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弁護士による交通事故研究会

裁判例研究
Vol.12

給与所得者の休業損害を算定する上での問題点

本件の担当
石田弁護士

2018年07月07日

事例の概要

交通事故の賠償金を請求するにあたっての給与所得者の休業損害の計算方法と、状況別の休業損害の算定方法を検証しています。

議題内容

  • 一般的な給与所得者の休業損害の算定方法について
  • 算定の土台となる基礎収入の考え方別の4パターンの算定方法について
  • 年次有給休暇を使用した場合の日額算定方法について
議題内容
  • 日常業務で使用する算定方法はどのパターンが妥当か。
  • 保険会社の算定方法の問題点と、反論方法について。
参加メンバー
澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、羽賀弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、大畑弁護士、北名弁護士
石田弁護士
赤い本(※注1)に掲載されている論文「給与所得者の休業損害を算定する上での問題点」のポイント部分を簡単にご紹介したいと思います。
※注1:正式名称は「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」。日弁連交通事故相談センター東京支部発行。カバーが赤いのでこの通称に。交通事故の示談金や損害賠償金の基準に広く用いられている。

主に、一般的な給与所得者の休業損害の算定について、少し深掘りされている内容になっています。
石田弁護士
最初のテーマは「給与所得者の休業損害算定における収入日額の算定方法」です。
普段あまり意識せずに計算されることが多いかもしれませんが、まず最初に、「給与所得者の休業損害の算定方法」として、どういう計算をするか、場合分けして2つのパターンに整理されています。
1つ目は、「休業により現実に生じた喪失額を算定する方法」。これは普段、実際に使うことはあまりありませんね。
2つ目は、「事故前の収入日額等の基礎収入に休業期間を乗じて算定する方法」。こちらが一般的に使われているのではないかと思います。
石田弁護士
この2つ目の方法を、算定のベースとなる基礎収入の考え方でさらに分類すると、4つのパターンになります。
パターン①は、休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入として、休日を含む休業期間を乗じる方法。
パターン②は、休日を含まない実労働日1日当たりの平均額を基礎収入として、実際に休業した日数を乗じる方法。
パターン③は、休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入として、実際に休業した日数を乗じる方法。
パターン④は、休日を含まない実労働日1日当たりの平均額を基礎収入として、休日を含
む休業期間を乗じる方法。
このパターン④ですが、休日を含まない実労働日1日当たりの平均額を基礎収入とした上で、さらに休日を含んだ休業期間を乗じてしまうと、結果的に金額が大きくなり過ぎて、不当請求になりますので、これは不適切ではないかと述べられています。
石田弁護士
一般的には、①か②で考えるのが論理的かな、と思いますが、③の方法が使える場合もあります、と説明されています。一見すると、③の方法だと金額が少なくなってしまいますが、例えば、給与損害証明書を出せないといったときなど、使える場合があるとのことです。
石田弁護士
まず、給与所得者が継続して完全休業する場合ですね。
長期間休業しているということであれば、①の休日を含んだ期間の平均日額を基礎収入とするパターンでも、実労働日の平均額を基礎収入として考える②のパターンでも大きな違いは出ないだろうということで、①②どちらの方法を使ってもいいのではないか、という見解です。
石田弁護士
次は、給与所得者が就労しながら一定の頻度で通院をしている場合です。
一般的な給与所得者、たとえば正社員などの場合は、一般的な計算方法としては、パターン②の、休日を含まない実労働日の平均額を基礎収入にして、実際に休業した日数をかける、という方法がいいのではないかと説明されています。
その理由は、一般的な給与所得者であれば、労働契約上の就労日や労働時間が定められており、実際の労働時間に応じた金額の給与が支払われる場合が多いため、実労働日1日あたりの平均給与額の算定が可能で、かつ、労働契約上就労すべき日も明らかであるから、ということで、つまり、この方法が一般的ではないかということになるわけです。
石田弁護士
ただし例外として、先ほど、金額が低くなってしまうと説明したパターン③を使うことがあるのが、一般的な計算方法による請求が難しい場合などですね。
