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弁護士による交通事故研究会

事例研究
Vol.16

公務員・減収なしの事案の逸失利益を争った事案

本件の担当
羽賀弁護士

2018年08月24日

事例の概要
  • 症状固定時52歳の男性公務員(大阪市内在住)の方で、右の脛骨腓骨骨折で、足関節可動域制限の後遺障害が残り、8級の認定を受けました。
  • 一般労働者と同じ基準で逸失利益を算出し、示談案を提示したところ、保険会社は、公務員の特殊性を主張して、定年前までは逸失利益ゼロ、定年以降は賃金センサスを基に45%の労働能力喪失率を認めると回答。
  • 保険会社との交渉で、定年前についても一定の逸失利益を認めることで示談が成立。

議題内容

  • 一般論としての、公務員で減収が生じていない場合の逸失利益の計算法について。
  • 公務員のご相談者の場合の、逸失利益の増額の経緯について。
議題内容
  • 公務員の定年前の逸失利益をゼロとする保険会社の主張を覆し、一定の逸失利益を取得。
参加メンバー
吉山弁護士、羽賀弁護士、小川弁護士、田村弁護士、山本弁護士、加藤弁護士
羽賀弁護士
今回の事例は、保険会社との間で、事故による減収がほぼなかった公務員の方の逸失利益が争点になった事案です。
羽賀弁護士
まず、公務員で減収が生じていない場合の一般論が、「減収がない場合の逸失利益の認定」として、平成20年の赤本(※1)に掲載されています。

※1:正式名称は「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」。日弁連交通事故相談センター東京支部発行。カバーが赤いのでこの通称に。交通事故の示談金や損害賠償金の基準に広く用いられている。

