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弁護士による交通事故研究会

裁判例研究
Vol.48

骨折後の神経症状で、12級または14級の後遺障害が認定された場合の労働能力喪失期間

本件の担当
羽賀弁護士

2021年12月19日

事例の概要

骨折後の神経症状で、12級または14級の後遺障害が認定された場合の労働能力喪失期間について

議題内容

骨折後の神経症状で12級または14級の後遺障害と認定された場合、労働能力喪失期間はどの程度になるか、「赤い本2007年版」「交通事故相談ニュース2021年版」の裁判例と、当事務所の解決事例を分析・検討しました。

議題内容

・骨折後の12級の神経症状で労働能力喪失期間の認定が10年未満となった事例

・骨折後の12級の神経症状で労働能力喪失期間の認定が10年または10年超となった事例

・骨折後の14級の神経症状で労働能力喪失期間の認定が5年未満になった事例

・骨折後の14級の神経症状で労働能力喪失期間の認定が5年または5年超になった事例

参加メンバー
澤田弁護士 、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、羽賀弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、西村弁護士、石田弁護士
羽賀弁護士
今回は、「骨折後の神経症状で12級または14級の後遺障害が認定された場合、労働能力喪失期間の認定がどの程度になるか」ということをお話ししたいと思います。
羽賀弁護士
まず12級の事案についてですが、調べた文献の1つ目は、赤い本の2007年版です。ここに掲載された事例は42ありますが、骨折以外の怪我を原因とする神経症状の事例が含まれており、20事例が今回検討対象になりました。
文献の2つ目は、交通事故相談ニュース2021年版。56事例が分析されていますが、骨折後の神経症状以外で12級が認定された事例がいくつ含まれるかは分かりません。そのため、骨折後の神経症状で12級が認定された事案に限定した分析ができませんので、参考にする程度にしました。
最後に、私の今までの解決事案を分析しました。12級・14級の事案の中でも、骨折後の神経症状によって後遺障害が認定された事案に限定するため、例えば脳損傷後の脳挫傷痕について12級が認定されたとか、脊髄損傷で12級が認定されたとか、軟部組織の損傷で12級が認定されたといった事案は除外しています。
石田弁護士
骨折後の神経症状で、12級が認定されるのはどんな場合でしょうか。
羽賀弁護士
代表例は、骨折部分に癒合不全が生じて疼痛や痺れなどの神経症状が残ってしまうものです。骨折後の癒合が良好でないことが画像で確認できる場合に、12級が認定されます。
羽賀弁護士
話を戻しますが、今回お配りした資料では、労働能力喪失期間について、①10年未満に制限したもの、②10年に制限したもの、③10年超・就労可能期間未満を認定したもの、④就労可能期間の全期間を認定したものの4つに分類しました。文献では基本的に10年以下か10年超という分類だけだったのを、もう少し細かく分類し直しています。
羽賀弁護士
分類を少しまとめる形でお話しすると、骨折後の神経症状で12級が認定された場合の労働能力喪失期間は、10年以下と10年を超えるものが、ほぼ半々という結果になりました。
羽賀弁護士
赤い本掲載の20事例では、労働能力喪失期間を10年以下に制限した事案がほぼ半分。10年を超えているとか、就労可能期間全部が認定されているものが残り半分でした。私の解決事例18件もほぼ同じ傾向で、10年までに制限されているものがほぼ半分で、10年を超えるとか、就労可能期間全部というのが残り半分でした。以上が12級の場合の概要です。
羽賀弁護士
次に14級の場合ですが、こちらは、①5年未満に制限したもの、②5年に制限したもの、③5年超を認定したもの、④就労可能期間の全期間を認定したもの、という4パターンに分類しました。
ざっとした結論から言いますと、こちらも喪失期間5年以下と5年超がほぼ半分ずつになりました。
