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弁護士による交通事故研究会

裁判例研究
Vol.54

消極損害の算定基礎として賃金センサスの平均賃金が用いられる場合について

本件の担当
羽賀弁護士

2022年05月17日

事例の概要

消極損害の算定基礎として、賃金センサスの平均賃金が用いられる場合について検討しました。

議題内容

消極損害の算定基礎として賃金センサスの平均賃金が用いられる場合について

議題内容

・消極損害算定の基礎収入が賃金センサスの平均賃金とされる場面の類型について

・類型別に利用される賃金センサス

・類型別の解決ポイント、注意点、課題など

・解決事例紹介

参加メンバー
羽賀弁護士、澤田弁護士 、伊藤弁護士、吉山弁護士、小川弁護士、山本弁護士、倉田弁護士、田村弁護士、加藤弁護士、大畑弁護士、石田弁護士、西村弁護士
羽賀弁護士
今回は、2022年3月発行の交通事故相談ニュース48号掲載論文「消極損害の算定基礎として賃金センサスの平均賃金が用いられる場合について」を紹介します。
羽賀弁護士
休業損害と逸失利益算定の際の基礎収入について、賃金センサスの平均賃金が採用される主な場面は、4パターンあります。
[第1類型]は、まだ働いていない年少者。
[第2類型]は、働いているが、若くて収入が低い、若年就労者。
[第3類型]は、今は高額な所得があるけれども、将来的には下がってしまう可能性がある人。例えばプロのスポーツ選手とか高額の給与所得者等。
[第4類型]は、主婦(家事従事者)。
以上の4つです。
羽賀弁護士
次に、各類型の詳細について、私の解決事例も併せて、紹介していきます。
まず[第1類型]の、幼児、生徒、学生の場合ですが、賃金センサスの学歴計・男女別全年齢平均が基本になります。いつの賃金センサスを利用するかについては、①事故時、②症状固定時、③紛争解決時の3つが考えられますが、決め手は無く、請求者としては比較して有利なものを使えば良いと言えます。
これに関連した私の解決事例の中に、紛争処理センターに持ち込んだ案件があるんですが、センターの判断は、「症状固定時」の平成23年のものを使うのが相当であるとの裁定でした。ちなみに当方は、平成23年ではなく、申立時点で得られていた最新データで、平成22年の賃金センサスで申立をしていました。平成22年の金額は633万円程だったんですが、裁定で高くなる方向にあえて変更が入ったので、症状固定時点が有力なのかな、という印象を持ちました。もっとも、急激な社会情勢の変動がない限り、請求できる金額に大きな差は生じにくいとは思います。
羽賀弁護士
次に、高校生以下の被害者についてどの平均賃金を使うかということですが、最近は大卒のものを使うケースも増えてきていると思います。ただし、大学生になっていない方に大卒平均賃金を用いる場合、就労開始が18歳より遅れることになり、ライプニッツ係数を大きく引いてしまうので、どちらが高くなるかは注意が必要です。
羽賀弁護士
さらに、職種別平均賃金が基礎とされる場合について述べられています。
分かりやすいのは、医学部、薬学部、看護学校等で勉強している学生であるとか、高校生で消防士などの就職が内定しているような場合には、職種別で考える場合が多いと思われます。
私の解決事例をご紹介しますと、ご依頼者は事故時大学の看護学部4回生で、その後実際に看護師になられました。勤務先は、大きな大学病院です。そこため、看護師の平均の中でも、1000人以上の規模の場合の平均賃金を前提に請求し、最終的にこちらの請求が認められました。
ただし、平均賃金を上げる理由となった勤務先の規模に関して、勤務先の休職制度や安定性を勘案すると、労働能力喪失率は通常より低くすべきとの反論を受けました。同僚と比較して収入に大きな差がないことや実際の症状の程度の問題もありましたので、通常は9級35%の喪失率であるところ、20%で解決をしています。
羽賀弁護士
さらに、女性被害者の中で、男女計の平均賃金が算定基礎とされる場合があります。一般的には年少女子の逸失利益については、女性平均ではなくて男女計の平均賃金を使うことがありますが、高校卒業までの女性であれば男女平均を使っている裁判例が多いと思われます。
羽賀弁護士
なお、[第1類型]の女性の死亡事案について、男女計の平均賃金を使うかどうかという問題があります。男女計を使うと一般的に生活費控除率が45%とされてしまうので、どちらを使うかは検討が必要です。
羽賀弁護士
次に[第2類型]の若年就労者の場合です。一般的には、概ね30歳未満の人には平均賃金を使うという考え方があります。ただ、実際の収入がもう少し低い方については、平均賃金との差を考えて、「平均賃金の何%」というような形で基礎収入を定める裁判例が多いといえます。
羽賀弁護士
