事例研究
Vol.19
参考可動域を追加測定して、異議申し立てをし、適正な後遺障害等級を獲得した事例
事例の概要
- 被害者はバイク運転中に、四輪車との事故で左手を骨折。事前認定で後遺障害等級14級9号に。
- 後遺障害等級と保険会社の示談案の妥当性を確認したいと来所。
- 後遺障害診断書では、左手関節の主要運動の可動域制限が、12級6号認定の基準をわずかに上回る状態であったため、参考運動の可動域を目視で確認したところ、12級6号認定の可能性有りと判断。後遺障害診断書の追記内容によっては異議申立をするとの前提で受任。
- 後遺障害診断書の修正を受けて異議申立を行い、12級6号認定。
議題内容
議題内容
- 後遺障害等級の認定基準である、主要運動の可動域制限の数値がぎりぎりな場合の対応策について。
- 受任するかどうかの判断について。
参加メンバー
澤田弁護士、羽賀弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、田村弁護士、石田弁護士、山本弁護士、加藤弁護士

羽賀弁護士
事前認定で受けた14級9号の後遺障害等級に対して、参考可動域を測定して異議申し立てを行い、最終的に12級6号の認定を受けた事案です。事故は、加害者は四輪、被害者がバイクのいわゆる右直事故です。

石田弁護士
右折車と直進車が接触して起こる事故ですね、二輪車によくありますね。

羽賀弁護士
バイクに乗っていた被害者は、左橈骨遠位端(ひだりとうこつえんいたん)骨折をされました。左手首の辺りですね。9か月ほど治療されたものの、左手関節の可動域制限と疼痛が残ってしまったので、当事務所に相談に来られる前に、事前認定で後遺障害等級の認定を受けておられます。

羽賀弁護士
事前認定の際に提出した診断書には、手関節の可動域の他動値(医師が手を添えて曲げた角度)について、ケガをしていない右手首の関節が165°、骨折した左手首の関節が125°と記載されていました。125を165で割ると0.7575・・・・・で、約76%の可動域になり、3/4に若干届かないという内容で出されてしまっていました。

羽賀弁護士
そのため、自賠責保険からの、『後遺障害等級の認定の結果』は、「手関節の可動域制限については、健側(右手関節)の可動域角度の3/4以下に制限されていないので、そこの部分は後遺障害に該当しない。疼痛は残っているので14級9号と認定します」というものだったわけです。

羽賀弁護士
この結果を受けた被害者の方が、後遺障害等級が妥当なのかということと、保険会社から14級前提で示談案が出ていましたので、それで妥当なのか、というところで相談に来られました。

山本弁護士
“3/4”がポイントですね。後遺障害等級認定制度では、簡単に言うと、通常の3/4以下の範囲でしか動かない場合を後遺障害とすると定義されていますから。

羽賀弁護士
そうなんです。ご相談時にお持ちいただいた後遺障害診断書を見たときに、主要運動の可動域制限がぎりぎり3/4以下に達していないので、ぎりぎり12級が認定されなかったとわかりました。そこで、参考可動域が3/4以下になれば、12級6号の認定の可能性があると考え、その場ですぐ、どんな状態か目視で確認させていただくと、参考運動である撓(とう)屈・尺屈、手の平の左・右の動きのことですけれど、これが、左手は右手の1/2か1/3くらいしかできませんでした。
これなら、主治医の先生に参考可動域も測定してもらい、実際に可動域制限が3/4以下なら、診断書を修正してもらって、異議申し立てをする価値があるな、ということで、相談者の方に、医師への診断書修正の依頼をお願いしました。

田村弁護士
すいません、参考可動域ってなんですか?

羽賀弁護士
各関節の、日常動作に最も重要な動きを主要運動と言います。後遺障害等級の評価には通常、主要運動の可動域を採用しますが、場合によっては、参考運動の可動域も採用します。手の関節なら、手の平の掌屈・背屈、つまり前後の動きが主要運動で、参考運動は、手の平の撓屈・尺屈、つまり左右の動きです。主要運動がわずかに3/4以下にならない場合は、参考運動で3/4以下となれば、後遺障害等級が付くということです。

澤田弁護士
そういう規定があるんですよね。

山本弁護士
ありますね。主要運動でギリギリ3/4いかない場合でも、参考可動域が3/4以下だったら後遺障害を認めます、ということが書かれています。

羽賀弁護士
話を戻しますと、そうして修正してもらった後遺障害診断書を参考資料としてお配りしていますが、診断書の可動域制限の欄には、手関節の参考運動、つまり撓屈・尺屈の他動値が、右手が110°で、骨折した左手が40°ということで、だいたい1/3くらいの可動域だというのが書き加えられました。

羽賀弁護士
ということは3/4に達しないので、それなら12級6号でいけるんではないかと思いましたので、異議申立書は、シンプルにその点を主張して作りました。最終的には、自賠責保険の方から「主要運動である掌屈・背屈の可動域が、健側(右手関節)の可動域角度の3/4をわずかに上回り、かつ参考運動である撓屈・尺屈の可動域が健側(右手関節)の可動域角度の3/4以下に制限されていることから、12級6号と認定します」ということで、12級6号の認定が出ました。

吉山弁護士
主要可動域の角度がギリギリの場合は、参考可動域の角度も測ってもらって、異議申し立てをすれば、適正な等級がつく可能性がある、という実例ですね。

澤田弁護士
ご相談に来られたその場で、可動域を目視で確認したってことですよね。

羽賀弁護士
そうですね。可動域制限について等級認定がいけるかどうかのとりあえずの判断は、大体、その場で目視でやらせていただきます。目視かつ自動運動しか見ないので確実な判断まではできませんが、それで全然通る可能性がなさそうであればやらないですし、いける可能性がありそうなら診断書を書いてもらうっていうことで。

澤田弁護士
相談時に一定の見通しが立つのは、相談する側にとってありがたいことですね。

吉山弁護士
後遺障害等級12級と14級では、示談金の額が1桁変わることもありますからね。

羽賀弁護士
そうですね3倍くらい示談金が変わってくることが多いです。

澤田弁護士
依頼者の方に「みお」がすごいってこと分かっていただきたいですね。これが普通って思われたら残念です(笑)。
「みお」のまとめ

手足の後遺障害等級の評価には通常、主要運動の可動域を採用しますが、参考運動の可動域も測定して、適正な後遺障害等級を獲得しました。可動域のわずかな違いや参考可動域の記載の有無で等級が大きく変わることがあるため、診断書の内容を鵜呑みにせず、常に自分の目で確かめるように心がけています。
弁護士のご紹介

弁護士吉山 晋市

弁護士小川 弘恵

弁護士羽賀 倫樹

弁護士山本 直樹

弁護士倉田 壮介

弁護士田村 由起

弁護士加藤 誠実

弁護士西村 諭規庸

弁護士石田 優一

弁護士伊藤 勝彦

弁護士澤田 有紀

弁護士𠩤口 柊太

弁護士青井 一哲
増額しなければ
弁護士費用はいただきません!
※弁護士特約の利用がない場合