例えば、休業損害額証明書が提出できないために、証拠として、事故前の一定期間の実労働日数と、その期間に対応した給与支給額を認定できないような場合。つまり、何か理由があって証明書が出せないというような場合で、源泉徴収票だったら出せますというようなことでしたら、パターン③の方法が使われることもある、ということです。
そして、諸手当の金額や実際の労働時間等によって金額が変動するために、正確な収入日額の算定が容易でない場合も、パターン③の方法、つまり、休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入として、実際に休業した日数を乗じる方法が使えるのではないか、という考え方です。
石田弁護士
今までご紹介してきたのは、正社員など、一般的な給与所得者の話ですが、次は、日雇い労働者、いわゆるアルバイトといわれる方々についての説明です。
こういった方々でも、契約時にだいたいの勤務日が決まっているのであれば、一般の給与所得者と同じように考えて、パターン②を使えばいいのではないかという説明がされています。
そうではなくて、いつ働くかよくわからない場合。例えばシフト制で、しかも短期契約で、いったいいつ働くのか明確でない様な場合については、パターン②を使うと、算定金額がちょっと妥当ではないのではないかという疑いが出て来るので、金額は少し下がってしまいますけれど、パターン③の、休日を含んだ一定期間の平均日額を基礎収入としたうえで、実際の休業日数を掛けるという方法を使うのが良いのではないかと、説明されています。
以上が休業損害の計算において、どのような計算方法を使うかというお話しです。
石田弁護士
では次のテーマ、「年次有給休暇を使用した場合の日額算定の方法」の解説に移りたいと思います。
年次有給休暇を使った場合、赤い本で、「裁判実務や自賠責保険などでは、有給休暇を使った場合についても、一般的に休業損害として認められています」と解説されています。
石田弁護士
では、年次有給休暇使用分を休業損害と認める根拠は何か、ということですが、一般的に2つの説明がされますが、どちらが妥当かというのは、色々考え方があるようです。
ひとつは、年次有給休暇を使用しなかった場合と同様に考えないといけないという、均衡を考えたうえでのことだということです。
もうひとつは、年次有給休暇を使用する権利や利益を失ってしまったから、と説明されています。有給を使うという権利自体に財産的な価値を認めて、それを失ったことが損害だとする考え方です。結構、こちらの考え方をとる場合が多いのではないかと思います。
石田弁護士
次に、日額算定の方法についてですが、年次有給休暇を使用した日に対して支払いを受けられる金額、というふうに考えたらいいのではないかということです。
最後に、具体的な休業損害の算定方法についても、有給休暇を使わない休業と同じパターンで算定すれば、足りるのでないかというふうに説明されています。
以上です。
吉山弁護士
ありがとうございます。
一般的には、パターン①か②か、どっちかで、やるんでしょうね。
石田弁護士
保険会社は、パターン③で計算してくることはないですか。
羽賀弁護士
保険会社は③で結構言ってきて、そういう主張があれば、毎回、違いますって言いますね。
北名弁護士
そうですね、羽賀先生がおっしゃったとおり、だいたいこちらで請求すると、保険会社からパターン③で返ってくるというケースが多いですね。
あとは、③で主張があったとしても、総額で合意できるかできないかという流れになることが多いかなという気がします。
澤田弁護士
弁護士が入る前に③の計算で休業損害が支払われていることはないですか。
吉山弁護士
そうですね。
澤田弁護士
その場合は、後からなにか言われますか?
羽賀弁護士
③の計算方法で休業損害が支払われていたら、①か②で計算し直して請求をします。交渉レベルで計算のやり直しが認められる場合もありますが、認められない場合もあります。
北名弁護士
最近はよく、示談段階でパターン②で計算すると、保険会社が応じてくれることもあるような気がしています。講演が確か去年の10月頃にあって、赤本に出たんで、それ以降は、示談交渉はパターン②の計算でやって、保険会社もそれで応じてくれることも中には出てきたように思います。あと、裁判になれば、②でやってますね。裁判所もたぶんそれで認めてくれてます。

「みお」のまとめ

交通事故の損害賠償金を算定する際、給与所得者の休業損害をどのように算出するかで、金額が変わってきます。弁護士側としては、可能な限り、裁判所の基準に沿った、被害者の損害を反映する計算方法を選びますが、そこのところで、保険会社と意見が対立することもしばしばです。
給与所得者の方の休業損害は、労働日・給料・休暇などの体系が複雑にからんできますので、保険会社の説明を鵜呑みにせず、交通事故問題に詳しい、みお綜合法律事務所(大阪・京都・神戸)の弁護士に相談されることをお勧めします。

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