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弁護士による交通事故研究会

事例研究
Vol.25

重度後遺障害の示談と裁判の比較

本件の担当
羽賀弁護士

2019年06月19日

事例の概要

同程度の重度後遺障害が残った方お二人の賠償額について、裁判と示談の場合の考え方の違いを比較検討します。

議題内容

  • ほぼ同年齢・同学歴の男性の逸失利益の比較。
  • 近親者介護費の比較。
  • 家族介護の問題点。
  • 無保険車の事故について。
  • 示談で解決するメリット。
議題内容

重度後遺障害の賠償金問題の解決について、示談交渉と裁判でどう違うか。

参加メンバー
澤田弁護士、伊藤弁護士、羽賀弁護士、吉山弁護士、田村弁護士、北名弁護士、大畑弁護士、石田弁護士、山本弁護士、加藤弁護士
羽賀弁護士
今回のテーマは、「重度後遺障害の示談と裁判の比較」です。
重度の後遺障害が残った方で、年齢などの条件がよく似た2人の方の賠償例を取り上げて、示談と裁判の場合、それぞれどういった考え方になっているかを比較していきたいと思います。
羽賀弁護士
1件はKさんという方の事案です。
平成26年と、かなり前に解決した事案ではありますが、大阪地裁に訴訟提起して、最終的に裁判上和解で解決となりました。
もう1件はTさんという方の事案です。
こちらは最近解決して、示談金の入金待ちの段階です。保険会社と示談交渉が成立して、解決に至りました。
羽賀弁護士
お二人共男性で、症状固定時の年齢は、Kさん25歳、Tさん27歳と近いです。
後遺障害の症状は、Kさんは遷延性意識障害で1級、Tさんは、脊髄損傷と高次脳機能障害の認定で1級です。傷病名から見ると、Kさんの方が重度と言えます。
学歴は同じ高卒で、職業は、Kさんは当時専門学校生でアルバイトをされており、年収ベースで言うと64万円程度。アルバイトなのでそんなに多くはありません。
Tさんは大阪府堺市で正社員として働かれていて、年収は324万円程度。高卒の同年代平均よりもちょっと低いかなというくらいの数字となります。
収入自体を比較すると違いがありますが、Kさんが専門学校生であるために収入が低くなっていることを考えると、条件的には比較的近いかなと思われます。
事故後はお二人共介護が必要になったんですが、どちらも自宅介護で、ご両親がいらっしゃって、ご両親による介護となっています。
参考までに、過失割合は、Kさんは0対100。加害者の信号無視の事案です。
Tさんはバイクで、加害者が四輪車で、交差点で右折直進の事故ですので15対85、という内容です。
以上が大枠の前提条件となります。
羽賀弁護士
損害額等の認定ですが、裁判所の認定とI保険会社との示談の内容を大枠で比較し、比較的差がついたところなども含めてお話しします。
まず、入院付添費ですが、緑本の基準ですと大体1日6,000円になりますが、Kさんは1日当たり4,200円、Tさんは1日当たり8,000円という金額になりました。また、近親者介護は、Kさんは1日当たり5,000円という裁判所の認定に対して、Tさんは1日当たり1万円という認定になっています。
伊藤弁護士
どうして、近親者介護費にそんなに差がついたんですか?
羽賀弁護士
裁判は、保険会社より案外シビアな場合があったりするんです。
伊藤弁護士
そういう場合もあるんですか
羽賀弁護士
金額自体以外の部分で、近親者介護の期間をどの程度とるかという点なんですが、Kさんの分は、認定としましては、介護にあたる方が、67歳になるか、平均余命の半分に至るまでの、いずれか長い方を選択するということで、平均余命の半分の方を取られてしまったということです。
Tさんの方は単純に、67歳までということでした。
羽賀弁護士
職業介護人の1日単価はどちらも2万円、あと車両購入費は、家族の便益を控除するかどうかというところで差がつきまして、Kさんは5割控除を受けていますが、Tさんは控除なしです。
伊藤弁護士
家族の便益について控除するかどうかについて差がついたのは、どういう理由からですか?
羽賀弁護士
明確な理由は分からないところがありますが、車がどの程度大きいかとかその辺も影響しているかと思います。
遷延性意識障害のKさんは、かなり大型の車を購入せざるを得なかったということで、家族の便益が非常に大きいという認定でしたが、Tさんは普通の車イスでいけますので、軽自動車で対応されたということで、特に家族の便益はないという認定になった可能性があります。
羽賀弁護士
続いて基礎収入ですが、Kさんは高卒男性の平均の461万円ほどの認定です。Tさんは、男性の学歴計の平均で551万円ほどになりました。あと、近親者の慰謝料につきましては、Kさんはおそらく500万円いかない程度の認定。Tさんは600万円ほどの認定です。
全体の賠償額に関しましては、Kさんは2億7千万円です。Tさんは2億4千万円ですが、これは過失減額後の数字なので、もし過失割合が0対100だったら、2億7千7百万円ほどになります。
全体的な類似点をまとめますと、どちらも男性で、年齢も25歳と27歳と近く、学歴は高卒、さらに両親による自宅介護が必要になった、と類似するところが多い事案です。
羽賀弁護士
損害額を計算する際の他の条件としまして、まず後遺障害の中身はどちらも1級1号なんですけれども、Kさんは遷延性意識障害、Tさんは脊髄損傷と高次脳機能障害、おそらく脊髄損傷で1級、高次脳機能障害は9級くらいということで、一般的にはKさんの方が、とくに介護費用という観点で言いますと、認定が高額になると思います。