赤い本の14件では、5年までに制限された事例がほぼ半分、5年を超えているものが残り半分です。私の解決事例30件を集計しても、5年までがほぼ半分、5年を超えたものが残り半分です。
羽賀弁護士
次に、12級と14級それぞれについて、労働能力喪失期間の認定についてより詳しく見ていきます。具体的には、12級で労働能力喪失期間が10年未満に制限された事案と、就労可能期間全期間が認定された事案を詳しく検討します。また、14級では、労働能力喪失期間が5年未満に制限された事案と、就労可能期間全部が認定されている事案を詳しく検討します。
まず、赤い本の事例で、骨折後の神経症状で12級認定で労働能力喪失期間認定が10年未満となった事案は、2件ありました。
そのうち1件は、赤い本では12級で10年未満になった例として紹介されているんですが、よく見ていくと、認定された等級は12級ではなく14級という事案です。労働能力喪失率は12級相当の14%が認定されていますが、骨折後の12級の神経症状が認定された事案とは言えないように思います。
羽賀弁護士
赤い本のもう1件は、就労可能期間8年に対して6年ということで、12級にしては短い期間の認定になっています。
事案は、入院期間が231日と長く、12級に至らない程度の関節の可動域制限があり、大腿骨の骨頭壊死の可能性が指摘されているというものなので、比較的重傷の事案ではないかと思うんですが、結論として労働能力喪失期間に制限をかけているので、例外的な事案ではないかという印象です。ただ、全期間8年に対しての6年で大幅に制限されているわけではないですし、喪失率は14%のところを16%と上げているため、逸失利益が総額で大幅に制限されているわけではないと言えます。詳しい判決内容はお配りした資料をご覧ください。
羽賀弁護士
私の解決事例では、12級で10年以下の制限を受けたのは1件あります。
依頼者は大阪市にお住いの方で、就労可能期間9年に対して保険会社が6年で譲らず、それで示談成立しました。
一般的には、基礎収入について女性の年齢別平均賃金で認定される可能性があったんですが、女性の全年齢平均賃金が採用されたため、逸失利益の総額は実はあまり減額にはなっていないという事案です。
羽賀弁護士
全体として、骨折後の神経症状で12級が認定された場合に、労働能力喪失期間が10年未満になるケースは多くはないと言えると思います。
羽賀弁護士
続いて、骨折後の12級の神経症状で就労可能期間の全期間を労働能力喪失期間と認定された事案です。こちらは赤い本では7件ありました。
全体的な傾向としては、これも事案の細かい中身はお配りした資料を見ていただいたらと思いますが、入院期間が長い事案が多くなっています。
入院日数を見てみますと、長い順に230日、221日、135日、110日、98日、59日で、1件だけが入院無しですね。骨折の程度なども重い事案が多い印象です。
羽賀弁護士
次は、赤い本掲載の骨折後の神経症状について14級が認定された事案のうち、労働能力喪失期間が5年未満になった事案ですが、3件ありました。
それぞれの内容を見ていきますと、原告の労働能力喪失期間の主張が短い事案が目立ちます。
お配りした資料のうちの1件では、喪失期間は3年ですが、逸失利益の請求額が30万6千円に対して認容額が約27万円ですので、おそらくもともとの主張が短かった可能性があります。他の2件も原告の主張する喪失期間が短くなっています。
澤田弁護士
なぜなんでしょうね。
羽賀弁護士
判決文からはその辺の事情は読み取れませんが、全体として骨折後の神経症状14級の事案で、5年未満の喪失期間になるケースは多くはないと言えます。
私の解決事案では、3件が5年未満の喪失期間の認定になっています。
ただ、お配りした資料の1人目の方は、80歳くらいの高齢の方で、もともと就労可能期間が5年で、喪失期間が4年の認定ですから、大幅に制限されたわけではありません。また、他の損害はこちらの主張がかなり認められたため、示談額自体は高くなっています。他の損害項目を高めにした分、喪失期間を短くして調節して和解した事案と言えます。
羽賀弁護士
それからもう1人、4年に制限された方は、事故時は就労が不安定で、基礎収入の認定で色々難しい事情がありました。それでも、一定の逸失利益が認められたということで、全体として悪くはないと判断し、労働能力喪失期間4年で示談が成立しました。
