士
そうかそうか、こっちが保険を使えば、本人には求償が来ませんね。
倉田弁護士
なるほど、そうですね。
田村弁護士
確か、紛争処理センターは、過失割合とかで揉めている案件はあんまり向いてないという話だったと記憶してるんですけど、こういうドラレコで状況がはっきりしている場合は…
羽賀弁護士
そうですね。事実関係が争われてる事案というのは、受付はしてもらえますが、保険会社から訴訟移行要請が出る可能性があり、紛争処理センターでの解決には向かないことがあると思います。一方、事実関係は争いがないけれどもどう評価するか、というレベルだったらむしろ紛争処理センターでの解決に向いていると思います。
澤田弁護士
電話であっ旋って、どんな感じなんですか?電話会議じゃないんですよね?
羽賀弁護士
会議じゃないですね。紛センの弁護士さんがこちらに電話をかけて、終わったら向こうに電話かけてという、それを繰り返すやり方です。
小川弁護士
電話一回切りますよ、みたいな感じで?
羽賀弁護士
そうですね、しばらく待っていて、また電話がかかってきて…
澤田弁護士
ずっと電話を待ってないとあかんわけですね。
羽賀弁護士
そうですね。
澤田弁護士
1回何分くらいですか?
羽賀弁護士
1回目は丸々1時間かかりました。
澤田弁護士
おー!紛センに行くか事務所でやるか、どっちが良いかですね。

「みお」のまとめ

示談で慰謝料・賠償金の額が決まらないとき、裁判ではなく、紛争処理センターで解決するという方法があります。紛争処理センターは、交通事故に特化した、裁判外紛争解決機関として設けられ、被害者側に有利な部分も多く、かなりの程度で解決が見込まれます。当事務所では、ほとんどの場合、示談解決をしていますが、示談解決できなかった事案でも、裁判ではなく、紛争処理センターで解決した例が多数あります。
弁護士費用特約に加入していると、早いタイミングで弁護士に依頼したり、比較的怪我がが小さい場合でも依頼しやすいというメリットがあります。弁護士に依頼するかお悩みの方は、ご加入の保険に弁護士費用特約がついているかご確認いただき、お気軽にご相談ください。

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