ただし、実際には、近親者介護に関して、Tさんの方が高い認定になっています。5,000円と1万円ということで、Tさんの方が高い。
職業介護費はどちらも2万円で、同じではあるんですけれども、裁判所からは、職業介護費1日2万円っていうのは高いつもりで出してますと。和解案なんで高めに出して、判決になるとちょっと低めに出して、遅延損害金で調整しますという、たぶんそういう趣旨で言われたのかなという内容です。
羽賀弁護士
続いて近親者慰謝料の方なんですけれども、こちらも、近親者がご両親お二人で、自宅介護を行うという条件は同じです。ただKさんの方が遷延性意識障害で重症かつ、加害者の方が結構いろいろありまして、無免許、ひき逃げ、赤信号無視。ついでに言うと無保険という条件もありました。
山本弁護士
無保険なんですね。
羽賀弁護士
はい、無保険です。盗難車での事故なので自賠責が使えず任意保険も使えずです。
澤田弁護士
お金は回収できた?
羽賀弁護士
はい。回収したのは無保険車傷害保険です。Kさん側の保険を使ったんです。加害者相手ではなくて、こちら側の保険を使いました。
澤田弁護士
それで弁護士基準で出るんやね。
羽賀弁護士
そうですね。無保険車傷害保険は、弁護士基準での対応が可能という保険です。
澤田弁護士
わかりました。
ところで、この裁判は誰を相手方にしてるの。
羽賀弁護士
S損保と、一応加害者本人の、両方が相手です。
澤田弁護士
自分が入ってる保険のS損保と加害者を相手に、訴えてる。
羽賀弁護士
そういう裁判です。
元に戻りますと、そういった条件だったので、Kさん相当ひどいってことになるんで、おそらく通常であればKさんの方が近親者慰謝料が高額になるはずなんですけども、Kさんは500万円いかない程度の認定で、Tさんは600万円の認定です。
羽賀弁護士
基礎収入と逸失利益に関しましては、おそらく通常、裁判所の方は、高卒の方であれば高卒の平均を使うってことが多いので、Kさんの場合もたぶんそういうことなんだろうなと思います。ただ、保険会社は高卒全年齢平均とかを使わず、男性学歴計を使ってくれることがあります。
なので全体的に言いますと、基本的な損害額の認定は、Tさんの方が、怪我の内容等が軽い割には有利な認定となっています。
Kさんの方は、裁判所の和解案が2億4千万円で出てまして、そこから交渉しまして、2億7千万円ということになりました。
澤田弁護士
そこから3千万円も上がるんやね。
羽賀弁護士
そうですね。依頼者の方が、どうしても、裁判上の和解で増やしてほしいという強いご希望があったのと、あとは、自分の側の保険なので、多少は融通が利いた可能性はあると思います。契約者側なので。
羽賀弁護士
相手方の保険会社との交渉の場合でも、うちは相手方の保険会社ですけど、この被害者の方はうちの契約者でもあるので云々とか。
実際にもそれで、弁護士介入前の示談提示額が非常に高いっていう場合もまれにあったりします。
澤田弁護士
今回は、弁護士介入前の示談提示額はなかったん?
羽賀弁護士
それはどちらもないです。比較的早期の段階で介入していますので。
澤田弁護士
近親者介護として認定されたのはいつまででしたっけ。
羽賀弁護士
Kさんの事案はご家族の方の平均余命の半分まで、Tさんはご家族の方が67才になるまでの認定です。
澤田弁護士
Kさんの事案の認定は厳しいですね。
田村弁護士
へとへとですよね。
羽賀弁護士
他の事案では、近親者介護・職業介護、分けずに認定というのはありました。示談交渉ですけど。介護者が奥さんで、子どもが小学校低学年くらいってことで、あんまり夫のことは見られない、自分ではとてもじゃないけどできないという事情がありました。
田村弁護士
実績を重視するとかいうのはあるんですか?家で引き取って、裁判とか長い間かかってる間に、現に介護できてるというか・・・
羽賀弁護士
まあそうですね、実績はありますね。現に自宅介護をしてるとか、あとは、施設で預かってもらってるか、ってことで、基本的にはその認定ですね。
田村弁護士
初めから、誰かを雇ってっていうので、自腹を切りながらでもやってますってなるとそういう認定になりますか。
羽賀弁護士
そうですね。それであった場合は、その認定になる可能性があると思うんですけど、現実には職業介護の経費はあまりかかりません。介護保険なり下りるので、実際には負担はかなり軽いので、少なくとも、しばらく、たとえば示談なら示談する頃とか、裁判なら裁判で和解する頃までずっと、職業介護で、介護保険法とか障がい者総合支援法の適用を受けてますってなると、その間の認定がだいぶ下がってしまいます。
澤田弁護士
だから実際、Tさんの御家族に、症状固定後の治療費の資料を持ってきてくださいって言っても、提出されなかったとか?
羽賀弁護士
そうですね。普通は将来治療費とか将来雑費を色々請求するんです。Kさんの件でも請求はしてますし、普通はそうするんですけども、Tさんはほとんど費用がかかってないみたいです。治療費は、お話をうかがってみると、おそらく月3千円くらいしかかかってない。
雑費はおそらく、NASVA(注)の補助金とか出てるので、それで全部埋まってしまっている。実際に自分が出しているって感覚はなかったので、特に資料は出されなかったっていうことがあるようです。実際に厳密に計算すればけっこうな額になるとは思います。何十年か分とかになるんで。

