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弁護士による交通事故研究会

事例研究
Vol.46

死亡事故の解決事例研究

本件の担当
羽賀弁護士

2021年08月19日

事例の概要

80歳女性、年金生活の一人暮らしの方の死亡事故と、49歳女性、主婦の方の死亡事故について、示談交渉で解決しました。

議題内容

被害者の方の生活状況等から算出される慰謝料・逸失利益の金額、訴訟に至った場合との比較等を検討しました。

議題内容

・死亡事故の場合に請求できる項目について

・保険会社と示談成立に至るまでの経緯

・被害者の年齢や生活状況に近い裁判事例の検討

・示談解決した場合と裁判で解決した場合の比較

参加メンバー
澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、羽賀弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、大畑弁護士、西村弁護士、石田弁護士
羽賀弁護士
死亡事案が2件解決しましたので、ご紹介します。
事案の概要ですが、1件目は、大阪府の80歳の女性で、無職、夫は既に亡くなっており、一人暮らしの方です。年金生活で、老齢厚生年金が110万円強、遺族厚生年金が年110万円弱です。相続人は、別のところで暮らしている子が2人です。
羽賀弁護士
事故状況は、青信号で横断歩道を歩行中に、同じ方向から交差点を左折してきた四輪車にはねられました。そのため、過失割合は0です。
羽賀弁護士
事故後数ヶ月経って、そろそろ示談交渉を始めないと、ということで相続人の方が事務所に来られて、受任しました。
羽賀弁護士
交渉の経過をご紹介します。
まず当方が提示した示談案は、葬儀費用が150万円、年金に関する逸失利益は、年金額に対して、生活費控除が30%、平均余命は12年なので、その分のライプニッツ係数ということで算出したものと、死亡慰謝料が2500万円で請求をかけ、合計の提示額は3,400万円ほどになりました。
羽賀弁護士
保険会社と交渉したところ、まず、逸失利益のところで、生活費控除を50%でどうかと。あと、死亡慰謝料は、一人暮らしで、お子さんも独立されているということなので、2000万円でどうか、というものでした。
羽賀弁護士
生活費控除の部分と死亡慰謝料についてさらに交渉したところ、内訳は明確にはなりませんでしたが、総額で約2,950万円となり、さらにもう少し話ができないかと交渉したところ、3000万円ならという回答が来て、最終的に示談に至りました。
羽賀弁護士
今回の示談の結果を、実際の裁判例と比べるとどうなのかを検討します。
被害者の方は80歳で一人暮らし、相続人は既に別の所に住んでいる子2人ですが、比較的高齢の方で、一人暮らし、相続人との関係性も類似するもので、2000万円か2100万円の案件が複数出てきます。
羽賀弁護士
4件の内容は資料でお配りしていますが、例えば、81歳の一人暮らしの女性で、きょうだい6人が相続人の場合、死亡慰謝料が2000万円という事案もありますが、Aさんの条件にぴったり当てはまる方は見つかりませんでした。東京地裁の平成28年の事案で、80歳女性で一人暮らし、子どもは1人ですが、死亡慰謝料2200万円というのがありました。ただ、子どもとの関係性が、大分近いもので、本件とは条件が少し違うところです。
ということで、今回の場合は、死亡慰謝料は2000万円~2100万円くらいではないか、という見立てになります。
羽賀弁護士
次は、年金逸失利益の生活費控除が、裁判ならどうなるかという点です。
一般的な給料の生活費控除は、被害者の方が一家の支柱だとか男性か女性かだとか、そういったことで色々変わりますが、30%から50%というのが標準的です。しかし、年金の逸失利益になると、若干生活費控除率が高くて、40%、50%、60%ぐらい、という事案が多くなります。但し、Aさんのように、厚生年金以外に遺族年金も受けておられる場合は、遺族年金の方は逸失利益に含まれないこともあって、生活費控除は、若干低く判断されるケースがあります。
羽賀弁護士