30歳以上の方について、現実収入が平均賃金を下回っていても、平均賃金を使うことができるかという問題があります。最終的には、将来において平均賃金程度の収入を得られる蓋然性があるのであれば、ということになりますが、一般的な基準からは離れるため、簡単に認められるわけではないと思います。
この点についても解決事例があります。事故当時34歳の方で、収入は400万円程。大卒年齢別男女別の平均賃金は当時514万円程です。普通であれば、400万円が基礎収入になりますが、大手の不動産会社にお勤めであったことを踏まえ、今後も増収の可能性が高く、基礎収入を400万円より高くすべきと主張しました。その結果、大卒男性平均約640万円÷514万円×400万円≒500万円を基礎収入とすることで解決ができました。怪我が大きく、訴訟になると遅延損害金が大きくなることも考慮された結果、上記のような交渉ができたのではないかと思います。
羽賀弁護士
次は[第3類型]です。今は高所得だが、今後下がってしまう可能性のある方についての平均賃金ですが、よくあるのが50歳ぐらいで、例えば1000万円程の収入がある方は、60歳以降どうするかというものです。これについては、60歳以降について減額される事例もそれなりにあります。
それから、特殊な職業で長い間は続けられないであろう、例えばプロスポーツ選手やホステスといった方や、芸能人などで収入が上がったり下がったりする方、というパターンがあります。そういった方々については、何年間かは今の収入を用いて、その後からは平均賃金を用いるという計算方法がありえます。
羽賀弁護士
これに関しても解決事例があります。ご依頼者は、証券会社のディーラーをされている方で、年収は大体1,500万円ぐらいありましたが、保険会社から、ディーラーなら、株が上がっている時と下がっている時とで、収入がかなり変わるのではないかとか、機械化が進んでいるので、ディーラーの仕事が減り将来的に収入が下がるのではないか、などの主張がありました。また、ディーラーはスピード感のある取引をしないとダメなので、年齢を重ねれば収入を得にくくなるのではないか、など、色々な反論がありまして、平均賃金を用いるべきではないか、と主張してきました。最終的には、裁判上の和解をしたので、この結論についてはハッキリしたものは出ずに解決をしています。
羽賀弁護士
次に[第4類型]の家事従事者ですが、女性の事案では、配偶者や子どもがいれば、問題になることはほとんどありません。
しかし男性の場合は、家事従事者であるかどうかの点について立証が求められ、認定のハードルが高いと言えます。
羽賀弁護士
それから、主婦の方について、どの時点の賃金センサスを用いるかという問題ですが、逸失利益については、先程年少者についてお話ししたものと同じことになります。休業損害に関しては、現実の各休業日の属する年の賃金センサスを用いるというのが厳密といえますが、実際には、ほとんどのケースで、一時点の賃金センサスを利用していると思います。
羽賀弁護士
次に、ある程度高齢の家事従事者の方について基礎収入をどうするかという問題があります。例えば、65歳から70歳以上の場合に、年齢別平均賃金を基礎収入とするなど減額するか、女性平均賃金をそのまま使うかについて裁判例が分かれています。この点は、被告側の主張内容によっても裁判所の判断が変わるところはあると思います。
羽賀弁護士
兼業の主婦の方については、現実収入と女性平均の高い方が基礎収入になります。
また、二人暮らしの夫婦で共働きの方とか、年金生活をされているある程度高齢の方とかの場合、必ずしも家事従事者として認定されるわけではないという問題があります。
吉山弁護士
類型とはまた別なんですが、例えば、コロナで自営業者の方が収入が減ってというケースがこれから出てくるのかなぁと思うんですが、今のところそういうご相談ありましたか?
羽賀弁護士
争点化しそうなのは1件あるんですが、まだ保険会社からの回答待ちですね。
吉山弁護士
回答がありましたら、また紹介してください。
澤田弁護士
それって、例えば、コロナの影響で下がってしまっている事故前収入ではなく、コロナの影響がない時の収入を基礎とするという主張ですね。
羽賀弁護士
そういうことになります。主張内容としてはこちらは理解しうるところですが、定型的ではないので、示談交渉で保険会社がどこまで納得するか問題はあると思います。

「みお」のまとめ

示談金の算定をする際、保険会社が示談金の額を少しでも少なくしようとしてくることはよくあります。特に、主婦の休業損害や、逸失利益の基礎収入・労働能力喪失率・労働能力喪失期間は注意が必要です。弁護士に任せると増額になりやすい部分ですので、保険会社から示談額が提示されたときは、弁護士に相談されることをお勧めします。「みお」では保険会社から提示された示談提案について無料相談を行っていますので、お気軽にご利用ください。

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