概略をご紹介しますと、公務員の場合、「民間と比べて勤務先が安定していて身分保障も手厚いため、勤務自体が可能であれば、定年までは勤務を継続できる可能性が高く、退職や転職の可能性は低いので、逸失利益を否定・減少させる事情となる」というのが一般論とされています。ただ、公務員であっても定年後の再就職は困難または不可能であるとして、後遺障害に対応する労働能力喪失率通りの喪失率を認定する裁判例が多い。
という内容です。
羽賀弁護士
赤本に掲載されている裁判例を抜粋・整理した表をお配りしていますので、ご覧ください。
14の事案がありましたが、多くの事案で、定年までの喪失率に関しては一般の方の喪失率より低く認定されているのに対して、定年後の喪失率は一般の方の喪失率通りというものが多くなる、という傾向にあります。
まとめると、定年までは、14件中12件が一般よりも低く、定年後は、14件中11件が一般と同じ喪失率となります。
羽賀弁護士
12番の事例の方は、一眼失明、一眼視力低下、神経症状、後遺障害等級1級が認定されましたが、減収が全くないんです。事故後4年間減収無しで、当時53歳の方で、それであれば大丈夫なんじゃないかっていう認定が出てしまった、ということかなと思います。今後就労できなくなるとは認められず、給与面の不利益も覚知しがたいと。ただし定年になると、それ以上の就職はできないんじゃないかということで、定年後の喪失率は100%という認定になったようです。
羽賀弁護士
公務員の方の場合こういう一般論がある、ということを前提に、今回の事例を検討して行きたいと思います。
ご相談に来られたのは、症状固定時52歳の男性の方です。市の水道局に勤務されていて、マンホールに入ったりといった現場仕事を中心にされていました。
後遺障害の内容ですが、右の脛骨腓骨を骨折されて、足関節可動域制限が生じ、足関節がほとんど動かなくなり、後遺障害等級8級の認定を受けました。
吉山弁護士
通常なら、45%の労働能力喪失率が認められますね。
羽賀弁護士
ご依頼者からの聞き取りから、今回の事案の逸失利益算定にあたってのマイナス面とプラス面を整理してみますと、公務員ということで給与の減額が4.5%程度と、ほぼ無いに等しいことと、定年は今は60歳だけれども65歳に延長される可能性があるというのが、マイナス面となります。
一方、プラス面は、係長という役職に就いていらっしゃったのが、監督職、1つ下の位らしいですけど、降格されています。ただし、仕事が十分にできないので降格してください、とご自分から申し出てということのようです。
吉山弁護士
実際問題として、現場仕事中心なら足関節可動域制限の影響は非常に大きいですね。
羽賀弁護士
そうなんです。事故後も現場には出るけれど、事故前は自分で作業をしていたのが、事故後は他の人に作業をしてもらって自分はその監視役のようなことが増えたということでした。あと、60歳以降のことに関しては、一旦定年になって、嘱託再雇用という制度になっているようなんですが、足の状態が悪いので、それはなかなか難しいんじゃないかというような状況になっているというところです。
羽賀弁護士
そういう事情を聞き取った上で、とりあえずは定年前・後を問わず、労働能力喪失率も45%で請求したところ、保険会社の主張としては、公務員の方なので、60歳の定年前までは逸失利益ゼロで、60歳以降は賃金センサスを基に45%の労働能力喪失率を認めるというかたちで、一旦回答が返ってきました。
羽賀弁護士
ただこれだと60歳までの逸失利益は全く認めないっていうことなので、先ほど出ていました、逸失利益算定にあたっての4つのプラス面、つまり
① 係長から監督職への降格
② 足関節可動域制限の仕事への影響が大
③ 現場で前の様に働けない
④ 60歳以降は嘱託で再雇用される可能性があるが、足の状態が悪いので再雇用されない見込み
を主張して、逸失利益の増額を保険会社と交渉しました。
吉山弁護士
もともと保険会社が認めてきた逸失利益はどれ位だったんですか?
羽賀弁護士
1,033万円ほどだったんですが、そこから交渉して、保険会社がどういう計算をしたのかはっきり明示してはくれなかったんですが、1,748万円まで増額しました。つまり、700万円ほど増えたということなんですけれど、実際、計算すると、実収入が約755万円の方で、12級相当の14%と、定年までの8年間のライプニッツ係数6.4632を掛けると、約683万円と、だいたい一致するくらいの数字で最終解決に至りました。
小川弁護士
最終的には、裁判例に近い形での解決になったんですね。
吉山弁護士
公務員だからっていう理由だけで、保険会社から60歳の定年までは逸失利益は無しと言って来たんですか?
羽賀弁護士
そうですね、はい。公務員なのでとの主張でした。
吉山弁護士
私も、消防士とかの公務員の方の事案を扱ったことがありますけど、ここまではっきり逸失利益無しって言われることってなかったかなって思うんですけれど。保険会社の最近のトレンドなんですかね。
羽賀弁護士
それは分からないですけど、ただ、今まで私が扱った公務員の方の事案が、ここまで高い等級の方がいなかったっていうのと、あとは、やめられたっていう方ばっかりだったんです。公務員をやめてしまったので、喪失率一般通り認めますというパターンで、後遺障害等級が高いけれども仕事は続けていた方って今までなかったですね。12級の方で仕事は続けていた方はいらっしゃいましたけど、そのときは喪失率14%で、喪失期間は制限しないというものでした。
吉山弁護士
この、最初は逸失利益認めないっていうところから最終の示談内容まで、分析するとほぼ定年までの期間のライプニッツ係数で。でも14%なのか。
山本弁護士
公務員の減収の件は、私も高次脳機能障害で一度担当したことがあって、そのときには公務員だから減収という話にはならなくて、認定が重すぎるから1つ下の高次脳機能障害の等級を前提に補償するという提案が保険会社からあり、逸失利益が否定されるよりは有利と判断して和解した事案があります。
羽賀弁護士
実際にも減収はなかった?
山本弁護士
ないです。
中学校だったかの教師の方なんですが、等級が認定通りなら、たぶん仕事ができないはずなのに、ちゃんとやってはりましたので、裁判したら確実に負けますから。ご依頼者には、裁判やったら0になる可能性高いですよって言って、和解を成立させたことがあります。
小川弁護士
高次脳機能障害とか、あいまいですよね。
吉山弁護士
羽賀先生がまとめてくれた一覧表だと、定年までの喪失率0っての結構ありますよね。
羽賀弁護士
そうですね、はい。ゼロっていう事案もいくつか出てますね。
小川弁護士
実際の減収がないとやっぱり逸失利益が0になったりするんですね。減収にならないんですよね、公務員て。
羽賀弁護士
ないんでしょうね、おそらく。この方も、自分から降格してくださいと申し出ていなければ、たぶん事故以前のままの待遇だったと思いますね。

「みお」のまとめ

公務員の方は一般的に、在職中に交通事故で後遺障害を負われても、減収がほとんどないことが多いので、逸失利益の算定は一般的なルールを当てはめにくくなっています。保険会社によっては、公務員というだけでいきなり逸失利益ゼロと言われてしまう場合もありますが、被害者それぞれの方の状況に合わせた増額方法が考えられますので、あきらめてしまわず、経験豊富な弁護士に相談してみてください。

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