老齢年金と遺族年金を受けているという裁判例は4つ見つかりました。1件は老齢年金が非常に少額という特徴があるので除外して、残り3件では、40%が2件、50%が1件ありました。いずれのケースも遺族年金の金額がかなり大きいのが特徴です。遺族年金がかなり高額の場合だと、生活費控除の割合が下がる方向になりますし、遺族年金はあるけれど、そこまで高額ではないとなると、生活費控除の割合も上がる方向になります。今回の事案ですと、老齢厚生年金と遺族厚生年金を比べると老齢厚生年金の方が高く、金額的に、参考に挙げた裁判例よりは、総額としては若干低いので、50%程度の可能性が高いのではないかという見立てになります。
事例の具体的な数字は、お配りしている資料をご覧ください。
羽賀弁護士
葬儀費用は150万円で争いのないところだと思います。
あと、裁判になると、弁護士費用や遅延損害金、裁判上の和解ということであれば、和解調整金という形で、加算が考えられます。
裁判の場合どれくらいの加算が入るかですが、一般的に言うと、弁護士費用が、認容額の10%、遅延損害金は、事故当時の年率3%で加算されるということになります。
羽賀弁護士
弁護士費用を算出する“10%”ですが、裁判例によって、何の10%かが違う場合があります。一般的には総額、つまり認容額が3000万円だとすると、その10%の300万円の弁護士費用を認めるというのが多いかもしれないんですが、事案によっては、自賠責相当部分を控除した残りに対しての10%、という認定になる場合もあります。
吉山弁護士
Aさんの場合、過失割合は0%で、争うことはありませんから、年金逸失利益と死亡慰謝料のみが争点になりますよね?
羽賀弁護士
はい。そうなると、弁護士費用加算の際に自賠責相当部分を控除した残額に10%とされる可能性があるように思います。
吉山弁護士
Aさんの自賠責相当部分は幾らぐらいですか?
羽賀弁護士
大体2000万円です。
吉山弁護士
それを控除した残額の10%となると、弁護士費用の加算がだいぶ低くなりますね。
羽賀弁護士
そうなんです。100万円位になります。
羽賀弁護士
裁判で最大限の金額になると、示談3000万円より依頼者の方に有利になりますが、中間的な見込額や低めの見込額であると、依頼者の方に不利になってしまいます。そのように考えると、本件は3000万円で示談する方がいいと判断し、最終的に示談が成立しました。
羽賀弁護士
2件目の事案に移ります。
被害者の方は大阪府羽曳野市49才の女性で、相続人は、夫と、未成年のお子さん2名です。仕事はされていましたが、収入は年200万円ほどで、逸失利益の点では、家事従事者として算定をすることになります。
羽賀弁護士
事故の状況は、自転車で車道を走行中に、後方から来た車に追突されたというものです。
基本的には過失割合0%になりそうですが、車道の左端ではなく、やや真ん中辺りを走っていたのではないかという話もあって、受任時点では、過失割合の問題になる可能性もあるという状況でした。
羽賀弁護士
交渉経過ですが、こちらからの示談額の提案は、7,700万円ほどでした。
葬儀費用は実費の130万円。死亡による逸失利益は、家事労働の分が3,800万円。年金の方ですが、亡くなられた時点では年金は未だ受け取られていませんが、受給資格期間満たしていたため、逸失利益として請求をしました。
羽賀弁護士
亡くなられた時点での年金見込額は140万円ほど。こちらに関しては生活費控除40%を掛けて、その他計算して、890万円ほどを請求しました。
羽賀弁護士
死亡慰謝料は、2800万円で請求しました。一家の支柱以外の方の基準2000万円~2500万円の上限2500万円に、ひき逃げを慰謝料加算要素とし、300万円プラスして2800万円としました。
羽賀弁護士
保険会社と交渉したところ、総額で6,500万円ほどの提案がありました。
逸失利益は、主婦の逸失利益は全額認めるが、年金逸失利益は認めませんということでした。死亡慰謝料については、この時点では、ひき逃げ分を加算せず2500万円という内容です。
羽賀弁護士
ここからさらに交渉したところ、調整金300万円という項目が加わりました。これは、ひき逃げによる慰謝料の加算の趣旨です。そこから更に交渉した結果、将来年金について一部考慮して、調整金が約470万円になり、最終的に7000万円になり、示談が成立しました。
羽賀弁護士
今回の示談の結果を、実際の裁判例と比べるとどうなのかを検討します。
