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弁護士による交通事故研究会

裁判例研究
Vol.44

重度後遺障害における後遺障害慰謝料と近親者慰謝料

本件の担当
羽賀弁護士

2021年06月22日

事例の概要

重度の後遺障害が残った場合の被害者への慰謝料と、これとは別に、介護に当たる近親者に支払われる慰謝料などについて、判例や「みお」の解決事例をもとに検討しました。

議題内容

「重度後遺障害における後遺障害慰謝料と近親者慰謝料」について

議題内容

・判例における被害者本人への慰謝料と近親者に対する慰謝料

・近親者慰謝料について、当事務所における事例の検証

参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士 、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、石田弁護士、西村弁護士
羽賀弁護士
今回は「重度後遺障害における後遺障害慰謝料と、近親者に対する慰謝料」というテーマでお話ししたいと思います。
文献に掲載された裁判例と当事務所での解決事例から、慰謝料認定の傾向を見ていきます。
羽賀弁護士
まず、緑の本の大阪地裁基準では、原則として、後遺障害慰謝料には「介護に当たる近親者の慰謝料を含む」としつつ、重度の後遺障害については別途近親者慰謝料を認めることがあるという記載になっています。
金額については、近親者と被害者の関係、今後の介護の状況、被害者本人に認められた慰謝料等を考慮して定めるという基準になっています。
ただし、後遺障害等級が何級なら近親者慰謝料が認められるのか、金額はどれぐらいなのか、といった、具体的な記載はありません。
羽賀弁護士
次に、赤い本の方を見てみると、こちらはもっと簡略で、「重度の後遺障害の場合には、近親者にも別途慰謝料請求権が認められる」というだけで、どのような要素を考慮するかの記載もありません。
羽賀弁護士
算定基準の本にはこのように簡単な記載しかありませんが、赤い本の2016年版には、重度後遺障害である1級・2級で判決に至った事例について、後遺障害慰謝料がどれぐらい認められているか、また近親者慰謝料がどの程度認められているのかということが掲載されています。
まず、後遺障害等級1級の場合ですが、裁判例としては75件ありました。
基準は2,800万円ですが、後遺障害慰謝料と近親者慰謝料を合算して、基準より高いのが49件、低いのが7件、基準通りが19件でした。
近親者慰謝料が加算される案件がそれなりにあるので、実際には、合計額では基準より高い額が認定されている事例が多い傾向で、平均値としては、3,050万円程度になっています。
羽賀弁護士
全体の傾向として、近親者慰謝料という名目が明示されているかどうかは事案によりますが、後遺障害慰謝料+近親者慰謝料で2,800万円を超える金額を認定している事案が多く、約65%になります。
羽賀弁護士
2,800万円を超える慰謝料を認定した事案の超過額は平均約400万円です。上限はいくらかということになると、3,400万円台なら結構ありますが3,500万円台までいく事例はほとんどなくなりますので、だいたい基準額プラス600万円位が上限なのかなというイメージですね。紹介した事例は、裁判になり、さらに判決に至った事案に限定されますので、示談等では傾向が異なる可能性があります。
羽賀弁護士
次に後遺障害等級2級の事例です。赤い本の裁判例は45件ありました。
基準値が緑の本と赤い本でそれぞれ2,400万円と2,370万円と若干違うので、比較が難しい部分もあるんですが、基準より高いのが19件、基準通りが19件、低いのが7件となっています。
これを単純に平均すると、2,480万円になり、基準値の2,370万円や2,400万円よりちょっとだけ高いという感じです。
基準を超える事案が多いか、基準を超えない事案が多いかというと、認定の傾向としては1級とは逆転しています。近親者慰謝料などを考慮して、基準を超える慰謝料が認定された事案は42%なので、半分はいきません。
羽賀弁護士
2,400万円を超える事案では、300万円前後超過している事案が多いです。加算額は400万円位が上限に近いようで、それ以上になるとなかなか難しくなります。
吉山弁護士
そもそも、近親者慰謝料の基準がないというのは、どうなんでしょうね。
羽賀弁護士
はい、そのことは赤い本でも指摘がありました。近親者慰謝料を基準化する必要があるかどうか、今後は、そこら辺も含めた検討が必要だということです。
羽賀弁護士
次に、実際に私が担当した事例を取り上げて検討していきたいと思います。
お配りした8件の事例の資料では、後遺障害等級1級が6件、2級が2件です。
1例目のTさん(27歳)は600万円の近親者慰謝料が認められました。脊髄損傷の1級の方で、近親者に当たる方はご両親で、自宅介護です。
後遺障害1級で、ご両親が自宅で介護するとなると介護の負担は重くなりますので、保険会社も受け入れてくれたのかなと思います。
羽賀弁護士
