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弁護士による交通事故研究会

裁判例研究
Vol.36

年金逸失利益の生活費控除

本件の担当
羽賀弁護士

2020年06月04日

事例の概要

死亡事故による年金の逸失利益算定の争点の1つである生活費控除率の割合を、裁判例を基に検討しました。

議題内容

「年金逸失利益の生活費控除」について

議題内容

・過去の文献における、年金収入の逸失利益の生活費控除率の記載

・生活費控除率算定のための考慮要素

・年金収入に対する生活費控除率の平均値

・平均値外の事例検討

参加メンバー
羽賀弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、大畑弁護士、北名弁護士、石田弁護士、松弁護士
羽賀弁護士
今回は「年金逸失利益の生活費控除」というテーマで、お話ししていきたいと思います。
主に参考にしたのは、資料として付けています、『交通事故相談ニュース36号』です。こちらに、裁判例の傾向とか、裁判例で具体的に何パーセントの生活費控除をしたか、といったことが載っていましたので、まとめています。
羽賀弁護士
死亡事故では、逸失利益を算定する際、死亡して生活費は不要になったという理由で、生活費分が控除されます。
山本弁護士
食費だとか住居費とか、要するに生きるための必要経費ですね。
大畑弁護士
それを何%にするのかということで、保険会社と争いになりますね。
羽賀弁護士
そこで、目安になる資料がないか探してみたんです。
まず『賠償額算定のしおり』、緑色の表紙の、大阪弁護士会が出しているものですね。こちらには、「年金収入の逸失利益については、一家の支柱及び女性は30~40%、その他は50%とするなどといった、給与収入とは異なる生活費控除を用いることがある」とあるんですけれども、じゃあ具体的には何%が基準になるか、というのは特に記載がありませんでした。
小川弁護士
一般的基準では、一家の支柱は仕事が忙しくて家にいないから、生活費がかからないということかな?女性も生活費がかからないんですかね。(笑)この辺りは、実際に生活費がどれくらいかかるのかというよりは、遺族の生活保障の観点や男女間の賠償額のバランス等から基準が決まっている部分が大きいように思います。
羽賀弁護士
それで次に赤本を見ました。こちらの記載でも、「年金部分についての生活費控除率は、通常より高くする例が多い」という程度の記載で、何%位かという記載は特にありませんでした。
田村弁護士
年金は生活費に使われることが多い、という認識がありますから、通常より生活費控除が高くなるんでしょうね。
羽賀弁護士
3冊目は、これはちょっと古いんですが、1996年の赤い本の裁判官の講演録。こちらには、ある程度具体的な記載がありまして、「受給していた年金の額や事案における個別の事情を考慮し、概ね50%~80%の範囲で設定し、一般の事案では60%とされることが多い」という内容でした。
ただ、これも20年以上前の古い文献ではあるので、最近の物で何かないかと探しましたら、2016年の『交通事故相談ニュース36号』にこのテーマの記載を見つけました。
羽賀弁護士
その中で、2009年1月から2013年12月の間の判決言い渡し分を見ると、年金収入のみの事案であれば、大体30~60%の範囲で年金の生活費控除を行っており、50%または60%が最も多い、とのことでした。
羽賀弁護士
詳細に見て行きますと、単身または配偶者との2人暮らしで、配偶者も年金を受給している事案では、生活費控除率を50%とするものも多く見られるということです。
羽賀弁護士
それから、年金収入の他に稼働収入もある事案については、稼働収入に対しての控除率と、年金収入に対しての控除率、これを区別して、稼働収入部分は通常の基準で出して、年金収入部分については高めの控除率としているものが多い、ということです。
倉田弁護士
具体的にどういった事情を考慮して生活費控除率を算定しているかについてはどうでしょうか。
羽賀弁護士
それについては、7つの要素を挙げられています。
1つ目は、稼働収入と年金収入の額。2つ目は、遺族年金を受給していたかどうか。3つ目は亡くなった方の親族に、稼働収入・年金収入があるかどうか。4つ目は、例えばその他の収入として、不動産や配当の収入があるか。5つ目が、本人の年齢とか性別はどうか。6つ目は同居親族の人数と扶養関係がどうか。最後が、生活費の負担状況どうなっているか。こういった事情が考慮されているということのようです。
羽賀弁護士
最後に、この文献に掲載されている裁判例61件分の具体的な生活費控除率を、一覧表にしてみました。
羽賀弁護士
稼働収入と年金収入をまとめて控除率を出す事案もありますので、一概に出し辛い所があるんですけれども、控除率を、30%から90%まで、ずらっと並べてみると、50%のものが61件中28件、60%が61件中13件、後は、40%のものが61件中8件、という所で、文献に記載されていた通り、50~60%が多いです。ただ40%の事案も結構ある、というところです。
単純にパーセンテージで言えば、40~60%の控除をしている事案が全体の87%程度ですので、控除率は40~60%程度、ただし、40%という事案はやや少ないということができると思います。
石田弁護士
40~60%の範囲から外れる事案は、例えばどういった事案になりますか?
羽賀弁護士
はい、それもまとめてみました。
まず、控除率が30%の事案ですが、特徴としては、対象となる年金収入が、年額91,000円程と非常に少額である一方で、遺族年金を、1,559,800円と高額な受給をされていた方です。
遺族年金がある分、通常の年金を生活費に回す割合が少ないと判断されたのかもしれません。実際には、年金が少なく賠償額全体が小さくなってしまうため、調整で生活費控除が小さくされたということかもしれません。
吉山弁護士
遺族年金は、逸失利益性は厚生年金保険法で否定されていますね。
羽賀弁護士
一方で、控除率が70%とされた事案が4件ありました。これらの特徴としては、
いずれも、稼働収入と年金収入の両方があるという事案のようです。
で、その中身を見てみますと、例えば、稼働収入が254万円、676万円、1,250万円と、非常に高い事案が多いのと、年金収入にしても280万円というような事案でした。
加藤弁護士
収入が高い事案で控除率が高くなっているということですね。
羽賀弁護士
そう考えられます。最後に、控除率が更に80%・90%の事案ですね。
3件ありましたが、これは事案の中身で言うと、当初家事労働の就労期間があって、その後年金収入のみになる方々の事案です。
北名弁護士
控除率が70%とか、80%・90%と高い案件は、個人的な感覚では、あんまり理論的な感じではないような気がします。
羽賀弁護士
同感ですね。家事労働をやっていようがいまいが、本来、控除率は変わらない気がします。また、稼働収入があるんだったら、年金には手を付けずに済む可能性もありますので、生活費控除率が下がっても良いのかなって、個人的には感じたんですけれど。その辺は家事労働分や稼働収入があるために逸失利益が高くなりそうだから控除率を上げてしまう、という調整をしたのかもしれません。
羽賀弁護士
事案によって結構ズレがあるようですが、保険会社と交渉では、控除率は、大体40とか50とか60、それ位の事案が多いという所をまず念頭に置いて、後は個別の事案で、控除率が下げられる要素は無いか、という所で考えて行けば、妥当な数字が出せるのではないかと感じました。

「みお」のまとめ

死亡事故の場合は、亡くなったことで生活費が不要になるので、逸失利益の算定の際に生活費が控除されます。そして、その割合を何%にするかが、保険会社との賠償金交渉での争点の1つになります。
こういったことを含めて、死亡事故は、特有の争点が問題になることがありますので、万一ご家族が死亡事故に遭われた場合は、交通事故解決の経験豊富な「みお綜合法律事務所(大阪・京都・神戸)」に相談されることをお勧めします。

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