事例研究
Vol.77
膝の不安定性の後遺障害が認められた事例
事例の概要
バイク乗車中に四輪車との事故で脛骨高原骨折の怪我をし、膝が不安定になったため後遺障害を申請したものの、当初の申請では痛みについてのみ12級13号が認定されました。そこで、追加検査を行って異議申立をした結果、膝の不安定性の後遺障害も認められました。
議題内容
議題内容
・後遺障害診断書の内容と等級申請の結果
・検査の追加と異議申立までの経緯と再認定の結果
参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、石田弁護士、西村弁護士、原口弁護士、青井弁護士

羽賀弁護士
今回は、膝の不安定性の後遺障害が残って、それが等級として認定された事例を紹介します。 事故の概要を紹介しますと、事故の発生が2021年の10月で、被害者の方は70才くらいの女性です。ご依頼者がバイクで交差点を直進中に、相手方が四輪車で向こう側から右折してきた右直の事故です。

羽賀弁護士
怪我は左脛骨高原骨折、簡単に言うと膝の辺りの骨折で入院されました。 入院期間は約5ヵ月と長く、退院後も9ヵ月ほど治療を続け、症状固定が近くなり後遺障害の申請が必要ということで、2022年の12月に相談に来られ、受任しました。

羽賀弁護士
その後症状固定したのは2023年の4月で、主治医の先生に後遺障害診断書を書いていただきました。後遺障害診断書は資料に付けています。診断書の記載ですが、傷病名は左脛骨高原骨折です。自覚症状は、「左膝痛」です。外側軟部組織(側副靱帯含めて)の不安定性があるとの記載もあります。

羽賀弁護士
それ以外に足の短縮という記載もあるのですが、ほとんど左右差がなく、特段足の長さについての記載はありませんでした。 膝関節の可動域については、他動値では右と左がほとんど同じで、左の方が5度だけ悪く、自動値は30度の差があります。他動値では後遺障害に該当しないし、自動値でも微妙に足りないので、可動域制限は後遺障害の対象にならず、認定されるとしたら、膝の痛みと膝の不安定性の部分だろうという予測の下に、後遺障害等級の申請をしました。

羽賀弁護士
8月に申請しましたが、時間がかかり、認定されたのは2024年の1月です。時間がかかった理由ですが、自賠責調査事務所の方で画像がなかなか揃わなかったのと、膝の不安定性に対しての病院に照会をかけていたということのようです。その結果出た一度目の認定結果は、12級13号に該当するというものでした。

羽賀弁護士
認定の内容ですが、左膝の痛みについては、関節面に不整があるということで、12級13号が認定されました。一方、不安定性については、①画像上靱帯損傷はない、②筋萎縮等の所見が認められない、③徒手検査の施行が窺われない、という3つの理由から、客観的所見に乏しいということで、後遺障害に該当しないという判断をされました。

羽賀弁護士
以上の判断を受けて、異議申立をするかどうか検討したんですが、①の画像上靱帯損傷が認められないという点は、MRIの画像で靱帯損傷の箇所があるかどうか明らかにする必要があります。そこで、ご依頼者から主治医の先生に確認してもらったんですが、先生は、靱帯は切れているわけではなくて伸びているので、MRIには明確に映りにくいというご意見でした。その代わりに③に関連して、膝のストレスレントゲンを撮影してもらいました。

伊藤弁護士
普通のレントゲン撮影ではないのですね?

羽賀弁護士
はい。靱帯が損傷していることが分かるように、右膝左膝それぞれについて、ふくらはぎの部分を手で掴んで、前方にどれだけ動くかを撮影します。膝の不安定性が問題となる事例では、この検査が重要になります。

羽賀弁護士
比べる必要があるのは、Ⅰと書いてある画像とⅢと書いてある画像で、Ⅰが左膝、Ⅲが右膝のものです。膝の不安定性の程度からあまり分かりやすい画像ではないかもしれませんが、よく見ると、左膝の方は前方に出てしまうが、右の方はそこまで動かない、という比較ができます。

倉田弁護士
左膝がグラグラしているということですね。

羽賀弁護士
そういうことです。この画像を付けて異議申立を行いました。異議申立の理由として、右と左の膝を比較すると左の方がだいぶ前方に動いてしまうので、側副靱帯が損傷して膝が不安定になっているということが分かるということを記載しました。

羽賀弁護士
その結果、膝の不安定性について12級7号の後遺障害等級が認定されました。認定の理由は、①画像上は明らかな靱帯断裂はないものの、②骨折後の関節面に不整があり、③徒手検査画像(ストレスレントゲンの画像)から左膝関節の不安定性が認められるというものでした。ただし、具体的な等級をどうするかという点では、初診時には靭帯損傷を示唆する所見はなく、画像上も確かに靱帯断裂は窺われないということと、ストレスレントゲン画像を見て、そこまで左右差はないという点が考慮された結果、12級7号の認定になりました。12級という後遺障害は同じであったため、自賠責からの追加支払いはありませんが、後遺障害等級の中身が変化したことになります。

羽賀弁護士
12級が変わらないのであればあまりメリットがなかったのかというと、そういうわけではありません。膝の不安定性が後遺障害と認定されたため、依頼者の方は示談交渉に手続きを進める決断ができました。また、示談交渉を進めるに当たって、労働能力喪失期間の認定が、痛みの12級より有利になりやすい点もメリットと言えます。

羽賀弁護士
膝の不安定性だけを争うという案件は、あまりない印象があります。一番の理由は、おそらく膝の可動域で後遺障害等級が認定されて、不安定性でそれを超える後遺障害等級が認定されることが少ないためと思います。ただ、今回は、可動域では後遺障害が認定されないため、不安定性を主張し認定された事案として紹介しました。

吉山弁護士
示談交渉はどのようになっていますか?

羽賀弁護士
すでに示談はまとまっています。入通院慰謝料は、治療期間が長期に及んだことを踏まえて288万円、後遺障害慰謝料は12級相当の280万円、休業損害は主婦休損として約300万円、後遺障害逸失利益は平均余命の2分の1の9年の労働能力喪失期間で約348万円、過失相殺などを踏まえて最終的に1000万円を超える金額で解決しました。
「みお」のまとめ

膝の不安定性について後遺障害等級が認定され、その後示談で解決した事案を紹介しました。膝の不安定性は、その程度に応じて12級・10級・8級の後遺障害が認定される可能性があります。本件は12級の後遺障害が認定され、その後、1000万円を超える金額で示談が成立しました。膝の不安定性が後遺障害として認定されない場合でも、膝の可動域制限があればその部分で後遺障害が認定され、高額示談になることもあります。脛骨の高原骨折等で膝に後遺障害が残りそうだという方は、後遺障害の申請・示談交渉について、みお綜合法律事務所にご相談いただければと思います。
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