最後の方は、骨折の程度が比較的軽かった方です。入院はされておらず、通院期間7ヶ月で治療が終了しています。
羽賀弁護士
次は、骨折後の14級の神経症状で、就労可能期間の全期間について労働能力喪失が認められた事案を紹介します。赤い本では3件紹介されています。
まず1件目。こちらは、色々と特殊な部分があります。
50才男性、骨折後の疼痛自体は14級の認定なんですが、事故により、多少あった視力が完全に喪失したものの、その部分は後遺障害等級に該当しないと判断をされています。ただ視力の部分も含めて、労働能力喪失率20%、就労可能全期間17年を労働能力喪失期間と認定。ですから、骨折後の疼痛のみで就労可能全期間を労働能力喪失期間と認定した事案ではないと言えます。
羽賀弁護士
2件目の事案ですが、44歳の女性で、67歳までの全期間23年が認定されています。右肘部分を骨折し、手術を受けて入院。それでも骨が癒合していないというのが分かって、再手術をしています。接合のために2回手術をするというのは、比較的少ない事案かもしれません。大抵は1回手術して1回抜釘なので、程度としては比較的重いといえます。
羽賀弁護士
それから3件目ですが、こちらは、平均余命の半分の11年間が喪失期間と認定された事案です。この方は骨折箇所が非常に多くて、足に集中してはいるんですが、左足の中足骨1から5番目までが全部折れ、右足は4・5中足骨が折れています。合計7カ所骨折で、入院期間が111日、14級の認定箇所が2カ所ですので、14級の中では比較的重傷事案と言えます。
羽賀弁護士
赤い本で3件だけの紹介ですので、骨折後の14級認定の場合、労働能力喪失期間が制限されない事例はあまりないと言えそうです。紹介された事案も、相当重傷であるものの14級認定にとどまった事案ですので、例外的事案かもしれません。
羽賀弁護士
また、14級の労働能力喪失期間が全期間認定されている事案は、ある程度年齢が高い方とか、就労可能期間がもともと短い方が多い印象があります。そのため、全期間認定と言っても、認定された喪失期間はあまり長くない事案が多いです。労働能力喪失期間が20年を超えたのは、3件のうち1件のみです。
羽賀弁護士
私の解決事例でも、20年を超えるのは1件だけです。32年が認定されました。
ただし、被害者の方の基礎収入はそんなに高くなく340万円ほど。しかも過失割合が20%とされた事案だったので、実は労働能力喪失期間を32年と認めても示談金額は440万円と大幅に高いとは言えない事案です。総額がそんなに高くならないのであればということで、保険会社としても労働能力喪失期間を長期間認定しやすかったのかもしれません。
吉山弁護士
骨折後の神経症状14級だと、なかなか全期間での認定はむずかしいというのがよくわかりました。配布いただいた解決事例の資料の中で、骨折後の14級の場合に5年以下に制限されてるケースが半分ぐらいありますね。
羽賀弁護士
そうですね。
吉山弁護士
一方で、基準が24年に対して17年とか、52年に対して10年とか。5年を超えている事案もありますが、これらの事案の交渉経過はどんな感じですか。
羽賀弁護士
5年を大きく超えている事案は、当方から67才までの全期間を主張し、保険会社からは5年を超える期間を当初主張、その後交渉して、最終的にまとまるということが多いと思います。
5年をわずかに超える事案は、保険会社は5年または5年未満を主張し、交渉で引き上げて何とか5年を超えるという感じです。

「みお」のまとめ

骨折後に痛みやしびれが残り、12級13号または14級9号の後遺障害が認定された場合、多くの場合、保険会社が労働能力喪失期間の制限を主張してきます。特に被害者の方に弁護士がついていない場合、大幅な制限を主張されることが多いと思います。
労働能力喪失期間の制限が主張されたときは、それが妥当なものであるかを検討して、少しでも喪失期間を延ばし、適正な示談金を獲得できるよう交渉する必要がありますので、弁護士に相談されることをお勧めします。特に12級が認定された場合、過失割合が高い等の事情がなければ、多くの場合、弁護士が交渉すると示談金額が大幅に増額になっています。

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