まず、主婦の家事労働の死亡逸失利益については、保険会社もこちらの請求通り、生活費控除30%で認定してきました。
裁判だと、女性の生活費控除は30%から40%が基準になりますので、35%とか40%ということで、こちらに不利になる可能性がないわけではありません。ただ、Zさんの事案は、夫が基本的には家事にはタッチしていないというところと、お子さん2人が未成年というところを考慮すると、生活費控除が35%とか40%という認定にはあまりならないのではないか、30%の認定になる可能性が高いのではないかと思われます。
羽賀弁護士
生活費控除が40%になっている裁判例は2件ありました。
大阪地裁平成28年の判決ですが、夫と娘1名と同居していた57歳の女性の事案です。夫は病気で無職になっていて、そのため、むしろ家事をすることがある、という認定があるとして、生活費控除が40%になっています。
さらに、大阪地裁平成29年の判決ですが、こちらも生活費控除40%になっています。同居しているのが、夫と娘夫婦と孫2人という74歳の方ですが、家事は娘と分担していることを踏まえ、生活費控除が40%の認定になっています。
Zさんの場合はこういった事案とは事情が違いますので、30%の可能性が高いかなと思います。
羽賀弁護士
年金に関する死亡逸失利益は、890万円の請求に対して、170万円の認定になりました。
実際の裁判例を見てみますと、受給資格があれば年金に関する逸失利益は認定されることが多くなっています。生活費控除は50%とか60%になることが多いと思いますが、この点は裁判をした方が有利になる可能性があります。
羽賀弁護士
死亡慰謝料ですが、Zさんの事案では、ひき逃げ部分を除くと、2500万円になりました。
Zさんは49歳で、夫と子供2人という家族構成を考慮すると、赤い本の記載によれば、おおむね2400万円は認定されるのではないか、2500万円になる場合もあるのではないかといったところです。
羽賀弁護士
ひき逃げの死亡慰謝料加算は300万円になりましたが、裁判でも加算はされると思われます。ただ、どれくらいになるかは、裁判例を調べても実はよく判りません。ひき逃げだけが問題になっている事案は少なく、いろんな要素を考慮して最終的に死亡慰謝料を判断しているためです。
羽賀弁護士
過失割合ですが、Zさんは0%で認定されましたが、同じ様な事案の裁判例を見ると、例えば、同じように道路の真ん中辺りを走っていても、0%という例がある一方で、自転車は基本的に左端を走行しなければならないという道交法の規制から外れているとして、10%過失の認定が出ている例もありました。
なので、過失割合は裁判にすると若干不利になる場合もあり得ます。
あとは、裁判だと、和解調整金か、弁護士費用プラス遅延損害金の加算が有り得るので、そのプラス要素を考える必要もあるということになります。
田村弁護士
Zさんの場合、示談と裁判のどちらの方が、よかったんでしようか。
羽賀弁護士
基本的には裁判をした方が、手取りは増えるのではないかという見通しになります。
例えば、主婦の逸失利益はそのまま認められるとして、年金の逸失利益は生活費控除60%、死亡慰謝料2400万円、ひき逃げの加算は200万円にして、過失相殺10%、自賠責部分を除いて弁護士費用加算を考えるとしても、ご依頼者のお手元には多くの金額を残すことができます。
しかし、依頼者の方と裁判にするかどうか話し合ったところ、基本的にはこちらの請求に関して、年金逸失利益以外はほぼ認められているので、これ以上時間をかけるのはどうか、ということで、7.000万円で示談が成立しました。

「みお」のまとめ

死亡事故でも、保険会社は、様々な理由で示談金額を低く抑えようとしてきます。その中で、可能な限り適正な示談金を獲得するには、弁護士に依頼することが必要です。弁護士に依頼すると裁判になるのでは、と心配される方もいらっしゃいますが、「みお」は、交通事故問題のほとんどを、弁護士による示談交渉で解決しています。死亡事故でも、裁判になることは多くはありません。ご遺族の方の負担を少しでも軽くするためにも、亡くなられた方のためにも、ぜひ一度「みお」の弁護士にご相談ください。

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