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弁護士による交通事故研究会

事例研究
Vol.40

骨折後の関節可動域制限の後遺障害認定について

本件の担当
羽賀弁護士

2020年11月25日

事例の概要

関節の可動域制限で後遺障害申請をしたが、認定されなかった事例。

議題内容

骨折後の関節可動域制限の後遺障害申請否定理由

議題内容

・後遺障害等級認定請求への自賠責保険会社の回答3例の比較。

・被害者の症状と検査画像の検証。

・最近の関節可動域の後遺障害等級認定の傾向。

参加メンバー
羽賀弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、石田弁護士、松弁護士
羽賀弁護士
今回は、骨折後の関節可動域制限の後遺障害認定についてお話しします。
事例としてご紹介する、Sさん、Aさん、Oさんは、それぞれ交通事故で骨折されて、関節の可動域制限が残ったけれど、3人共、関節可動域について後遺障害認定が受けられませんでした。
羽賀弁護士
順番にご説明していきますと、Sさんは左大腿骨転子下骨折で、症状固定後に、股関節の可動域制限と下肢短縮が残ったということで、後遺障害診断書が出ています。
羽賀弁護士
Sさんは症状固定頃に相談に来られましたので、後遺障害等級の申請をしましたが、股関節の可動域制限は否定され、下肢短縮だけ13級が認められるという結果になりました。
小川弁護士
股関節の可動域制限が否定された理由はどういうものですか。
羽賀弁護士
認定票によれば、「骨癒合が得られ、関節面の不整が無い」というのと、「骨折の部位(股関節からやや離れている)を勘案すると、高度な可動域制限の原因となる客観的所見に乏しい」という理由でした。
羽賀弁護士
この認定を受けて、画像データを精査しました。
まず、これが事故直後のレントゲン画像です。
山本弁護士
大腿骨がスパンと斜めに割れているようですね。
羽賀弁護士
こちらのCT画像の方がもっと分かりやすいと思います。完全に割れている状態ですね。これだけ割れていますので、手術でボルトを入れて固定しました。
術後の経過をCT画像でご覧いただきますと、事故から1ヶ月ちょっとの2月1日のCT画像でも、手術はしたけれど、まだ完全にはくっついていないのがわかります。
吉山弁護士
一部はまだ割れたような状態に見えますね。
羽賀弁護士
さらに追って行きますと、3月もおそらくまだくっついていない。4月に仮の骨がようやく形成されてきて、6月頃になると大体くっついてるのかなという状態です。
そこからは、CTを撮る回数が減った様で、この11月の映像では、確かに、骨は綺麗にくっついているように見えます。
吉山弁護士
最近の自賠責保険の認定では、骨の癒合が綺麗に得られていて、不整が認められないとなると、後遺障害の可動域制限を否定するというパターンが結構ありますが、この事案はそのパターンにはまってしまっていると言えますね。
羽賀弁護士
Sさんの骨折部位が、股関節から少し離れている点も指摘されていて、股関節への影響は不明だということも、否定理由の1つになったと思われます。
吉山弁護士
異議申し立てはしなかったんですか?
羽賀弁護士
しませんでした。認められる可能性もあるとは思ったんですが、ご依頼者のSさんが、認められる可能性と時間や手間を考えて、希望されませんでした。
羽賀弁護士
2件目はAさんの事案です。後遺障害診断書では、左足関節の顆部骨折、脛骨顆間隆起骨折(けいこつかかんりゅうきこっせつ)ということです。Aさんはこの怪我で、足関節の可動域制限が生じ、可動域角度が右90度に対して左40度なので、10級の対象になり得ると判断して、後遺障害の申請をしました。
羽賀弁護士
ところが、返ってきた結果は、「左足関節の機能障害については、画像所見の通り、骨折部の骨癒合は得られ、関節面も明らかな不整も認められないことからすれば、後遺障害診断書に記載されている高度な可動域制限を生じるものとは捉え難く」ということで、関節可動域制限は非該当ということでした。
倉田弁護士
Sさんと同じパターンですね。
羽賀弁護士
そこで、Aさんの画像も再確認をしました。
レントゲンの画像は、ご覧の様に左足の脛骨が割れている状態です。この7月10日の脛骨のCT画像で見るとより分かりやすいんですが、脛骨の部分が割れてしまっています。こちらの腓骨のCTは先端がいくつにも割れて、バラバラになっているような状態です。それで手術も受けられているので、病状としては非常に重い、しかも関節に近い所の骨折である点が重要です。
倉田弁護士
それほど重症で、関節に近い部位でも否定されたんですか。
羽賀弁護士
ただ、経過を見て行くと、治りは結構早いですね。先程の7月10日の脛骨の方のCT画像と比べても、手術をされたので、17日にはだいぶガチッとくっついていて、バラバラになった腓骨の方もかなり固定している。7月26日とか8月30日の画像では結構くっついている状態ですから、意外と治りが早いんです。