2例目のKさん(25歳)は、裁判上和解で、近親者慰謝料は500万円です。
ただ、この事案では、信号無視や無免許運転など、慰謝料の加算事由がいくつかあったので、実質は500万円より低いと言えます。
倉田弁護士
1級で、近親者慰謝料が認められてない方が3名おられますね。
羽賀弁護士
はい。まずMさん(42歳)ですが、近親者慰謝料を認めないというのが保険会社の回答です。
この方は高次脳機能障害1級の認定を受けておられ、かつ妻と子供2人という家族構成で、一家の支柱に当たる方ではあるんです。しかし、保険会社としては近親者慰謝料は認められないと。理由は明確になっていないんですが、示談の時点では入院中で、自宅介護まではされてないことや、介護体制が決まってないことなどが影響しているのではないかと思います。
羽賀弁護士
もう1人のIさん(22歳)ですが、この事案でも保険会社は近親者慰謝料を否定しました。脊髄損傷1級で、ご両親など近親者による自宅介護を受けておられます。条件としては最初にご紹介したTさんと大体同じで、年齢も22歳と若い方ですが、保険会社は認めないと。
保険会社からの書面には、搭乗者傷害保険から約900万円が出ている点を考慮して欲しいとの記載がありました。
羽賀弁護士
3人目のHさん(63歳)も、高次脳機能障害1級ですが認定しませんというのが保険会社の回答です。
自宅介護ではなく施設介護であること、同居の方はおられましたが40歳代の子でほぼ独立した状態であったことから、保険会社としても認定が難しかったのかもしれません。
加藤弁護士
資料のFさん(34歳)は、等級としては1級ですが、中身は高次脳機能障害3級と、顔面醜状7級を合わせた併合1級ですから、普通は近親者慰謝料が出づらい事案ではないかなと思いますが?
羽賀弁護士
ええ。ただ、この方は一家の支柱に当たる方ですし、ご自宅にいらっしゃるということで奥さんが相当苦労されているという事情もあって、保険会社側も遅延損害金はつけない代わりに、ここで調整したというようなことだったと思います。
澤田弁護士
近親者慰謝料が、全体のいわば調整弁になっているみたいなところがありますね。
羽賀弁護士
そうですね、全体の示談額・賠償額が低くなってしまう場合の調整にも使うことはあると思います。
羽賀弁護士
次は高次脳機能障害2級の方の事案2件について。
大阪市にお住いのTさん(71歳)には300万円が認定されましたが、一方のOさん(84歳)は認められませんでした。
条件的には、どちらも比較的高齢で、近親者に当たる方は、同居されている奥さんと別居されているお子さんがおられ、介護は自宅ではなく、施設なり入院なりという、同じような状況でしたが、結論は分かれました。
羽賀弁護士
先程、吉山先生のご指摘にもありましたが、そもそも、近親者慰謝料の算定基準自体が明確ではないんですね。なので、どういう場合に、いくらくらい近親者慰謝料が認められるのかがわかりにくいという問題があります。
交渉していても保険会社の担当者によって言うことがそれぞれ違う。簡単に認める人もいれば、全然認めない人もいます。裁判でも、裁判官によって考え方が大分違います。
羽賀弁護士
私の経験でいうと、1級や2級の場合、初めに近親者慰謝料600万円位を請求してみて、認められそうだったらそのまま押していく。認められなかったら、近親者慰謝料で交渉ができるか、それ以外のところで調整ができるか…と、そんな流れでやっていることが多いですね。
私の方からは以上です。
吉山弁護士
ありがとうございました。では、皆さんから質問などあればどうぞ。
倉田弁護士
施設介護か自宅介護かで、近親者慰謝料は変わってきますか?
羽賀弁護士
変わりますね。緑の本に考慮要素として「今後の介護状況」とあげられていますが、基本的には自宅介護のほうが認められやすい印象です。
倉田弁護士
自宅介護の場合は介護費用も高くつくし、近親者慰謝料が認められやすいということなんでしょうか?
羽賀弁護士
そうですね、自宅介護のほうが介護費用も近親者慰謝料も出やすくなると思います。ご苦労がそれだけ大きくなることを考えてのことでしょう。
吉山弁護士
家族に重度の後遺障害が残ったことに対する近親者への慰謝料的な側面と、こういう状態になってしまった家族をずっと介護していかなきゃいけないとか、後遺障害を抱えた家族と今後も一緒に居なきゃいけないとか、近親者にとってのそういう精神的な苦痛に対する慰謝料的な側面とがあると思います。恐らく後者の方がニュアンスとしては重視されているんじゃないでしょうか。

「みお」のまとめ

被害者の方に後遺障害等級1級・2級といった重度の後遺障害が残った場合、後遺障害慰謝料以外に、介護をする近親者への慰謝料が認められる場合があります。個別の事情がからむだけに金額に大きな差があり、場合によって600万円程度の金額が認められるケースもあれば、ゼロの場合もあります。
特に重度の後遺障害の場合、介護問題は、ご本人とご家族の一生に関わることですので、後遺障害等級の認定も含め、賠償金請求は専門的な知識と経験を持つ弁護士に相談されることをお勧めします。

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