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弁護士による交通事故研究会

裁判例研究
Vol.74

従たる家事従事者について

本件の担当
羽賀弁護士

2024年03月02日

事例の概要

従たる家事従事者の休業損害・逸失利益の基礎収入の算定について、裁判例と当事務所が扱った事例を基に検討しました。

議題内容

議題内容

・『従たる家事従事者』の概念と基礎収入について

・『従たる家事労働者』が被害者の場合の判例検討

・過去に受任した「従たる家事従事者」の示談交渉の経過検討

参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、大畑弁護士、石田弁護士、西村弁護士、原口弁護士、青井弁護士
羽賀弁護士
今回は、被害者が『従たる家事従事者』であった場合の裁判例を紹介します。
『従たる家事従事者』とは、具体的には、子供夫婦と同居する親などですが、あまりメジャーな概念ではなく、緑本や赤い本には特に記載がありません。青い本には、『従たる家事従事者』の休業損害や逸失利益の基礎収入の算定方法についての記載があります。
その内容ですが、「従たる家事従事者(子供夫婦と同居する親など)の場合には、現実に分担している家事労働の内容や従事できる労務の程度を考慮して、適宜減額された金額を基礎収入とすることがある」というものです。
吉山弁護士
確かにあまり聞かない概念ですね。
羽賀弁護士
『従たる』という表現だと、家事をメインでやっている人がいて、対象となる人がサブというようなイメージですが、実際には、メインで家事をやっているけれども、他の人も一部家事をやっているので、基礎収入を減額するというケースも含まれているようです。
従たる家事従事者という概念により、メインで家事をしていなくても、休業損害や逸失利益が認められる可能性が出てきます。一方で、例えば正社員で家事従事者の場合に、メインで家事をやっているけれど、家事の全部を担当しているわけではないとして、基礎収入を女性平均より下げるべきという主張が考えられるところで、最近、保険会社から主張されるケースがあります。
吉山弁護士
裁判例では従たる家事従事者の基礎収入についてどのように判断されていますか。
羽賀弁護士
従たる家事従事者の裁判例における基礎収入の判断ですが、従たる家事従事者だからどうこうというわけではなくて、結局、現実に分担している家事労働の内容や従事できる程度をもとに個別の判断がされています。
羽賀弁護士
裁判例は4件です。
1件目は、神戸地裁の平成28年5月18日の判決です。
被害者は82歳女性で、8人暮らし。女性平均収入の3分の1を基礎収入とするという認定になっています。
具体的な状況ですが、同居家族は本人以外に、長女夫婦、長男夫婦、長男夫婦の子ども2人、次男の計7人です。
買い物は主に被害者以外の家族が行っており、風呂やトイレの掃除は長女が気付いたときに行っていました。さらに、長男の妻は、子どもの部屋の掃除を行っていたなど、家事の全てを被害者が担当していたわけではないということと、82歳と高齢であったこと、さらに、8人という非常に大人数の家族であったことから、被害者は専業主婦として家事労働を行っていたと認められるものの、本人の娘と長男の妻も同居していて、ある程度家事を分担していたという事情があるので、同居家族7人分の家事労働のほぼ全てを一人で行っていたと認めることはできない。しかし3分の1程度は分担していたとして、基礎収入は、女性の平均賃金の3分の1の約118万円という認定になっています。
羽賀弁護士
2件目は、仙台地裁の平成28年1月8日の判決です。
81歳の女性で、長女夫婦と同居で、女性70歳以上の平均賃金の40%の認定になっています。
具体的な状況ですが、本人からは、自分のことだけではなく、同居する長女夫婦のために、掃除、買い物、クリーニングの依頼と受取り、夕食の下ごしらえなど、長女の家事を補助していたとの主張がありました。
一方で家族からは、本人は81歳と高齢なので、家事全般に従事しているとまでは言えないという回答があったので、メインで家事を行っていたのは長女の方であるが、一部は分担していたとして、70歳以上の女性平均賃金の約40%の120万円の認定になっています。
羽賀弁護士
3件目は、東京地裁の平成18年6月15日の判決です。
原告は91歳の女性で、次女と同居で、65歳以上女性平均賃金の60%の認定です。
状況としては、洋品店自営の次女と自宅兼店舗の2階・3階部分に同居。女性は平成9年度から次女に専従者給与をもらっていましたが、平成15年度以降は給与はもらっていません。
原告は91歳と高齢でしたが、杖なしで歩行可能で、炊事、洗濯、掃除、買い物などの家事労働を次女と分担しており、さらに、次女が洋品店の仕入れに出かけたときは店番をしていました。
