事例研究
Vol.47
主婦の休業損害の認定傾向
事例の概要
後遺障害等級14級と非該当の主婦の方の示談交渉における休業損害ついて。
議題内容
主婦の方が交通事故に遭い、家事に影響が出た場合、休業損害額はどのように計算されるのか。通院の期間・日数と認定された休業日数との相関関係について、当事務所の解決事例を分析、検討しました。
議題内容
・主婦の方の通院期間および通院回数と、休業日数との相関関係
・休業期間の証明・交渉について
参加メンバー
澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、羽賀弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、西村弁護士、石田弁護士

羽賀弁護士
今回のテーマは、「主婦の休業損害の認定傾向」です。過去の事例の集計結果を分析、検討していきたいと思います。お配りした集計資料は2つあります。1つは14級の後遺障害認定を受けた方、もう1つは非該当の方の集計資料です。それぞれ通院期間・通院回数と休業損害日数、および実際の示談額を一覧にしています。
14級のデータは、骨折部位について14級が認定された方を除いていて、基本的にむち打ちで14級の認定を受けられた方を対象にしています。ただし、腱板損傷や軟部組織の損傷などの傷害があり、最終的に14級が認められたという方は含まれています。

羽賀弁護士
まず通院期間と休業日数との関係について見ていきます。事案によってバラツキが大きいですが、通院期間が長い方が、認定される休業日数がゆるやかに増える傾向があります。14級が認定された方の場合、基本的に180日以上の期間、通院されています。通院期間が180日から240日までという、14級が認定された中では比較的短い期間の方の事例が19件あります。これらの方々について、示談交渉で認定された休業日数の平均は75日程度になっています。ただ、個々の認定日数は30日から140日までバラバラです。そのため、示談交渉開始時点で見通しを立てるのは難しいかもしれません。

羽賀弁護士
同じく14級が認定された方で通院期間が比較的長く、240日以上通院されていた方の事案は19件あります。平均値を取ってみると、通院期間341日に対して休業日数が100日ほどです。ただ、認められた休業日数は30日から200日まであり、こちらも事案によってバラバラです。

羽賀弁護士
次に、通院回数と休業日数との関係ですが、これもある程度は相関しているのかなと思います。この2点の関係を表したグラフをお配りしていますが、かなりバラツキはあるものの、全体的な傾向としては、通院回数に応じて少しずつ右肩上がりになっていくかなという感じです。

羽賀弁護士
休業日数がどのように認定されるかは、どういうケガを負い、その結果家事にどういう支障が生じたかとか、通院に時間を取られることによって家事ができなくなったというような点を考慮した上で、最終的に決められると考えていいと思います。ただし、実際には、同じように見える事案でも、結論は全く違う場合があるのが実情です。

羽賀弁護士
もうひとついえるのは、14級が認定された方では、休業損害が30日以上認定されていることです。ただし、あくまで今回集計の範囲ではということになりますので、事案によって異なることはあり得ると思います。30日というと短いように聞こえるかも知れませんが、むち打ち14級で30日以上休業されるのは、タクシー運転手など、乗客の生命にかかわる仕事をされている方等がほとんどです。一般の会社員で30日休業している方はあまりいません。そのため、主婦の方は、会社員より休業損害が出やすいと言えると思います。

羽賀弁護士
さらに、非該当の方も集計しました。対象者は38人おられます。集計の方法は14級の場合と同じです。平均値を見ると、通院期間が180日、通院日数が66日、休業損害の平均が50日程度となっています。通院期間との比率で考えると、やはり14級の方よりやや低くなっています。

羽賀弁護士
数回通院して完治したというような事案を除き、例えば3か月以上通院したという場合は、概ね30日以上の休業期間が認定されていることが多いと言えます。ただし、通院期間がある程度あっても、通院回数が極端に少ないとかの事情があると、休業損害の認定が短くなっている事案があります。

羽賀弁護士
以上、主婦の方の休業損害の目安について紹介しました。主婦の方からの相談の際に参考にしていただければと思います。

吉山弁護士
全体的な傾向としては、やはり通院期間が長くなれば休業日数も増えるということで、ある程度の相関性があるといえそうですね。ただ、この集計を見てもバラツキがあって、通院期間が300日ぐらいで、休業日数は半分以上と高い割合で認められていたり、反対に1年通院して、通院回数が300回ぐらいあっても休業日数は60日ほどに抑えられている事案もあります。こういう突出して高かったり低かったりする事案に関しては、何か特徴的な要素ってあるんですか?