(注)NASVA:ナスバ、自動車事故対策機構の略称。自動車事故の発生防止と被害者への援護を主目的とした国土交通省所管の独立行政法人。
澤田弁護士
こういう事案って示談にすると言ったら、逆に保険会社は破格の条件出してくるのかな。
羽賀弁護士
そうですね。保険会社は裁判は絶対したくないです、しないでくださいっていうことが結構あります。
吉山弁護士
裁判では弁護士費用加算や遅延損害金もありますしね。
澤田弁護士
それも見越して。
羽賀弁護士
そうですね。そこを見越して保険会社が金額を結構出してくるので結局この今回の2つの事案で比較すると、実は賠償額はあんまり変わらない。
澤田弁護士
早期解決っていう意味では示談の方が早い。
羽賀弁護士
圧倒的に早いですね。これくらいの重度の後遺障害であれば、恐らく裁判すると2年はかかります。証拠としてカルテが段ボール箱何個分も出てくることも多いです。
澤田弁護士
Kさんは自分で無保険車傷害保険入っててよかったね。
羽賀弁護士
そうですね。これがあったので、補償された。

「みお」のまとめ

重度の後遺障害の場合は特に、適正な賠償金の獲得が重要になりますが、億単位の金額になるため、保険会社との交渉が重要です。示談での解決は、早期解決につながり、費用も抑えられるだけでなく、交渉の仕方によっては裁判より有利な結果に導くことも可能ですが、優れた交渉力が必要です。重度の後遺障害の賠償金問題でお悩みなら、被害者専門に交通事故問題の解決に取り組んで来た、当事務所の弁護士にご相談いただけたらと思います。

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