こういうところも踏まえて、後遺障害が否定されたと思われます。
倉田弁護士
こちらの方は異議申し立てをされたんでしょうか
羽賀弁護士
はい。Aさんに可動域制限が生じた理由として、骨自体は綺麗にくっついているけれど、33日間、シーネ(副木)とかシャーレ(背面のみのギブス)で足関節を固定されていたという経過があって、それを外した時からもう殆ど動かない状態になってしまっていました。なので、こちらとしては、①関節内の骨折である、②骨折の状態が非常に重症である、③固定期間が長い、という3点を主張して異議申し立てを行いましたが、この異議申し立ても通りませんでした。
田村弁護士
理由はどのようなものでしたか。
羽賀弁護士
異議申し立て後に新たに追加された理由として、「治療途中の足関節の可動域が、症状固定時よりも良好な数値が得られていることが認められる」という点と、元から記載のあった、「骨癒合が良好で明らかな関節の不整も認められない」という理由で、可動域制限は否定という結論になりました。
こちらの案件は、2回目の異議申立はせず、示談交渉に入るところです。
羽賀弁護士
最後にOさんの案件ですが、Oさんは右橈骨頭(とうこつとう)骨折です。
吉山弁護士
右肘あたりの骨折ですね。
羽賀弁護士
そうです。こちらの方はレントゲンやCT画像上、右橈骨頭(とうこつとう)骨折があるということでお医者さんの診断書が出ていて、肘関節の可動域の測定値が、右が85度、左が150度なので、これは12級の対象になるだろうと判断して、後遺障害の申請をしました。
羽賀弁護士
ところが、こちらの件も否定ということで、理由は、先の2件と全く同じ感じでした。「前記画像所見の通り、骨癒合は良好に得られており、提出の診断書等から神経損傷と認められないことから、関節可動域制限の原因となる客観的所見に乏しい」という理由付けが出ています。
羽賀弁護士
こういう結果が出てしまったので、画像の方を確認しました。
Oさんの7月28日のレントゲン画像を2枚用意しましたのでご覧ください。
山本弁護士
どこが骨折しているのか、よくわかりませんね。
羽賀弁護士
そうなんです。次の画像は3DのCT画像なんですが、これで見て頂いても多分、あまりわからない。で、もう1枚別の分ですが、これはCTの一部を画像で打ち出しました。骨が2つ映っていますが、左上の方の骨の、右上の所が、少し遊離しているのが、恐らく見て頂けると思います。
羽賀弁護士
あと、こちらのCT画像で言うと、これも一番左上の骨の上の方が、少しだけ亀裂が入っているように見えるのと、最後のこのCT画像でも、左側の骨の上の方に、細く亀裂が入っています。骨折の程度としては恐らくこの3名の方の中で、一番軽く、手術もされていません。ただ、関節にほぼ近いところの骨折です。
しかし綺麗に治ってしまっているので、その部分で否定されています。
羽賀弁護士
恐らくこの方の場合も可動域制限が生じた理由は、何日間かは不明なんですが、シーネで固定されていたという記録がありましたので、それが原因ではないかということで、医療照会を掛けて、異議申し立てをする予定にしています。
羽賀弁護士
今回はいずれも認定を否定された事例ばかりなんですが、要は骨折後に関節可動域制限が生じたとしても、骨折の程度とか、治り具合とか、治療中の固定状況、可動域の途中経過等を踏まえて、否定される事案が結構増えている様な気がします。ですから、可動域制限ということでご相談を受けたとしても、後遺障害等級が出ます、とは簡単には言い辛い状況になっているのかな、ということで、ご相談の時にはご注意頂ければと思います。
吉山弁護士
ありがとうございました。
羽賀先生が言われた様に、骨折後に可動域制限が残ったとして、それが必ずしも等級の認定に繋がるかどうか読めないところがあるので、私もご相談を受けた時は、否定される可能性はありますと、お伝えするようにしています。皆さんも気をつけて頂ければと思います。
吉山弁護士
骨の癒合状態が良かったとしても、拘縮(こうしゅく)が原因で可動域制限になった場合、それは後遺障害と認められるという前提でよろしいですか?
羽賀弁護士
認められるんですが、拘縮が原因と思われる場合は、後遺障害として否定されやすい傾向があります。

「みお」のまとめ

関節の可動域制限は、よくある後遺障害のひとつですが、等級認定には、可動域が一定以上制限されていることが必須です。しかし最近は、骨折の状態・固定の有無・治療中の可動域・骨の癒合状態等も考慮されることが多く、必要十分な測定数値が出ていても、等級認定がされない例が増えています。認定が出ないのはやむを得ないこともありますが、やむを得ないか、再度申請をすべきか的確に判断するのは難しいと思います。
弁護士に依頼すれば、その判断も弁護士に任せることができますので、骨折後の可動域制限について、後遺障害申請をする前に、一度交通事故に強い「みお綜合法律事務所(大阪・京都・神戸)」に相談されることをお勧めします。

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