以上から、基礎収入は、65歳以上の女性平均賃金の60%の約184万円が相当という認定になりました。
羽賀弁護士
最後に4件目は、東京高裁平成28年12月27日の判決。原審が東京地裁平成28年6月29日です。
原告は82歳の女性で、長男夫婦と同居で、女性70歳以上平均賃金の80%を認定されています。
原審では、事故当時82歳で長男夫婦と同居して、会社経営などをしている2人のために家事を行っていたことを前提に、基礎収入を70才以上女性平均の80%と認定されています。控訴審でも同様です。
80歳以上の人ですと、70歳以上女性平均賃金から減額するということもよくあるので、こちらの裁判例は、従たる家事従事者というよりは、ほぼメインで家事をしていたといえると思います。
吉山弁護士
裁判例の基礎収入の認定はバラバラですね。家族構成や家事分担状況など、個別具体的な認定が必要だからと言えそうです。
羽賀弁護士
次に、私の解決事例で、従たる家事従事者の認定があったものを紹介します。
被害者の方は、事故時79歳、症状固定時81歳の女性です。事故当時は、長男夫婦と長男夫婦の子どもと同居されていました。
ただ、家の中では、1階と2階で分離して生活をされていました。一方で、長男夫婦と子どもは全員仕事をしているので、長男夫婦とその子どもの家事は、被害者の方は半分くらい担当していました。
羽賀弁護士
既存障害として、軽度の認知症があり9級が認定されています。
以上を前提に、当方からは家事従事者と認定されるべきと主張し、保険会社と交渉しました。
示談案を資料としてお配りしていますが、休業損害と逸失利益は、既存障害があるので、 女性平均賃金から35%引いた金額を基礎収入として提示しています。
羽賀弁護士
これに対しての相手方からの回答ですが、休業損害の基礎収入について、女性70才以上平均賃金の2,868,300円から、
既存障害9級を考慮して2,868,300円×0.65=1,864,395円。
更に、長男の妻が家事に従事しているとして1,864,395円×0.5=932,197円を基礎にすべきとの回答がありました。
逸失利益の基礎収入も同様です。
羽賀弁護士
このように、ある程度高齢の方で、家事はやっているものの一部にとどまっており、他の人も家事をやっているというパターンでも、ある程度、休業損害とか逸失利益が認められる可能性はあるといえます。そのため、従たる家事従事者と思われるケースでも、休業損害や逸失利益を主張していくのがいいと思われます。
羽賀弁護士
なお、この事案で最終的な賠償額を計算すると、資料でお配りしています相手方から出てきた損害額積算書記載の通り、過失相殺等の結果マイナスで、自賠責で払い過ぎだとの指摘が相手方からありました。
高齢の方の場合、逸失利益があまり大きくならないため、一定の過失割合があると自賠責のみとなり任意保険への請求は難しいことがあります。本件もそのような状況でしたが、0では解決が難しいので、最終的に解決金50万円で示談に至りました。
吉山弁護士
本来であればマイナスですので、解決金だけでも確保できて御の字だったといえると思います。
伊藤弁護士
主たる家事従事者が被害者になった事例で、従たる家事従事者がいるからっていう理由で、減額するべきという主張があった例はないですか。
羽賀弁護士
今のところそういう主張を受けた事例はありません。ただ、正社員で家事従事者の場合に、 そういう主張をされてしまうことはあります。
保険会社の方から、家事従事者だけれども、基礎収入は女性平均通りにはできないという主張は、最近時々あります。
大体が正社員の人ですが、パートでも、週30時間ぐらい働いているとか、年収が200万円超えてるとかのケースであれば、例えば、夫がある程度家事を担当しているのではないかという主張が出てくることがあります。

「みお」のまとめ

子供夫婦と親など二世帯で同居している家族では、複数人で家事を分担している場合があり、交通事故の休業損害・逸失利益の基礎収入をどのようにするかが問題になるケースがあります。
メインで家事をやっていなくても休業損害・逸失利益が認められる可能性がありますが、そのためには、家族構成や家事の分担状況、行っている家事の内容などを主張する必要があります。
このように、従たる家事従事者であっても休業損害や逸失利益が認められる可能性がありますが、本来休業損害・逸失利益が認められてもおかしくない事案でも、弁護士が付いていないと保険会社が休業損害・逸失利益を認定してこない可能性があります。家事従事者としての休業損害や逸失利益を適切なものにしたいとお考えの方は、一度弁護士にご相談いただければと思います。

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