羽賀弁護士
最も大きいのは被害者の方の症状の軽重ですね。相談に来られた際の印象や喋り方からでも症状の重さが感じ取れるような方は、休業日数の認定が大きくなる傾向はあります。ただ、症状が重そうであるのに、休業日数の認定が小さくなっている事案もあり、保険会社・担当者次第の面は大きいです。

吉山弁護士
同じむち打ちでも、症状の重い軽いによって休業日数に差が生じてくることがあるということですか。

羽賀弁護士
症状の度合いは多少影響あると思います。

田村弁護士
主婦の被害者の中には、むち打ち程度では休業損害が認められないのではと思う方もいらっしゃるかも知れませんが、休業損害は基本的に認められるということですね。

羽賀弁護士
どれくらいの休業損害が認められるかはばらつきが多いですが、休業損害自体は認められます。

吉山弁護士
サラリーマンの場合、休業損害証明書で基本となる収入と休業日数が明確にわかります。しかし、主婦の方の場合、何日休んだかは明確ではないと思います。示談を提案するに当たっては、通院期間を休業日数とするのか、通院回数を休業日数をするのか等、休業日数をカウントする場合どうされてますか?

羽賀弁護士
最近は通院期間の何割という感じで請求することが多いです。通院期間全体にすると、さすがにそれは認定されないだろうということで、多少減らして提案することが多いですね。

吉山弁護士
それに対して、保険会社から日数を減らしてほしいと言われた場合はどうするんですか。

羽賀弁護士
他の案件と比較するなどして、できるだけ日数を増やしてもらえるよう交渉します。主婦の方の休業日数は、実情より高めに認定されている場合も多いので、示談金は大きくなりやすい傾向があると思います。

小川弁護士
専業主婦だと、現金収入がないから休業損害や逸失利益を認めてもらえないと思っておられる方が、まだまだいらっしゃいますね。保険会社も、被害者の方に示談金額を提案する際は、主婦としての休業損害を考慮していない場合があります。

羽賀弁護士
家事労働は実際にはお金は動きませんが、外注すれば費用が発生します。そういう点から、家事労働に影響が出れば休業損害や逸失利益が認められます。

田村弁護士
集計の中で、通院回数と休業損害日数との関係で、通院回数に対する割合が20%台の人がおられますが、20%台って少なめな気がするんですが。

羽賀弁護士
確かに20%台の方がいらっしゃいますね。このうちの1名は症状が重い方です。一方、おそらく症状はそれほど重くないものの、保険会社から止められることもなかったため、長期間治療が続いたというケースもあります。このように、主婦の方の場合、症状が重いのに休業損害があまり認められなかったり、逆に症状が軽くても休業損害の認定が大きく認定されていることがあります。
「みお」のまとめ

休業損害証明書で休業状況が証明できるサラリーマンと違って、主婦の場合は家事労働の実態が掴みにくいため、休業損害額の認定が難しくなります。保険会社は、被害者の方自身と話をする場合は、そもそも主婦としての休業損害を反映していなかったり、休業損害を認めるとしても低く抑えていることが多いと言えます。今回の勉強会では、明確な基準がない主婦休損について、基準をある程度明らかにすることができました。
主婦の方も、保険会社のいうことを鵜呑みにされず、一度「みお」の弁護士にご相談いただければと思います。
主婦の方も、保険会社のいうことを鵜呑みにされず、一度「みお」の弁護士にご相談いただければと思います。
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