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弁護士による交通事故研究会

裁判例研究
Vol.87

休業損害の割合認定の傾向(主に主婦休損について)

本件の担当
羽賀弁護士

2026年01月29日

事例の概要

休業損害の割合認定の傾向を、裁判例と文献、当事務所の示談例から検討しました。

議題内容

議題内容

・休業損害の割合認定について

・主婦で14級の場合の休業損害の割合

・主婦で14級の場合の示談交渉における休業損害の割合

・主婦で非該当の場合の休業損害の割合

・主婦で非該当の場合の示談交渉における休業損害の割合

・主婦の休業損害認定の特徴

参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、石田弁護士、西村弁護士
羽賀弁護士
今回は休業損害の割合認定の傾向についてお話をします。休業損害の割合認定には、①通院期間の●●%を休業期間とするという方法と、②事故後1か月までは■■%、1か月経過後3か月までは▲▲%、3か月経過後症状固定までは★★%といった形で、徐々に休業割合を逓減させる方法の二つがあります。逓減させる方法でも、認定内容をもとに計算していくと、全体の休業割合を算出できます。
羽賀弁護士
会社員の場合は、休業損害証明書に基づいて算定することがほとんどですので、割合認定の対象になるのは主婦(家事従事者)の方が多くなります。
羽賀弁護士
休業損害の割合認定については、月刊大阪弁護士会の令和3年5月号に、「休業割合の検討に当たっては、負傷部位、家族構成や家族の年齢、生活状況、業務や職務の内容、休業期間の長さ、症状固定時の労働能力喪失率などを考慮する」との見解が掲載されています。また、主婦以外の休業損害は、「実際に減収した額を立証するのが本来であるので、どのような理由から割合方式で算定すべきであるのか、業務や職務の内容、制約を受ける程度、治療経過や症状の推移などを具体的に主張立証することが求められよう」とされています。
石田弁護士
抽象的な基準は以上の通りですが、実際に問題になることが多いのは、主婦でむち打ちの怪我をして、完治または14級の後遺障害等級が認定された事案と思います。
羽賀弁護士
そうですね。
そのような場合に、特に気になるのは示談や裁判でどの程度の割合の休業損害が認定されているかの点です。https://www.jikokaiketsu.com/study/688 のページで主婦で14級が認定された事案の裁判例の傾向を紹介したことがありますが、治療期間に対する認定割合は、50%を超えるものもあれば、10%くらいのものもあり、ばらつきが大きいのが特徴です。
羽賀弁護士
大阪地裁の裁判例でもある程度ばらつきはありますが、後遺障害等級14級の事案の休業損害割合は30%前後ということが多いようです。兼業主婦で、家事に影響はあったものの、家計への影響を考えてパートは休まなかったか、ほとんど休まなかったというケースはよくありますが、そのような場合は、休業損害割合がやや低くなる傾向があります。
羽賀弁護士
示談交渉の場合で、主婦の方についてどの程度の割合の休業損害が認定されているかについては、https://www.jikokaiketsu.com/study/413 のページで紹介しています。数年前の集計ですが、14級が認定された場合、平均して30%ほどの休業損害が認定される傾向が読み取れる一方、30日分ほどしか認定されない事案もあり、認定割合のばらつきが大きいのが特徴です。現在も傾向はあまり変わっていないと言えますが、専業主婦の割合が減り、兼業主婦の割合が増える傾向にありますので、パート等の仕事を休んでいるかの点の重要性が高まっていると思われます。
山本弁護士
主婦で後遺障害が非該当の場合は、14級の場合と比較して休業損害の認定割合に差はあるでしょうか。
羽賀弁護士
その点ですが、ベースとなる考え方として、症状固定時の労働能力喪失率も考慮されますので、14級が認定された事案より、認定割合は低くなる傾向があると考えられますが、大阪地裁の裁判例を見てもそのような傾向が窺われます。
羽賀弁護士
示談交渉でも傾向は同じです。非該当の場合、理論的には症状固定時に労働能力喪失率が0%になるため、平均すると休業損害の認定割合が14級の場合よりやや低くなっています。非該当の場合でも認定割合のばらつきは大きいのが特徴です。また、非該当の場合、通院期間が極端に短いケースもあり、14級の場合より傾向を読み取りづらい面もあります。
山本弁護士
主婦の休業損害の認定割合についての傾向はある程度見えてきたのですが、そもそも論として主婦の休業損害の認定割合はどの程度実態を反映できるのでしょうか。
羽賀弁護士
家事にどの程度の影響があったかは、客観的に証明することが難しいため、実態を反映するのは難しいところがあります。赤い本でも、①被害者の家庭内の家事の総量、②被害者の分担割合について、性質上個別の立証・反証が困難であり、ある程度類型化して検討することになるとされています。家事への影響の立証についても同じような面があると言えます。
山本弁護士
会社員の場合、例えばむち打ちの怪我であればあまり休んでいないこともよくある一方、トラック運転手・タクシー運転手などの場合、長期間の休みが必要になることもあります。会社員の休業損害と、主婦の休業損害を比較するとどちらが認定割合が高い傾向があるとかの特徴はありますか?
羽賀弁護士
個人的な印象にとどまりますが、主婦休損は具体的な立証があまり求められないのが特徴であり、かつ、認定される休業損害が平均して大きくなる傾向があるようにも思います。会社員の方がむち打ちの怪我をした場合、事故が起こった場合の危険性が大きい職種でなければ、ほぼ休んでいない方が多い印象です。
そのため、主婦の場合は、会社員よりも、非該当の場合も14級の場合も示談金額が高くなる傾向があります。また、弁護士が交渉することで休業損害が増額になりやすい傾向もありますので、示談交渉を弁護士に依頼するメリットが特に大きいと言えます。
山本弁護士
そうですね。主婦の方は休業損害が増額になりやすいため、非該当のケースや、弁護士費用特約がないケースでも交渉を受任できることがよくあります。

「みお」のまとめ

休業損害の割合認定は、事故の怪我が原因で生じた支障の程度に応じて休業損害を決める方法で、主婦休損を算定するときによく使われる方法です。会社員の場合、勤務先が作成する休業損害証明書があれば休業日数が明確になるため、休業損害の交渉が問題になることはあまりありません。これに対し、主婦の方の場合、休業の証明書がなく、休業日数が明確ではないですが、その分、弁護士に依頼した場合に会社員よりも休業日数の交渉の余地が大きくなります。
主婦の方で保険会社から示談金の提示があったという方は、特に増額の可能性が高いと思われますので、一度弁護士にご相談ください。

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